第12話:蛇の正体と、失われた『プロトタイプ』
皆様、第11話での「国家破産ざまぁ」への反響、ありがとうございます。
一国の経済を紙クズに変え、王太子を跪かせたリリアーヌ。
しかし、追い詰められた「蛇」の組織は、最後の切り札を繰り出します。
それは、ニルスがかつて設計し、この世界の物理法則を逆手に取った、禁断の兵器でした。
「……私のコードを、そんな汚いことに使わないでくれる?」
かつての相棒・零の魂を継ぐニルスが、自らの過去と対峙します。
知略と技術が交差する、第12話開幕です。
王都の地下、かつては王家の緊急避難路だった巨大な空洞。
今、そこは「蛇」の組織による異端の実験場と化していた。
「……リリアーヌ様。この先の魔力波形、異常です。……まるで、空間そのものが『デバッグ』を拒否しているみたいだ」
ニルスが、自作の携帯型モニターを睨みながら警告を発する。
その隣で、ハンスは「……これ、僕が先頭で行くやつですよね。わかってますよ、社長の護衛は僕の『わがまま』ですから」と、不敵な笑みを浮かべて剣を構えていた。
突き当たりにある巨大な扉を開くと、そこには――。
巨大な水槽の中に、無数の神経組織と繋がれた『歪な魔導具』が鎮座していた。
「……あれは……」
私の喉が震える。
それは、前世で一条蓮が開発を凍結させた、フルダイブVRの『軍事転用プロトタイプ』。
対象の意識を強制的に仮想空間に引き摺り込み、精神を破壊する、最悪の兵器の模造品だった。
「……ようこそ、リリアーヌ。……いや、一条蓮」
水槽の影から、一人の男が現れた。
暗殺者の記憶の中で見た、あの「偽物の零」だ。
「……ニルス。これが君の『真の才能』の完成形だよ。……さあ、一緒にこの世界の理を書き換えようじゃないか」
「……僕の、才能?」
ニルスの瞳が、一瞬だけ揺れる。
魔力を持たない彼にとって、自分の技術が世界を変える「力」として認められることは、かつて抱いた唯一の夢だったからだ。
「……騙されないで、ニルス。……それは『力』じゃない。……ただの『欠陥品』よ」
私は、ニルスの前に毅然と立ち塞がった。
「……ニルス。あなたは言ったわね、私のわがままを形にするって。……私のわがままは、誰かを支配することじゃない。……自分の居場所を、自分の手で作ることよ!」
「……っ……。そうだね、リリアーヌ」
ニルスが、レンズの奥で冷徹な光を放った。
彼は端末を取り出し、猛烈な速度でコードを打ち込み始める。
「……偽物の零。……僕のコードを、勝手に『書き換えた』つもりでいるみたいだけど。……僕のシステムには、僕以外には決して解除できない『バックドア』があるんだよ」
「なっ……! 演算が……逆流している!?」
水槽の中の魔導具が、激しい火花を散らしてショートし始めた。
ニルスが仕込んでいたのは、自己増殖型の『論理爆弾』。
自分の技術を汚す者への、技術者としての最大の報復。
「……ハンス! 今よ!」
「おっしゃあ! 社長の奢りで、盛大にぶっ壊してやりますよ!」
ハンスが跳躍し、魔力波形の乱れで防御が剥き出しになった装置の中心部を、一閃。
轟音と共に、蛇の野望が結晶化したプロトタイプが、粉々に砕け散った。
「……馬鹿な……。私の……私の帝国が……!」
崩れ落ちる男を冷たく見下ろし、私は扇子を閉じた。
「……お疲れ様、ニルス。……最高のデバッグだったわ」
(……見てる、零? あなたの魂は、今も私の隣で輝いているわよ)
崩壊する地下神殿。
私たちは、瓦礫の山を背に、再び地上の光へと歩み出した。
第12話、いかがでしたでしょうか。
ニルス(零枠)の技術者としての成長と、ハンス(毒島枠)の覚醒。
そして、リリアーヌ(蓮)の揺るぎない信念が、前世の「負の遺産」を打ち砕きました。
しかし、蛇の組織のトップはまだ健在です。
そして、カレン(サクラ枠)が思い出した、前世の「本当の最期」の記憶が、リリアーヌを更なる衝撃へと導きます。




