クリスマスの迷惑な客
あれは、もう、ん十年前のクリスマス。普段やらないことをすると、とんでもないことになるという見本のようなクリスマス会でした。
我が家では、普段、クリスマスを祝いません。
それは、父の一言。
「うちは、仏教だ」
それに対し、文句を言うと、
「ここは、日本だ」。
しかたがないので、
毎年クリスマスを家で祝うことがなく、
なんとなく寂しい思いをしていました。
もちろん、サンタさんが来てくれたこともなく、
幼かった頃には、何故、家にサンタさんが来ないのか
自分なりに分析していました。
その答えは、
家には煙突がないので、
窓を閉めてしまうから
サンタさんが、入ってこれない。
と、いうものでした。
そこで、窓を全開にして寝て、
次の日、風邪をひいていたものです。
そんなある年のクリスマス。
母が、「今年は、クリスマスを家で祝おう」
と、言いだしました。
ケーキを用意し、
ツリーを飾り、チキンを並べ、
さぁ、これからというとき、
「ぴんぽーん」
お客さんです。
母が、玄関に行くと
そこには、スーツ姿の男性が…。
そして、長々と商品の説明を始めたのです。
なんでも、「金」を売っている会社で
毎日、会社には、大勢の奥様が訪れ
金を争うように買っていく。
買うなら、今です
と、言う話でした。
我が家には、金を買う余裕などなく、
もちろん、母は断りました。
でも、それでも、引きさがらない男性は、
母を説得し続けました。
そして、ついに
母は、しつこい勧誘を撃退。
気付けば、時間は、
6時間たっていました。
男性は、帰り際、
「この貧乏家族」
との捨て台詞を残し、去っていきました。
その後、クリスマス会がどうなったのか、
それ以来、クリスマス会が行われなかったことから、
想像できるでしょう。
普段やらないことは、やらないほうがいい。
そんな教訓の残る、一日でした。
ちなみに、その時に来た男性の会社は
大事件に発展し、役員は、詐欺で逮捕されました。
そう、知る人ぞ、知る、豊田商事でした。
あぁ、怖。
家が貧乏で、よかったのかもしれません。






