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 目の前で、拡声器を片手に演説をしている白服の集団を、僕は食堂の中で新しくもらった割り箸を片手に、もう一方でスマホを握りしめていた。

「いまから?あの集団が?」

「とりあえず、これを見るんだ」

 ブルーは、自らの画面にとあるサイトの掲示板の画像を僕に見せてくれた。内容としては自殺サイトにおける犯行予告らしい。しかし、暗号化されていて普通は気づかない。僕も見たところさっぱりわからなかったが、ブルーから見ればこれは明らかに犯行予告のようだった。

「いいかボンクラ。君は平和ボケをしすぎている。死なないと思っている。昔と違って今はなんでもある。死にそうになっても不治の病でない限り治療で治すことができる。自動車だって、自動ブレーキなどが配備されてきて、交通事故だって減ってくるから安全だと思っている。しかし、どんなに機械を改良して安全を強化してもそれの意味を成さない対象もあるということを忘れてはいけない」

「人間……」

 僕は、つぶやいた。ブルーは「その通り」と言った。どんなに安全装置を強化したとしても、それを無効化できてしまう存在がある。そう人間だ。人間が人間を殺すことは、基本的には制御することは不可能だ。これを制御できる技術が開発されれば、この世から殺人事件を無くすことができる。

「ブルー、僕はなにをすればいい」

「さっきから言っている。とっと逃げるんだ。蕎麦は伸びたとしても、君の命も同時に伸びるはずだ。さぁ、早く」


「君たち、なにをしているだ!こんなことを許可した覚えはないぞ。早くやめなさい。いますぐやめないなら警察を呼ぶぞ」

 白服の集団に、茶色いセーターを着たおじさんが注意をしにきていた。学生課のおじさんである。

 白服の集団は、叫ぶのをやめて、もっていた拡声器を下ろした。そして、拡声器を芝生の上に放り投げた。

 次の瞬間だった。学生課のおじさんの近くにいた、白服の集団の一人がジーンズの後ろに隠し持っていたモデルガンのようなものをおじさんに向けた。

「どうせ、モデルガンだろ!そんなもの早くしまいなさい。これ以上駄々をこねるなら、大人としての対応を見せるぞ」

 白服の男は引き金を引くと、茶色いセーターは赤く染まった。返り血を浴びた白い服と白い紙袋の被り物は返り血で綺麗に赤く染まった。どこからともなく悲鳴があがった。ブルーは「振り返るな。見てはいけない」と言った。僕は、冷静に食堂を抜けてから、正門まで走った。

 しかし、僕は知らなかったが、白服の集団はこれ以上の人殺しは行わなかった。すぐさま自らの命を自ら絶っていった。大学の真ん中の芝生は、血の海となった。


 僕は、駅についてからようやく息をしていることを確認することができた。冷静に冷静にと言い聞かせるものの、実際のところ冷静ではなかった。よくある話である。

「ブルー、あれが君が言ってた僕を狙うしんぷる教なのか……」

「おそらくな」



 



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