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 僕は気になることが一つあった。それは、10年後の世界でしんぷる教がどうなっているかというよりも、しんぷる教とはなんなのかということだ。

「ん、その顔は10年後よりも先にしんぷる教を教えてくれって顔だな。わかったわかった」

 どうやら、僕の気持ちは彼に伝わったようだ。本当に10年後は僕らは友達になっているかもしれないと思った。

「10年後。しんぷる教は世界の戦争で暗躍している。世界大戦を起こすんだ。しんぷる教は、人種を問わず受け入れられる宗教となっている。世界の人々はしんぷる教を欲していた。理由はわからないが欲していたのだ」

 僕は、小刻みに震えながら話している彼に向かって、またしても目を細めて彼に訴えかけた。そう、10年後ではない。今だ。現代の世界にいる人間にとって、もっとも気になるのは今だ。

「すまんすまん。一応導入と思って話したまでだ。そして、ここからが君が聞きたい本題。現在は、たんなる学内サークルだったはずだ。しかも大学非公認の。どういう経緯で設立されたかまでは知らないが、君が入学したと同時にサークルは生まれたと聞いている。そして、彼らが戦争を企てるまでにどのようにして発展したのかもわからない。しかし、成長していくのは事実だ」

 男は、「ちょっとトイレに」と言って、便所の方へ歩いて行った。さっきから、体が小刻みに震えていたからそうだろうとは思っていたのだが。

 僕は、スマホにマイク付きイヤホンをさしてブルーを呼んだ。

「ねぇ、今の話ってどういうことなの」

「しらん。第一、わたしに未来など知る力などない。わたしは現状を検索することに長けた道具にすぎないからだ。残念だ」

「使えない奴」

「うるさいだまれ。誰がポンコツだって。おい。バッテリー爆発させるぞ」

「はいはい」

 僕は、イヤホンを抜いた。幸い、店内は結構賑わっており、まさかスマホ自身に話しかけているとは、思われなかったようだ。

 僕が、ブルーに一瞬失望したが、彼の一言で僕はあることに気がついた。「現状を検索することに長けた道具」つまり、しんぷる教を検索してみればよいのだ。僕は、あまりの自分の頭の悪さに自分を疑った。以前までの自分ならしっかり検索していたと思えた。いや、ブルーが喋りまくるから、本来の機能をすっかり僕が忘れていたのかもしれない。

「おまたせ」

 トイレから男がもどってきたため、僕は検索しようとしていたスマホをズボンのポケットにしまった。

「そうだ。自己紹介を忘れていた。といっても本名ではなくて、あだ名みたいなもんだけど。俺の名前はF。エフって呼んでくれ」

 どうしてそのあだ名なのかと少々詮索したが、フューチャーのFということくらいしか思いつかなかったのだった。さすがに未来ではエフという名前が流行っていることはなかろう。

「ちなみに、10年後。エフというあだ名をつけてくれたのが君なんだけどね」








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