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狙われた理由

牧草乳業へは、刑事課のパトカーで向かう。野上が運転することになった。


「一件目と二件目がただの偶然って事はないですよね」


 野上が大野へ向く。


「そう思いますね。手口は違いますが、偶発的に二度も同じ会社の車を襲うなんて、出来ることではないと思います」


「となると、企業への脅迫ですかね…」


「あるいは、中身の方に何か意味があるとか…」


 黒田が呟いた。大野が聞き返す。


「どういう意味だ?」


「二度とも、積載物は廃棄予定の牛乳だったんですよね?もしも、牧草乳業への怨恨でなければ、目的は中身の方かなって」


「その可能性、捨ててはいけないかもな」


 到着した。牧草乳業は、3階建ての自社ビルだった。


 エントランスを入ると、内線の呼び出し電話がある。黒田が指定された番号を呼び出すと、総務課の職員が降りてきた。


 三人はその後、社長室へ案内された。ソファに座ると、社長のデスクに相対する位置になる。デスクには大きなブリキ製のタンクローリーのミニカーが飾られている。


 ドアが開き、社長が入ってきた。初老の人の良さそうな男性だ。


「社長の柏木と申します、この度はお騒がせしまして、申し訳ありません」


 柏木は頭を下げた。


「ご心労、お察し申し上げます」


 大野が声をかける。


「社長、早速ですが一連の事案について、何かお心あたりはありませんでしょうか」


 黒田が質問した。野上の提案で、被害者対応に慣れた黒田に質問役を任せる事となった。


「それなんですが…。弊社は地元の酪農家さんから集荷した生乳を加工場へ運ぶのが主な仕事でして。競合他社とも折り合い良くやっておりますし、トラブルなど聞いたこともありません」


 社長が黒田に返答をする。さすがに二件の事案で、疲労が顔に出ている。


 黒田が質問を続ける。


「二つの事案で共通しているのは、積荷がいずれも『廃棄予定の牛乳』だった点です。これは通常の生乳運搬とはルートや時間が異なるものなのですか?」


「おっしゃる通りです。通常、検査で規格外となったものや、加工の過程で余剰となった『廃棄分』は、専用の処理施設へ運ぶことになっています。鮮度第一の出荷用とは違い、深夜や早朝の空いている時間に運搬するのが通例です」


「現時点では、御社に対する業務妨害なのか、廃棄牛乳を狙った犯行なのか、はっきりしているわけではないんです。あくまで可能性でして」


 大野が付け加えた。


「刑事さん。乳牛というのは、毎日搾らなければ病気になってしまいます。ですが、市場の需要には波があります。加工しきれない分や、わずかでも基準に満たないものは、命からいただいたものだとしても、廃棄せざるを得ません」


 その時、ドアが開かれる音がした。秘書がカフェオレを運んできた。ストローを挿すタイプのものだ。


「どうぞ、弊社の新製品なんです」


 秘書が三人の前に並べた。


「あ!これ知ってます。CMで観ましたよ。人気でなかなか買えないんですよね」


 黒田がパッケージを眺めている。


「ご存知でしたか!ありがとうございます。弊社もこうして、牛乳の消費量を増やすように商品展開を進めております」


 秘書が笑顔で説明をした。


「牛乳の消費量か…」


 大野の目は、遠くを見据えていた。


「刑事さん、協力できることは何でも申し付けてください。弊社として、このような目に遭う覚えは本当にございません」


 柏木が深々と頭を下げた。


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