第10話:偽りのサクラと、冷徹な宣戦布告
皆様、第9話での「フルダイブ」への反響、ありがとうございます。
暗殺者の脳内で見た、かつての相棒・零の「偽物」。
そして、カレン(サクラ枠)を縛る「蛇」の呪縛。
「……あなたの心、勝手に見せてもらうわよ。わがままなのは、お互い様でしょ?」
リリアーヌは、ニルスの最新型デバイスを手に、カレンの深層心理へと潜入します。
そこで見たのは、前世のサクラが抱えていた、一条蓮への「本当の想い」でした。
涙のデバッグ、第10話開幕です。
学院の最上階、特聖室。そこには、蛇の毒(精神汚染)によって意識を失ったカレンが横たわっていた。
彼女は、蛇の組織に「偽りの記憶」を植え付けられ、リリアーヌを前世の仇だと信じ込まされていたのだ。
「……ニルス、接続は?」
「……完了してる。でもリリアーヌ、君の脳も限界だ。5分以上潜ったら、二度と戻ってこれないぞ」
「……5分? 充分すぎるわ。私の秒読み(クロック)を舐めないで」
私は、カレンの額に手を添え、自らもデバイスを装着した。
ハンスが背後で、震える声で叫んでいる。
「リリアーヌ様! 絶対に戻ってきてくださいよ! 給料の未払い、許しませんからね!」
「……ふふ。毒島らしいわね。……リンク、スタート」
視界が歪み、私はカレンの精神世界へと降り立った。
そこは、燃え盛る図書室。
中央で膝をつき、泣いている少女――カレン、そして前世のサクラ。
「……来ないで! あなたは、私を殺した一条蓮の亡霊でしょ!」
カレンが、光の剣を私に向ける。その剣先は、彼女自身の心を切り裂いている。
「……あら。亡霊にしては、随分と現実的な説教をしに来たのだけれど」
私は、炎の中を優雅に歩み寄った。
「カレン。……いえ、サクラ。……あなたは前世で私に言ったわね。『一番大事な心をデバッグし忘れてる』って」
「……っ!?」
「その通りよ。……だから今、私はここにいる。……あなたの『寂しい』というバグを、私が買い叩きに来たの」
私は、カレンの剣を素手で掴んだ。手のひらから血が流れるが、痛みはない。
心理学における『ラポール(信頼)』の形成。相手の痛みを共有し、閉ざされた扉をこじ開ける。
「……組織が植え付けた偽物の憎しみなんて、捨てなさい。……あなたは、私と一緒に『わがまま』に生きたかったはずよ。……違う?」
カレンの瞳から、大粒の涙が溢れ出した。
「……蓮君……? ……う、嘘よ……。あなたは、私を置いていったのに……!」
「……二度と、置いていかないわ。……さあ、目を開けなさい。現実は、ここよりずっと騒がしくて、面白いわよ」
私が彼女を抱きしめた瞬間、精神世界が砕け散った。
「――っはぁ!」
現実世界で、カレンが大きく息を吐き、目を見開いた。
その瞳には、もはや「蛇」の濁りはない。
「……リリアーヌ……様……」
「……お帰りなさい、カレン。……ごめんなさい、少しだけ『わがまま』を通させてもらったわ」
私は、駆け寄るハンスとニルスにカレンを託すと、窓の外に広がる王都の夜景を睨みつけた。
「……ニルス。蛇の組織の拠点は、全て特定したわね?」
「……ああ。君がダイブしている間に、逆探知は完了したよ」
「……いいわ。……ハンス、各国の商会に使いを出しなさい。……明日、この国の通貨価値を、紙屑にしてあげるわ」
私の瞳に、かつて一条蓮が頂点に立った時の、冷徹な支配者の色が宿った。
蛇よ。私の仲間を弄んだ代償、一億倍にして返してあげる。
第10話、いかがでしたでしょうか。
フルダイブによる精神救済、そして「サクラ」との真の再会。
リリアーヌの怒りは、ついに「国家経済の破壊」という、前代未聞の規模へと発展します。
比嘉さんの「知略で勝つ」というテーマが、次回の「経済戦争編」で爆発します!
暴力ではなく、数字と心理で国を跪かせるリリアーヌ。




