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『断罪された悪役令嬢、現代心理学で「虐め」を倍返しする 〜暴力は野蛮ですわ。精神を殺して(愛して)跪かせます〜』  作者: Zacku


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第6話:宿敵の涙(サクラ・エフェクト)

皆様、第5話での「全校集会ジャック」への反響、ありがとうございます。

心理学と音響工学の合わせ技で、学院の頂点に君臨したリリアーヌ。

しかし、完璧なロジックで塗り固めた彼女の王座を、たった一人の「感情」が揺さぶり始めます。

「……計算が、合わない。……なぜ、あなたは泣いているの?」

前世のサクラを彷彿とさせる、理屈の通じない宿敵の登場。

鉄の女リリアーヌの仮面が、わずかに剥がれる第6話。開幕です。

学院の廊下を歩けば、昨日まで石を投げていた生徒たちが一斉に道を開け、最敬礼を送ってくる。

私の横には、もはや完全に『忠実な秘書』となったエリザと、魔導端末デバイスの調整に余念がないニルス。そして、後ろで大量の資料を抱えて「給料分は働いてますよ!」とぼやくハンス。

私の「王国」は、この監獄学院の中で完成されつつあった。

……だが。

「――待ちまさい! この、冷血な泥棒猫!」

中庭の噴水前。私の行く手を阻んだのは、燃えるような赤い髪をなびかせた一人の令嬢だった。

彼女の名はカレン。この学院で唯一、私の『集団催眠』の影響を受けなかった特異点。

「……あら、カレン様。泥棒猫とは心外ですわ。私はただ、捨てられた資産(この学院)を適正価格で買い叩いただけ」

「理屈なんて聞いてないわ! あなたがやっていることは、人の心を弄んでいるだけじゃない! ゼノス先生だって、悪い人だったかもしれないけれど……あんな風に、みんなの前で晒し者にして、心を壊すなんて……!」

カレンが叫ぶ。その瞳には、打算も恐怖もなかった。

ただ純粋な、剥き出しの「怒り」と「悲しみ」。

(……なんだ、この感覚)

私の脳内の『プロファイリング・ライブラリ』が激しく点滅する。

通常、人間は恐怖か利益で動く。だが、目の前の彼女は、自分の不利益を顧みず、他人のために泣いている。

『……蓮君。あなたは頭が良すぎて、一番大事な「心」をデバッグし忘れてるんじゃない?』

前世。図書館の片隅で、サクラに言われた言葉が耳の奥でリフレインする。

カレンの泣き顔が、あの時のサクラと、寸分違わず重なった。

「……カレン。無意味な感情ね。泣いたところで、ゼノスの汚職が消えるわけでも、あなたの立場が良くなるわけでもないわ」

「無意味じゃないわ! 誰かが怒らなきゃ、あなたはどんどん『人間』じゃなくなっていくもの! ……私は認めない。あなたが、この学院のあるじだなんて!」

カレンは私の胸元に一通の書状を叩きつけた。

それは、王都の騎士団を動員した「学院の強制再調査」の通告書。

彼女の背後には、王家と繋がる巨大な後ろ盾がある。

「……ふふ。いいわ、カレン。その『正義感』という名のバグ、私が徹底的にデバッグしてあげますわ」

私は冷たく突き放したが、背中を向けて歩き出した私の指先は、わずかに震えていた。

隣でハンスが、ボソリと呟く。

「……リリアーヌ様。今のあんた、なんだか……『泣きそうな子供』みたいな顔してますよ」

「……黙りなさい、毒……ハンス。給料、カットするわよ」

空には、不穏な雨雲が広がり始めていた。

私の完璧な計画に、最大の不確定要素エラーが混じり込んだ瞬間だった。

第6話、いかがでしたでしょうか。

ロジックで世界を支配しようとするリリアーヌと、感情でそれを拒絶するカレン(サクラ枠)。

前世で蓮が唯一勝てなかった相手の「影」が、リリアーヌの心の奥底に眠っていた「未練」を掘り起こしていきます。

「自分は人間じゃなくなっていくのか?」

最強の令嬢の独白に、胸が熱くなります。

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