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 男女ふたり、仲良く喫茶店でお茶をする。

 ボサノバが流れるその喫茶店は、意識が高そうな大学生で溢れかえっている。ある人は、難民を助けたいという。ある人はこの国の経済を変えたいという。ある人は、どっかの国の政治批判をしている。この中の人間で実際に行動に移す人間はどれくらいいるのだろうか。現地にいって住み込みで何年間も行く人はどれくらいいるのだろうか。この国の経済を変える人はどんなことをしているのだろうか。そもそもこんなところで会話をしている時間はあるのだろうか。

 しかし、僕の目の前にいた女性はそんな中途半端な志を持った意識高い系の輩たちとは違かった。開口一番に僕に言った。

「わたしは、必ず君の家に来たヤツを見つけるから」

 僕の瞳をずっと見つめる女性は、僕のことが好きなんじゃないかと錯覚させるほどぼくのことを見た。しかし、彼女は瞳の奥は、ハートというよりも燃え上がる炎でいっぱいであった。

「わたしの野望を邪魔する奴は何人たりともゆるさないんだから」

 僕は、いつもの間にか彼女と仲良くなっていた。僕が思っているだけかもしれないが、なんだか仲良くなれた気がする。

「でも、どうやって見つけるんだ」

 彼女は、顎に手を当てて考えた。

「そうだ。あなたに、そんなことをしそうな人はいないのかしら」

 彼女は、顎に当てていた手をピストルのような形をして僕に向けた。

「わからない。というか、あまり信用してはもらえないかもしれないけど、そもそも僕はこの世界の住人じゃないかもしれないんだ」

 僕は、意を決して彼女に打ち明けた。不思議そうな顔をした彼女に、僕はわけをはなした。君みたいな女の子に勧誘をうけて、よくわからない図書館のブースで映画を見たら気を失って、それから猫の声が聞こえたり銅像の声が聞こえたり。そして、スマホがしゃべったり。でも、日付だけは、その日のまま。

「ふーん。あんたも大概変ね」

「おっしゃるとおり」

「質問を変えるわね。あなた、この世界でわたし以外に声をかけてきた人はいないのかしら」

 彼女は、質問を変えた。なんだか、わりと具体的で少し驚いた。

「そういえば、Fという男が僕に話をかけてきた」

「F」

「そう、エフ」

「変わった名前ね」

「あだ名だって本人は言ってた」

 彼が未来からやってきた人間であることを僕は話した。もはや、僕は宇宙人なんではないかという顔を彼女はしたが、僕は否定しなかった。

「そいつ、あやしいわね」

 彼女の目つきが変わった。Fは僕の将来の親友である。しかし、怪しいのも事実であった。僕は僕だからわかる。僕なんかに友達ができるわけないと思っていたからだ。

「たしかに。でも、君も相当怪しかったけどね」

「よく少年漫画であるじゃない。ボスキャラだったのに、倒したら、次の次くらいの話から仲間になっているパターンのやつ。昨日の敵は今日の友っていうのかしらね」

 彼女は、にっこりと笑った。意外とかわいらしい表情をしたので、僕はドキッとして目をそらしてしまった、

「ということで、まずはFを探しましょう。そのポンコツでちょっとしらべてみましょうか」

 彼女は、僕のスマホを指差した。

「だーれが、ポンコツだ。この小娘」

 ブルーが、自動で起動して彼女に噛み付いた。周りの客から見ればハンズフリーで話しているようにしか見えないのがすごいところである。

「早く検索しなさい、ポンコツ。あたし、スマホ家に忘れたから」







 

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