28
カフェを飛び出し数分後。大学に無事到着。
彼女は、スタスタと肩で風を切って大学の構内を歩いていく。その後ろを僕は、ドタドタと歩いて行った。
僕もそろそろ3年生になるわけだが、どうしても大学はなれない。いまいちどこに何があるかわからないし、おしゃれな格好をしているメンズやレディたちがいちゃいちゃしていて、僕のような人間は行っては行けないんじゃないかっていつも思うのである。
彼女は、めぼしいものを見つけて僕に指をさした。
指をさした先には、グラウンドがあった。彼女の中では筋肉バカ、もとい体育会系の男性であると推測したようだ。
「さぁ、この中から似たような人物を探しなさい」
僕は、命令されるがままにグラウンドを見回した。陸上部やサッカー部、野球部が練習をしていた。変わり種で、グラウンドに寝そべって日焼け(冬なのに)している人物もいたが、それは無視をした。
しかし、そうはいっても50人以上はいるグラウンドで、その人物一人を見つけ出すのは至難の技だった。
「ちょっと、厳しいです」
僕は、そう呟いた。
「だったら、聞き込みに行くわよ」
そういって、彼女はまたスタスタと歩いて行った。
「ちょっと、いいかしら」
彼女は、髪の毛を手でかき上げながら、汗まみれの男性陣にインタビューを試みた。どうやら、新聞部の体でいろいろなことを聞くようだった。彼女は肩くらいまでの髪の毛で、内側に髪の毛がくるっと少し回るような髪型であった。男性としてはそんな髪型はちょっと可愛く見えるらしく、喜んでインタビューに応じていた。中には、逆に電話番号を聞く猛者も現れたが、丁重に嘘の電話番号を教えていた(全て大学の教務課の臨時携帯にかかったようだ)彼女は、確かに可愛いのかもしれないが、僕は今の所、特別な感情は抱いていなかった。
「ほんと、男って単純よね。ちょっと耳をかきあげる仕草をしながら上目遣いになれば、すぐこれだもん」
彼女の本性が垣間見えた気がした。
「しかし、不作ね。というかなんなのかしらね。あの性欲の強そうなゴリラみたいな連中は」
「こらこら」
「あなたは、弱そうよね。その辺。」
「おいおい」
なかなかズケズケと突っ込んでくる娘さんである。しかし、不作なのはいただけなかった。しかし、路線としては間違いがないと僕は思っていた。あのFは勉強が得意そうには見えなかった。本当に図書館が好きならば、あんなところに立っていないで、図書館の中にいるはずだ。勉強しているであろう未来の友達を、中に入るのを拒んで、待ち伏せをしていたに違いない。
「とりあえず、校舎のほうにもどりましょうか」
僕は、彼女に校舎に戻ることを促した。彼女は、渋々「仕方ないわね」と言って僕の後をついてきた。




