第2話:最初の犬(エリザ)と、教育的指導
皆様、第1話への反応ありがとうございます。
無事に(?)最初の「犬」を手に入れたリリアーヌ。
ですが、彼女が目指すのは単なるいじめっ子への復讐ではありません。
「この学院のシステムそのものを、私の管理下に置くこと」
かつて一条蓮として、一つの巨大企業を、そして経済を掌握した彼女にとって、腐敗した学院の教師など、攻略の容易なバグに過ぎません。
現代知識による「徹底的な追い詰め」と、前世の記憶が交差する第2話。
どうぞ、リリアーヌ様の「教育的指導」をお楽しみください。
「……リリアーヌ様、昨夜命じられた『リスト』、作成いたしましたわ」
翌朝、登校した私の席の横には、昨日の敵であるエリザが控えていた。
その目は虚ろで、しかし私を見つめる時だけは「私を見捨てないで」という異常な期待に満ちている。
すでに彼女にとって、私は恐怖の対象ではなく、自分のアイデンティティを保つための『絶対的な主人』に書き換わっている。
「ご苦労様、エリザ。……それで、この学院で最も『汚いお金』を溜め込んでいるのは誰かしら?」
「はい。教務主任のバルトロメウス先生です。彼は貴族の生徒から賄賂を受け取り、成績を改竄しています」
私はリストを受け取り、満足げに微笑んだ。
前世で読み耽った『金融監査論』と『裏帳簿の解読法』。
教育者という皮を被ったネズミの隠し場所を見つけるのは、計算ドリルを解くより簡単だ。
「……ふふ、いいわ。エリザ、あなたには『被害者』の役を演じてもらうわよ。泣くのは得意でしょう?」
「え、ええ……。リリアーヌ様のためなら、喜んで」
放課後、教職員室。
「……リリアーヌ、何だね。この改竄された成績表のコピーは」
バルトロメウスは、私の差し出した紙を鼻で笑い、脂ぎった手で叩いた。
「私を脅すつもりかね? 証拠もなしに。追放された令嬢の言葉など、誰も信じはしないぞ」
「……証拠? そんなもの、あなたが今から『作る』のではないかしら?」
私は、背後のドアに合図を送った。
入ってきたのは、顔を真っ赤に腫らし(※エリザ自演のメイク)、ボロボロになったドレスを着たエリザだった。
「せ、先生……! 先ほど仰った通り、リリアーヌ様を陥れるための偽造書類を持ってきました……。でも、やっぱり私……罪悪感で……!」
「な……何を言っているんだ、エリザ君! 私はそんな指示など……!」
「あら、先生。エリザ様の鞄から、あなたの『印章』が押された白紙の成績表が出てきましたわよ。……これが公になれば、あなたは教職を追われるだけでなく、収賄罪で一生地下牢ね」
「ば、馬鹿な! 盗んだのか!? それは私の金庫の中に……!」
バルトロメウスが失言に気づき、口を押さえたがもう遅い。
私は彼の耳元に、死神のような冷たい声で囁いた。
「……先生、選択肢をあげますわ。今すぐ私の『個人金庫』となって資産を管理するか、それとも今この場で、その汚い人生を終わらせるか」
「……あ、あう……」
「さあ、選びなさい。私の『犬』になるなら、あなたの汚職は一生私が隠してあげますわよ?」
バルトロメウスはその場に崩れ落ち、私の靴に額を擦り付けた。
教職員室の影で、私はふと、既視感に襲われる。
(……ああ。そうだ。かつて僕も、こうやって汚い役人をハメて、無理やりコンサルタントにしたことがあったわね。……名前は、確か『毒島』だったかしら)
一瞬だけ胸を締め付けた、懐かしい名前。
だが、今の私には感傷に浸る暇などない。
この監獄学院を「城」に変えるまで、私のわがままは止まらないのだから。
第2話、いかがでしたでしょうか。
暴力は振るわない。けれど、相手の人生の退路をすべて断ち、自分に依存せざるを得ない状況に追い込む。
これが、リリアーヌ――いえ、一条蓮が最も得意とする「わがまま」な支配術です。
バルトロメウスを屈服させた際、リリアーヌの脳裏をよぎった「毒島」という名前。
彼女が最強であればあるほど、かつての仲間たちの不在が、その心に小さな影を落としていきます。




