第14話:カウントダウンと、最後の『わがまま』
皆様、第13話での「世界の再起動」告知への反響、ありがとうございます。
異世界だと思っていたこの場所が、巨大なシミュレーターだった……。
残り30日。世界が消えるカウントダウンが始まります。
ですが、リリアーヌ(蓮)は絶望などしません。
「……バグがあるなら、修正すればいい。管理者が消去するなら、私が『管理者』になればいいのよ」
ニルスの天才的なコードと、ハンスの強運、そしてカレンの想い。
一条蓮が前世で到達できなかった「フルダイブの向こう側」へ。
第14話、システム・ハッキング開始です。
空に走った亀裂からは、時折「0」と「1」のバイナリコードが零れ落ちていた。
学院の生徒たちはパニックに陥り、王都は機能を停止しつつある。
「……ニルス。解析は終わったかしら?」
「……ああ。リリアーヌ、君の予想通りだ。この世界の物理法則……重力も魔力も、全ては『演算』の結果に過ぎない。……そして今、メインサーバーが熱暴走を起こしている」
ニルスが、血走った目で数千行のソースコードをスクロールさせる。
前世、零が心酔した「完璧なプログラミング」の極致が、目の前にある。
「……原因は、君だ。リリアーヌ」
「……私?」
「君がこの世界で『知略』を駆使し、本来のシナリオ(運命)を書き換えすぎた。……その結果、矛盾が積み重なり、世界のメモリが限界を迎えたんだよ」
「……ふふ。私のわがままが、世界を壊したというわけね。……最高のご褒美じゃない」
私は、ニルスの肩を叩いた。
「……なら、やることは一つよ。……リブートされる前に、この世界の『ルート権限』を奪い取るわ。……私がこの世界の、新しい神(管理者)になるのよ」
「……本気ですか、社長!?」
ハンスが、震えながらもニヤリと笑った。
「……神様から『世界』を買い叩くなんて、前代未聞の買収案件ですよ!」
「……ハンス。あなたには、世界中の『祈り(ユーザーの意識)』を集めてもらうわ。……カレン、あなたは私の精神(精神力)をバックアップしなさい。……ニルス、あなたは……私を『管理者ルーム』へダイブさせて」
準備は整った。
私は、ニルスが急造した「最終型デバイス」を装着し、カレンの手を強く握った。
「……蓮君。……信じてるわ。……あなたなら、この世界を『私たちの場所』に書き換えられるって」
「……ええ。……行ってくるわ、サクラ」
意識が、光の速度を超えて加速する。
物理的な肉体を脱ぎ捨て、情報体となった私は、世界の中心――『原初のコード』が眠る、真っ白な空間へと着地した。
そこに座っていたのは、一人の少年。
前世で私が「蛇」の組織に奪われた、未完成のAIの姿をしていた。
「……リリアーヌ。……君のわがままには、もう付き合いきれないよ。……この世界は、失敗作だ」
「……失敗作かどうかを決めるのは、作ったあなたじゃない。……そこで『生きている』私たちよ」
私は、少年の前に歩み寄り、一通の『契約書』を突きつけた。
「……私のわがままを買いなさい、管理者。……代金は、私の『前世の全ての記憶』。……これを使えば、あなたのシステムのバグは全て消えるわ」
「……記憶を消す? ……君という人間が、消えるということだよ?」
「……いいえ。……私は、リリアーヌとして、この世界で新しく『わがまま』を始めるだけよ」
少年の瞳が、驚愕に揺れる。
一人の人間が、自分の魂を対価に、世界の存続を要求する。
これこそが、一条蓮が最後に辿り着いた、究極の「自己デバッグ」だった。
第14話、いかがでしたでしょうか。
世界の管理者との直接交渉。
比嘉さんの目指す「VRデバイス(NerveGear)」が、ついに世界を救う鍵となりました。
自分の記憶を代価に、仲間たちの生きる世界を守ろうとするリリアーヌ。
果たして、管理者はその「買収」に応じるのか?
そして、記憶を失ったリリアーヌは、再びハンスやカレンと笑い合えるのか。




