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「検索するって、ちなみにどうやってやるんだ」
僕は、率直な気持ちを彼女に尋ねた。
「そういえば、特に考えてはいなかったわ。そうね……」
僕は、少々驚いたが、やはりスマホで検索したところで未来人なんてヒットなどしない。ネットの掲示板に未来人が降臨して未来の話をしたところで、信憑性はかける。インターネットから未来人を知ることはできないだろう。
しかし、僕はあることを思いついた。
「Fは仮に未来人だとしても、奴は10年後からやってきたにすぎない。つまり、10年前の今日にも奴は存在しているんじゃないか」
僕は、ひらめいてしまった。この言葉で、彼女は「そのとおりだわ!」と興奮を抑えきれないようだった。今にも「捕まえにいくわよ」と無茶なことを言いそうであった。
僕は、しばらく考えた。Fとあった時に何を話しただろうか。Fはどんな奴だったのか。ありとあらゆることを思い出そうと試みた。僕は、電卓をたたく振りをした。通称エアー電卓を叩くことによって、頭の回転が早くなるイメージが僕にはあったのだ。
友達
未来
F
しんぷる教
未来が危ない
電卓
10年後もマスターは変わらない
「ねぇ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
僕は、彼女に質問をした。
「なによ」
「まず、一つなんだけどさ、電卓って実は関数電卓っていうのがあるのは知ってた?」
「しらないわよ。なによ関数電卓って」
「僕もあまり知らないんだけど、工学部とか理数系の人たちが高度な計算をするために使用する電卓があるらしいんだよね。僕らみたいな文系学部の連中は簿記とかに使うために使うんだけど」
「それがどうしたのよ」
「関数電卓は後で出てくるから存在だけ覚えておいてよ。それでさ、将来タイムマシンを作るの人がいるわけだろ?そして、多分彼は過去に来た理由は、未来でのしんぷる教の拡大を止めるために元を絶ちに来た。つまり過去に戻って小さいうちに叩こうとしたわけだ。で、彼は興味本意で10年後の彼の友達に会いに来た。たぶん、実は同じ大学だったことをあとで知ったんだと思う。」
「ふーん。まぁまぁの推測ね。それで続きは?」
「で、その友達はコンピューター等々を駆使してタイムマシンを作り上げた。でも、その過程で関数電卓を叩いていたところを彼は見ていたんじゃないかな」
「つまり、あなたが電卓を叩いているもんだから、未来の友人と間違えて声をかけたってこと。正真正銘のアホね」
「まぁ、頭が悪いかどうかは別として、単独で未来からやってくるくらいだから多分頭脳派というよりも肉体派だと思う」
「筋肉バカじゃないそれ」
どうしても彼女は、Fを馬鹿に仕立て上げたいようだった。しんぷる教壊滅を目論むのが気に食わないようだ。
「まぁ、そこは置いておいて。あと、喫茶店のマスターは10年前と変わらないって彼は言ったんだ。つまり、奴はこの大学の学生であった可能性が高い」
「なるほど」
「だから……」
「早速向かって、彼を捕まえに行きましょうか。多分、同じ時代を10年前の彼は過ごしているわ。大学に在籍しているはず」
僕がしゃべろうとしたら、彼女に食い気味に話をされてしまった。僕はなすすべなく、彼女に内容をしゃべられてしまった。
「あと、Fって意外と苗字のことじゃないの?たとえば、古川とかのローマ字って、実はHではなくてFじゃない?私もあるのよね、パソコンの打ちすぎかしら。間違えて書いたりするから」
彼女は、みるみるうちに推測が思いついていった。ミルクティーを飲んでいたのなら、今も飲んでいるとか、身長もきっと10年後と前ではそんなに変わらないだろうし、などなど。ある程度のアタリがついてきたような気がした。
「さ、いくわよ」
そういって、彼女は喫茶店を勢い良く飛び出していった。僕も続いて飛び出そうとした。
「お客さん、お勘定」
店員に呼び止められてしまった。僕は渋々二人のコーヒー代を支払った。一杯600円とは、なかなかのお店であった。




