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プロローグ

 僕は、電卓を叩いていた。

 電卓を叩くというのは、決して壁や机に叩きつけているのではなく、電卓の数字のキーをカタカタと打っているということである。

 電卓は8桁や10桁と様々あることを多くの人は知らないだろう。100円ショップで売っている電卓や980円の電卓が一般的で、3,000円の電卓や5,000円の電卓はどうして需要があるのかと首を傾げる人もいるだろう。

 しかし、世の中には自分の価値観以外のもので溢れている。溢れに溢れている。自分の頭の中で完結する人間は、大変寂しい。人の話に耳を傾けて、自分なりに解釈をして自己の物語につなげることの有益さ理解するべきである。

 電卓を叩きながら僕は随分と高尚なことを考えてしまったと思った。隣にあるコーヒー牛乳を啜った。大変甘く、僕の心を落ち着かせた。

 大学のキャンパスはそれほど広くなかった。僕はこの大学にどうして入りたかったのかは不明であるが、とりあえず入ってしまった。大学なんてそんな理由ではいるものである。高い偏差値のところに入ろうが低い偏差値の大学に入ろうが(あまりに低く、知名度もないような大学に入るのはオススメしないが)、自分次第と思っていたからだ。

 多くの大学性が似たような服を着て、似たような髪型、髪の色に染めて歩いている。どこかに、ベストプラクティスでも存在しているのだろうか。人と同じじゃないと不安であるという強迫観念に押し付けられて、無理やり自らを合わせているのかもしれない。

 しかし、この「個性」というものは非常にお金がかかる。結局のところ、「規模の経済」というものが働いて、大量生産されるものが結果的に安くなる。もちろん、洋服であればアレンジは可能である。しかし、スマートフォンやら車は、結局多くの人が乗るものが安くなる傾向にある。同じものを使っている人たちを見て、「一緒じゃないと嫌な人たちだ」と短絡的に結論を導くのは意外と恐ろしいことかもしれない。彼らは、本当は「個性」というものを大切にしているが、結果として個性を失っているだけなのかもしれないからだ。

 僕は、簿記検定のテキストと計算用紙をカバンにしまった。ペンケースに筆記用具を詰め込んで、電卓を専用のケースに入れた。人は僕のような人間を几帳面というかもしれない。でも、僕にとってはその言葉は褒め言葉だ。僕は、整理整頓され理路整然となる簿記の仕組みが大好きだった。

 

 僕は、入学して2年経つ大学生である。しかし、残念なことに友達はいない。難しいことを考えているからだろうか。几帳面だからだろうか。それとも斜に構えて他の学生を見ているからだろうか。

 僕は、このどうしようもない現状を打破するのには、ゼミへの入るしかないと考えていた。僕は、なんとしてもゼミに入るしかない。入って僕は、大学生活を変えなければならない……!!


 

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