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僕は、大学を後にして家に帰ることにした。
大学で、猫に説教をされたことはとっくに忘れていた。というか、僕の記憶の中にそのような事実は認識されていなかった。
僕にはときどきそういうことがどうやら起こるらしい。猫をじっと見ていると猫が喋りかけてくる。楽しい話をするときもあれば、説教をするときもある。なにも毎回、説教をしてくるわけではないのだ。
僕の家は大学のある駅から2駅の場所に住んでいる。2駅だから結構すぐに大学に通えるのかというとそうではない。そもそも、大学近くの駅から大学まで歩いて15分。僕のアパートがある場所までは、駅からあるいて15分。これはあくまでも理想時間だ。天候やら電車の遅延具合によってはこれ以上も伸びることもある。
しかし僕としては大学は徒歩10分が理想だ。というかそうあるべきだ。大学の中に寮があってもいい。僕は大学に住んでみたい。そうすればきっとぼっちなどなっていなかったはずなのだ。
僕は、友達がいないことを大学のせいにして逃げようとした。しかし、覚えていないはずの猫の鬼の形相が頭をよぎった。僕は、背中にびっしょりと汗をかくのがわかった。まだまだ春になって久しい。寒くはないが暑くもない。そういう季節であった。
家に着くと僕は、冷蔵庫を開けた。冷蔵庫の中にはスーパーで買った激安コーラの缶が常備されている。僕は、その中からよく冷えてそうなものを選んで手にとった(冷蔵庫の中にある時点でどれも同じだと思うが)
ぷっしゅッと心地よい音が部屋に響き渡り缶の飲み口のタブは開いた。。僕は缶から出る泡がこぼれ落ちないようにすぐさま口につけて、一気に飲んだ。
僕はお酒は好きじゃない。大学生は、コンパなどで一気飲みをするのが流行っていると聞く。僕は、そんな流行りは糞食らえと思っていた。どうせ、酔った下級生を、クズみたいな上級生がお持ち帰りするのだ。汚らわしい。持って帰る奴も帰る奴だが、参加する奴も参加する奴である。
カバンから参考書と電卓を取り出して机に置いた。僕の唯一の自慢は机が綺麗であるということである。これは父からの教えだった。
「いついかなる時も、勉強等が終わったら机の上にはなにも置くんじゃない。机は神聖な作業台と心得よう。机の上に雑念となり得るものがなければ、より効率があがるはずだ」
こうして僕は、また集中の海へと潜っていったのだった。