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彼女は、途方にくれている様子だった。
十分な収穫を得られなかった僕らは、とぼとぼと仕方なくさまよっていた。
「スポーツ選手だと思ったんだけどなぁ」
彼女は、近くに転がっていた石を蹴り飛ばした。
僕は横切った際に、不意に学生掲示板が目に入った。
僕は何事もなかったかのように通り過ぎようとしたが、僕はもう一度学生掲示板の方に戻った。
【Fの会、今年も開催します。イニシャルにFが入る方。どなたでも参加可能です。】
「あら。こういう偶然もあるのね」
「いや、さすがに出来すぎではないだろうか」
「それもそうね」
「ちなみに、そっちじゃないです。こっちのほう」
僕は、彼女に向かって、学生掲示板の違う貼り紙を指差した。
「古幡選手、剣道で全国8位入賞……8位って微妙じゃない。どうせなら3位以上であってほしいものよ」
「そうじゃなくて。名前です。古幡選手。イニシャルがFです。あと、ブルーが今早速調べてくれたんだけど、数年前の月刊バンブーソードっていう雑誌で、彼はミルクティーが大好きですと答えているらしいです」
「バンブーソードってなんかダサい名前ね。月刊竹刀か月刊剣道のほうが売れるわよ」
「一応、海外向けの雑誌らしくてそんな名前に。だとしたら、ケンドーの方がいいですよね」
「まったくだわ。しかし、この人。なんかありそうね」
僕らは、満場一致で彼を探すことにした。
ブルーが調べてくれたサイトの写真もどことなく、僕が出会ったFにそっくりだった。
僕らは早速、剣道部が活動する道場に向かった。
僕らは道場に着くや、近くに居た剣道部員にさっそく話しかけてみた。
「古幡選手ってどなたですか」
「古幡?ああ。あいつなら、風邪をひいてるから、休んでるよ。一応大学の授業は受けているみたいだけどね」
「そうですか。ありがとうございます」
ついて数分で、ここまでの道のりは徒労に終わったのだった。




