第11話:暴落する王権と、絶望のハウマッチ
皆様、第10話でのカレン(サクラ枠)救出への反響、ありがとうございます。
仲間の心を縛る「蛇」の呪縛を解いたリリアーヌ。
しかし、彼女の怒りは収まりません。
「私の仲間を、偽物の記憶で汚した代償……高くつくわよ?」
剣を持った騎士団でも、魔法を操る魔導師でもない。
一人の令嬢が、ニルスの演算機とハンスの「足」を使い、王国の通貨価値を紙クズに変える。
暴力よりも残酷で、魔法よりも確実な、知略による国家転覆。
それでは、第11話。絶望のオークション、開幕です。
「……リリアーヌ様。準備、整いました。王都中の商人と、隣国の投資家たち……全員、僕の『口八丁』でハメておきましたよ」
ハンスが、不敵な笑みを浮かべて報告に現れた。その顔は、もはや怯える給仕のものではない。かつて一条蓮の傍らで、数々の企業買収を裏で支えた「毒島」そのものの勝負師の顔だ。
「……ご苦労様、ハンス。ニルス、演算状況は?」
「……完璧だ。王都の魔導銀行のサーバーは、すでに僕の『論理爆弾』で、偽の取引信号を垂れ流し続けてる」
私は、学院のテラスから遠く王都の街並みを見下ろし、優雅に扇子を開いた。
「さあ……デバッグを開始しましょう。……まずは、王国の『信用』を売り叩くわよ」
その日、王都の市場は大混乱に陥った。
突如として市場に流れた「王家が蛇の組織と結託し、国債を偽造している」という衝撃的なニュース。
もちろん、それはニルスがハッキングで流した「真実混じりのデマ」だ。
人々がパニックになり、王国の通貨を売って隣国の金貨に替えようと殺到する。
『群衆心理』の暴走。一度火がついた恐怖は、誰にも止められない。
「リリアーヌ! 貴様、何をした! 通貨の価値が……我が国の資産が、昨日の半分以下になっているぞ!」
血相を変えて学院に乗り込んできたのは、私を追放した元婚約者、王太子だった。
彼の背後には、青ざめた表情の騎士たちが控えている。
「……あら、殿下。お久しぶりですわね。……半分? いえいえ、計算が甘いですわ。あと3分で、あなたの財布の中身は『焚き火の燃料』程度の価値しかなくなりますわよ」
「なっ……! 貴様、魔女か! 騎士たちよ、この女を捕らえろ!」
「……動かない方がいいわよ、騎士様方。……今、あなたの給料を支払っている『銀行』のオーナーは、私ですもの」
私が指を鳴らすと、ニルスが端末を操作した。
その瞬間、騎士たちの魔導端末に、一斉に「口座凍結」の通知が届く。
「……殿下。これが、現代の戦争ですわ。……暴力で人を従わせる時代は終わったの。……さて、王国の全資産。……私なら『一ギル』で買い取ってあげますけれど……ハウマッチ?」
「……ぐっ、リ、リリアーヌ……! 貴様ぁ!」
王太子が膝をつく。その隣で、ハンスが冷ややかに言い放った。
「……殿下。うちの社長の『わがまま』は、高くつきますよ?」
私は、絶望に染まる王太子の顔を眺めながら、かつて一条蓮が最後に見た「雨の屋上」を思い出した。
あの時、私は全てを失った。
けれど今、私は自分の知略で、新しい「居場所」を買い叩いたのだ。
「……カレン、見てるかしら? ……これが、私たちの新しい『わがまま』の始まりよ」
第11話、いかがでしたでしょうか。
剣も魔法も使わず、ただ「数字」と「噂」だけで国を跪かせる。
リリアーヌ(蓮)の圧倒的なまでの「強者の知略」が描かれた回となりました。
そして、ハンスが時折見せる「毒島」としての片鱗。
二人のコンビネーションが、異世界の古い秩序を次々とデバッグしていきます。




