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 薄暗いガレージ。そこは未来。10年後。

 ガレージの中には、たくさんの高度な機械が多くあったが、部屋の一角には黒板があり、びっしりと数式や文字が書いてあった。

 僕は、コーヒーを飲みながら、小さい女の子にその黒板の内容を教えていた。彼女がとても知りたがっていたからだ。

「それで、これはどういう意味なのー?」

 彼女は無邪気に僕に質問をしてきた。

「簡単に言うと、今回のオペレーションの概要さ」

「おぺれーしょん?」

「作戦のことだよ。あーして、こーして、目標を達成するんだ」

「ふーん」


 作戦の内容はこうだ。

 まず、この時代で僕らにとっての世界の平和を脅かしているしんぷる教の教祖を過去から抹消し、現在のこの時代を終わらせる。しかし、過去で何かを起こせば、時空の歪みからこの世界で何が起こるかわからない。僕らも消滅してしまうかもしれない。だから、まず、この現代と過去でちょっとしたバリアを張るんだ。教祖が亡くなっても時空の歪みが生じないようなバリアを。このバリアが張られている間は、過去で人が死んだとしても未来の世界にはなんも影響はない。ただただ、その過去で死んだやつが未来でもすっぽりと消えていく。しんぷる教の教祖も何もなかったかのように消えるわけだ。

 そして、バリアの設置が完了したらこちらから過去にスイーパーを送る。Fだ。彼は、僕の古くからの友人。頭はちょっと悪いけど、運動神経抜群で、体一つでなんとか局面を打破できる力もある。タイムワープも、初期の頃の宇宙飛行士が宇宙に行くくらいの辛さがあるけれど、そこも彼なら大丈夫だ。

 またバリアには2次効果があって、スイーパーが対象物を排除しやすくなるように世界が変わる。こいつを消そうと思ったら、何らかの方法ですぐに消せるようになるわけだ。簡単にいえば、【スイーパーの思い通りになる】ということで、排除の仕方はスイーパー次第ではある。そして、過去の世界はスイーパーが支配する。

 ここからが大切な内容だ。しんぷる教の教祖は二人いる。一人は女性。言わずと知れた、こよなくシンプルな物事、物体、感情を愛する女神だ。僕には女神ではなく邪神に見えるが。

 そして、もう一人は男性……だったはずだ。表舞台にはあまりでてこない。彼女の参謀的な役割の男。一回だけ表舞台に出た時にFが言ったんだ。「君に似ている」とね。もちろん、外見だけだけど。

 ただ今回の排除対象はあくまでも、しんぷる教の教祖の女性一人だ。過去において、二人が一緒にいるなどということはわからない。ただ、女性の方はいるはずだ。なぜなら、僕は過去において彼女を見たことがあるからだ。

 大学の図書館で。正確には僕は在籍をしていない。僕はアメリカから帰ってきて、しばらく何もすることがなかったから、近所の大学で関数電卓を叩きながら勉強していた時に、話しかけられなかったけれど、彼女を見た。

 いや、実はもっと前から彼女を知っている。高校の頃から。彼女にはいつも何かを相談していた。僕はあまり相談内容は、覚えていないのだけれど、なんだか甘酸っぱい相談であった気がする。あの頃の彼女はどこに行ったのだろうか。

 僕は、混沌が好きだ。難しいことが好きだ。ただ、それだけなんだ。

 

 

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