第13話:崩壊する記憶と、サクラの告白
皆様、第12話での「ニルスの覚醒」への反響、ありがとうございます。
蛇の組織が作り上げた「偽のプロトタイプ」を破壊したリリアーヌたち。
しかし、崩壊する地下神殿の中で、カレンは思い出してしまいました。
前世、一条蓮がビルから突き落とされる直前、サクラが最後に叫んだ言葉を。
「……ねえ、蓮君。あなたは、最初から気づいていたんでしょ?」
隠されていた「転生」の真の理由。
知略の女王が、初めて計算外の「愛」に直面する第13話。
涙のデバッグ、開始です。
崩れゆく地下神殿の出口。埃にまみれながら、私たちはようやく地上へと辿り着いた。
背後で地響きが止み、静寂が訪れる。
「……終わったね、リリアーヌ」
ニルスがデバイスを仕舞い、深く息を吐く。
ハンスも剣を納め、「……あー、死ぬかと思った。社長、特別ボーナス3倍でお願いしますよ」と、いつもの軽口を叩いた。
だが、カレンだけは違った。
彼女は、沈む夕日に照らされながら、震える声で私を呼び止めた。
「……蓮君。……思い出したわ。あの日の、本当の最期を」
私の心臓が、嫌な音を立てて跳ねた。
「……カレン? 何を言っているの。私たちは今、生き残ったのよ」
「……違うの。あの日、ビルから落ちたのは、あなた一人じゃなかった」
カレンの瞳から、大粒の涙が溢れ出した。
「……蛇の男があなたを突き落とした時、私は……あなたの手を離さなかった。……一緒に落ちて、死んだのよ。私たちが、この世界に一緒に転生したのは……偶然じゃない」
「……えっ?」
脳内に、封印されていた記憶が濁流となって流れ込む。
雨の屋上。落下する浮遊感。
その時、私の右手を強く握りしめていた、温かい手のひら。
『……一人でなんて、行かせないわよ。わがままな社長さん』
「……サクラ……。あなた、あの時……」
「……私は、あなたをデバッグしたかったんじゃない。……あなたと一緒に、バグだらけのこの世界を、笑って生きたかっただけなのよ!」
カレンが私に抱きつき、子供のように泣きじゃくった。
私は、冷徹な「リリアーヌ」の仮面を維持することができず、彼女の背中に震える手を回した。
「……馬鹿ね。……本当に、デバッグのしようがない、最高に効率の悪いバグだわ。……あなたは」
その時。
私たちの頭上に、巨大な「黒い亀裂」が走った。
空間がバグ(ノイズ)のように明滅し、空から無機質なアナウンスが響き渡る。
『――世界サーバー、負荷限界。……再起動まで、あと30日。……生存者は、最後のチェックポイントへ向かえ』
「……何、これ……。空が、割れてる……?」
ニルスが驚愕に目を見開く。
私たちの戦いは、まだ終わっていなかった。
この世界そのものが、誰かが作り上げた巨大な「シミュレーター」だったのだ。
そして今、リリアーヌの「わがまま」が、世界のシステムを崩壊させようとしていた。
「……ふふ。面白いわね。……いいわよ、世界の神様か、プログラマーか知らないけれど」
私は涙を拭い、空に向かって不敵に扇子を広げた。
「……この『世界』ごと、私が買い叩いてあげるわ。……ハンス、ニルス、カレン! 次の目標は、この世界の『管理権限』よ!」
「「「……イエス、ボス!!」」」
第13話、いかがでしたでしょうか。
サクラとの心中、そして転生の真実。
物語は「異世界転生」から「仮想世界のデバッグ」へと、一気にスケールアップしました!




