仕組まれた事故
翌日、タンクローリー事故に関して、交通課全体の捜査会議が開かれた。
交通鑑識の矢野係長が、タンクローリーに取り付けられていたドライブレコーダーの動画をスクリーンに映し出す。
片側三車線の幹線道路を、制限速度で走行するタンクローリー。第二通行帯(中央車線)に車線変更したところで、第三通行帯(一番右側)からダンプカーが現れる。
このダンプが追い抜きざまに、右からタンクローリーの鼻先をかすめるように、強引に前へ車線変更をしてきた。
衝突をさけるために左へハンドルを切ったタンクローリーは、バランスを崩し、右側を下に横転した。
ダンプカーは全く減速することなく、そのまま走り去った。
「まるで妨害運転だ」
小林が呟いた。
「ナンバーが外されていて、ダンプは今のところ特定ができていませんが、同車種が1週間前に北上町の土木業者から盗難届が出ています」
矢野係長が、同型車の写真をスクリーンに出した。高木が立ち上がる。
「現時点で事件と断定は出来ないが、少なくとも救護義務違反と事故誘発をしている事は明らかだ。また、盗難車の可能性がある以上、Nシステム照会の手続きを進めます」
協議の結果、事故の処理を交通課で行い、交通捜査課でダンプカーの行方を追うこととなった。
大野は刑事部屋に戻り、パソコンでタンクローリーのドライブレコーダーで記録された映像を再度確認していた。
「何か分かったかね」
髙木が覗いてきた。大野はダンプの動きに違和感を感じていた事を伝えた。
「わざわざタンクローリーの前で急な車線変更をしただけで、必要性は皆無です。後方の映像でも、ダンプは進路を乱していません。偶然とは思えませんね」
「ということは、運転手かタンクローリーか、あるいはこの会社に対する何らかの嫌がらせということかね」
髙木は老眼鏡が鼻まで落ち、上目で大野に聞く。
「まぁ、この一件だけでは断定出来ませんが」
大野は言い、パソコンの電源を落とした。




