第8話:闇のギルドと、隠された『蛇』の紋章
皆様、第7話での「経済制裁ざまぁ」への反響、ありがとうございます。
一人の騎士団を無血で降伏させたリリアーヌ。
しかし、光が強ければ影もまた濃くなるもの。
王都の腐敗した上層部は、ついに「正規の手段」を捨て、闇の住人を放ちます。
その暗殺者の首筋に刻まれた、見覚えのある「蛇」の紋章。
それは、前世で一条蓮の命を奪った、あの忌まわしき組織の影……。
「……デバッグの相手、間違えたかしら? 私が壊すべきは、この世界そのものかもしれないわね」
緊迫の第8話、開幕です。
深夜。学院の執務室で、私はニルスが開発した『多重魔導演算機』のモニターを眺めていた。
この世界の魔力をデジタル信号に置換し、フルダイブVRのような「完全感覚共有」を実現する――私の「わがまま」な夢の第一歩。
「……リリアーヌ様。……起きてますか? ……お茶、持ってきたんですけど」
ハンスが、相変わらず情けない顔でドアを開ける。
だが、その瞬間。私の脳内の『危機感知システム(プロファイリング)』が、最大級の警報を鳴らした。
「――伏せなさい、ハンス!」
「えっ!?」
窓ガラスが音もなく砕け、一条の黒い閃光が室内を切り裂いた。
ハンスの頬をかすめ、背後の高級なソファが真っ二つに割れる。
闇から現れたのは、全身を黒装束に包んだ一人の男。
その男が構えた短剣の柄には、蠢くような『双頭の蛇』の紋章が刻まれていた。
(……蛇。まさか、そんなはずは……!)
前世。一条蓮が最後に見た光景。
ビルの屋上、雨の中で私を突き落とした男の首筋に、全く同じ紋章があった。
「……ターゲット、確認。……デバッグ、開始」
暗殺者が、無機質な声で告げる。その言葉選びまでもが、前世の「あの組織」を彷彿とさせた。
「……ハンス、ニルスのところへ逃げなさい! 彼の作った『プロトタイプ』を持ってきなさい!」
「で、でもリリアーヌ様が……!」
「いいから行きなさい! 私のわがままに従えないの!?」
ハンスが泣きべそをかきながら走り去る。
私は一人、暗殺者の前に立った。
魔力は底辺。身体能力も、訓練された殺人鬼には及ばない。
だが――。
「……ふふ。暗殺者さん。あなたは、自分が『誰』を相手にしているか、理解していますこと?」
私は机の引き出しから、一本の銀色の針を取り出した。
それは、ニルスと共同開発した『魔力神経干渉器』。
「あなたの脳内の電気信号は、すでに私の『演算』の支配下にあるわ」
「……何?」
男が一歩踏み出そうとした瞬間、その足が不自然に折れ曲がり、彼はその場に崩れ落ちた。
心理誘導による「自己暗示」と、微弱な魔力パルスによる「運動神経のジャック」。
現代VR技術で培った『感覚共有』の知識を逆用した、精神的拘束術。
「……さあ、教えて。その紋章、誰に刻まれたものかしら?」
私は、動けなくなった暗殺者の首筋を、扇子で冷たく撫でた。
その時、暗殺者の瞳が、一瞬だけ「人間」の光を取り戻し、掠れた声で呟いた。
「……一条……様……?」
私の思考が、凍りついた。
なぜ、この世界の住人が、私の「前世の名前」を知っているのか。
(……まさか。転生したのは、私だけじゃない……?)
第8話、いかがでしたでしょうか。
ついに現れた、前世の「死」に直結するキーワード『蛇』。
そして暗殺者の口から漏れた、主人公の前世の名前。
物語は単なる「悪役令嬢の逆転劇」から、二つの世界が交差する「巨大な陰謀」へと加速していきます。
ハンスが持ってきたニルスの「プロトタイプ」とは一体何なのか?
そして、リリアーヌはこの世界の「バグ」の正体に辿り着けるのか。




