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VRMMOで『■■■の龍騎士』になった俺、世界を蹂躙する~ドラゴン×クトゥルフの異質な力は、ただ立っているだけでプレイヤーを狂わせる~  作者: 旅路


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公式イベント告知

 腐敗した湿地帯のどんよりとした空気を切り裂き、ジークはのどかな街『アステリア』へと続く街道を歩いていた。

 湿地帯での戦いからどれほど経っただろうか。ゲーム内時間では夕方に差し掛かる頃合いで、空は橙と紫が混じり合い、街道沿いの木々の梢を燃えるように染めている。


「腹減ったな」


 独り言を呟きながら、兜のスリットから前を見据えた。

 遠くにアステリアの輪郭が見えてくる。石造りの重厚な城壁、その手前の街道にはプレイヤーや行商人のNPCがちらほらと行き来していた。

 

 街道沿いの森から鳥の鳴き声が聞こえていたが、ジークが近づくにつれてそれが止む。草むらの小動物が気配を消し、近くを通り過ぎるはずの旅商人のNPCが、なぜか手綱を引いて遠回りのルートへと逸れていく。

 

 やがて街道の先に、城門に向かって歩くプレイヤーたちの後ろ姿が見えてきた。その一人が振り返り、視線がジークへと向いた瞬間、連鎖するように周囲の数人が足を止めた。


「あれ……黒い鎧の騎士じゃないか?」

「ソロ討伐した人だよね、本物だ!」

「うわ、鎧がなんだあれ……」


 囁き声が波紋のように広がっていく。ジークはそれらを聞き流しながら、歩みを緩めることなく城門へと向かった。

 

 アステリアの城門は、夕暮れの橙色を受けて温かみのある黄金色に染まっていた。衛兵NPCは一拍だけ沈黙した後、定型文通りに口を開く。


「ようこそ、アステリアへ」


「どうも」

 

 ジークは足を止めることもなく、門をくぐった。

 擦れ違いざまに衛兵の横を通り過ぎる瞬間、脈打つ胸板が視界を横切り、ミシリという生体音が耳元で鳴る。衛兵は一瞬だけ、何か言い様のない感覚に足をすくませたが、次の瞬間にはそれが何だったか思い出せなくなっていた。

 

 石畳の大通りへ踏み出しながら、ジークは兜の中で独りごちる。


「かっこいいな、俺」


 ◇ ◇ ◇


 夕暮れの広場は、一日の終わりに向けて緩やかに人が増えていた。ダンジョンから帰還したプレイヤーたちが仲間と今日の成果を語り合い、露店の店主が売れ残りを片付け始めている。噴水から流れる水音が、喧騒の隙間を静かに埋めていた。


 広場の中央、噴水の縁に腰を下ろしたジークはステータスを開く。


【ステータス】

 名前 :ジーク

 種族 :人間

 職業 :騎士

 Lv  :15

 称号 :静かなる捕食者、森の覇者を討つ者


魂源アニマ:■■■の龍騎士】

 • 進行度:9.5%

 • 状態:第一段階『這い寄る龍鱗』発現中

 • ※警告:進行度が50%を超えた場合、種族カテゴリが『人間』から剥離する可能性があります。


【装備:黒蝕の竜騎士鎧】

 • 特性:[這い寄る龍鱗]

 • 外部からの物理衝撃を吸収・微量のMPへ変換し、反動エネルギーとして蓄積する。

 • 破損時、周囲の魔力粒子を喰らい自己修復を行う。修復のたびに性能がランダムに変質・強化される可能性がある。

 • 特性:[深淵の拍動]

 • 戦闘継続時間が延びるほど、装備者の全ステータスを微増させる。代償として、増加量に応じた『侵食』が進行する。


【固有スキル:龍の咆哮(下位・不完全)】

 • 広範囲に物理・精神的衝撃波を放つ。発動時、一時的に頭部パーツの形状が『龍』へと固定される。


「……まだ10%も行ってないのか」


 思ったより低い数値に、ジークは首を傾げた。


「100%になったとき、俺はどうなるんだろうな」


 恐怖はない、ただ純粋な好奇心だけがある。

 指先が無意識に兜の表面をなぞった。あの鱗の感触、咆哮の瞬間に胸の奥から吹き上がってきた圧倒的な何かの目覚め、正直悪くない気分だった。


「……まあ、なるようになるか」


 楽観的な結論を出し、ウィンドウを閉じた。

 その時だった。


 ――ゴォォォォォォン。


 重く荘厳な鐘の音が一つ。アステリアの鐘楼からではない、どこか天上から降り注ぐような、方向のない音がジークの耳元で直接鳴り響いた。


 次の瞬間、空が変わった。


 昼間の青空に、金色の亀裂が走る。まるで空そのものが一枚の布であるかのように、光の縫い目がほつれその向こう側から眩い黄金色の輝きが溢れ出す。


 亀裂は広がり、やがて巨大な巻物の形を形成する。どこまでも広がる仮想の空を背景に、黄金の光で縁取られたスクロールが街全体を覆うほどの大きさで展開されていった。


 ゴォォォォォンッ!!


 二度目の鐘が鳴る。

 今度は一つではなく連続して七回。その音が街中に反響するより早く全プレイヤーの視界中央に、強制的なシステムウィンドウが出現した。


【!重要! 公式イベント告知!!】

 

 ≪エターナルクロニクル 第一回公式大会≫

    『深淵への挑戦』


 全サーバーの英雄たちよ、汝らに試練を与えん。


 1ヶ月後より5日間、特設『深淵迷宮』が開放される。

 この試練において、汝らの『魂源アニマ(固有能力)』は封印される。


 魂の力なき者よ、それでもなお立ち上がれるか?


【イベント概要】


 ■ 前半:深淵迷宮(5日間)

 期間:現実期間で5日間

 特設のローグライクダンジョン『深淵の塔』が期間限定で出現します。

 塔の内部はランダム生成される無限階層構造で、各プレイヤーに固有の「ビルド成長」の機会が与えられます。


【深淵迷宮のルール】


 • 参加時に専用の「イベントスロット」が付与されます。通常のキャラクターデータは持ち込み不可。

 • 塔内では魂源アニマを含む全ての固有能力が【封印】され、誰もが何もない素の状態からスタートします。

 • 階層をクリアするたびに「強化報酬」を三択から選択でき、強化は能力値上昇・スキル付与・装備変化など多岐に渡ります。

 • PvPが全区域で解禁されます。他プレイヤーを倒すことで追加の強化報酬を獲得できます。

 • 死亡した場合、その階層からの再挑戦が可能です。(蓄積した強化は引き継ぎ)

 • 5日間の終了時に到達した最高階層が記録されます。


【評価方式】

 クリア階層・討伐タイム・PvP撃破数・死亡回数などを総合した「深淵スコア」が算出されます。

 スコア上位者は後半の【闘技大会】への出場権を獲得。


 ■ 後半:覇者の闘技大会

 • 深淵スコア上位者のうち、希望者によるトーナメント形式の対人戦です。

 • 試合は全プレイヤーが観戦可能な中央闘技場で行われます。


 形式:シングルエリミネーション(1v1)

 魂源の使用:すべて解禁

 特殊ルール:ビルドは深淵迷宮での最終構成を引き継ぎます。

 試合は全プレイヤーが観戦可能な中央闘技場で行われます。


 ■ 報酬

 深淵迷宮:到達階層に応じた装備・素材・固有スキルの報酬。

 闘技大会:優勝者にゲーム内称号『深淵の覇者』、現時点では未公開の激レアアイテム宝箱が授与されます。



【注意事項】

 • ダンジョン内での死亡はゲーム内死亡のみ。ログアウトは任意に可能です。

 • 一部フロアにて、他プレイヤーとの遭遇・PvP発生の可能性があります。

 • 運営は本イベントで発生する全ての現象について責任を負いません。


 *参加登録は各街の冒険者ギルドにて受付中。

 


 告知が流れた瞬間、アステリアの広場は騒然となった。


「ローグライクって、あのランダムアイテムを積み上げていくやつか!?」

「魂源が封印される……だと!? 俺の全戦力が消えるじゃないか!」

「逆に言えば、弱い魂源持ちでも上位を狙えるってことか!?」

「ビルドゲーじゃないか最高すぎるだろ!!!」

「PvPが全区域解禁って……つまり道中でも普通に刺されるってことだよな」

「強化報酬を奪い合いながら登れってこと? ダンジョンとバトルロワイヤルが同時進行か」


 数秒の静寂の後に爆発したざわめきが、広場全体を包んだ。


 ジークは噴水の縁に座ったまま、再び空に浮かぶ黄金のスクロールを見上げていた。

 告知の文字は、全てのプレイヤーの視界に強制表示されているにもかかわらず、ジークの目には空の巻物がただ滑らかに光を反射しているだけに見えた。


(魂源が封印される、か)


 つまり、「■■■の龍騎士」はない。鱗の鎧も、咆哮も、あの黒い粒子による侵食も、自律防御のマントも、何もかもが封じられる。

 使えるのは、「素の自分」だけ。


「……面白そうじゃないか」


 口角が上がる。


 騎士は強さの象徴だ。

 魔法も、固有能力も、特別な血筋も関係なく、鍛え抜かれた肉体と研ぎ澄まされた技術と、折れない意志だけで頂点に立つ。


 そういう騎士の話が、ジークは好きだった。


「装備だけで、どこまで戦えるか」


 拳を握り漆黒の籠手が、ドクリと脈打つ。


「試してみる価値は、あるな」


 ジークは立ち上がった。

 黒い皮膜のマントが、夕暮れの風をはらんで大きく広がる。広場の人ごみの中を堂々と歩き、冒険者ギルドの方向へ向かった。


 その背中を遠目に見ていた何人かのプレイヤーが、こっそりスクリーンショットを撮ると、夕陽を背負った漆黒の騎士の影は、地面に落ちるかわりに足元で静かに渦を巻いていた。


 ◇ ◇ ◇


【エタクロ】第一回公式大会『深淵への挑戦』情報スレ Part.1【魂源封印!?】


1. 名無しの冒険者

 公式大会きたああああああああ!!!

 情報共有スレ立てたぞ語れ!


2. 名無しの冒険者

 マジか!!!

 サービス開始一ヶ月でもう大会やるの早くない!?


3. 名無しの冒険者

 それより魂源封印ってなんだよ

 俺の【炎熱】返せ


4. 名無しの冒険者

 >>3

 いや待て、よく読め

 「前半の深淵迷宮」が封印であって、後半の闘技大会は全解禁だぞ


5. 名無しの冒険者

 >>4

 それでも前半がキツすぎる

 俺のビルド魂源ありきで組んでるから、素の状態で何階まで行けるか全く想像できん


6. 名無しの冒険者

 でも逆にチャンスじゃね?

 普段は強い魂源持ちにボコられるだけの雑魚が、素の実力で上位に食い込める可能性があるってことだろ


7. 名無しの冒険者

 >>6

 甘い

 魂源ない状態でも上手い奴は上手いから

 実力差はむしろ魂源なしの方が露骨に出るぞ


8. 名無しの冒険者

 深淵迷宮のローグライクシステムが面白そう

 三択強化って何が出るんだろ

 「HP+100」みたいなしょぼいやつから「全魔法コスト0」みたいなぶっ壊れまで幅ありそう


9. 名無しの冒険者

 PvP全域解禁が一番ヤバい要素だと思うんだけど

 つまり強化報酬ガン積みの奴が下の階でウロついて狩りまくるムーブが成立するよな


10. 名無しの冒険者

 >>9

 やめろよ……絶対やる奴いるだろこれ


11. 名無しの冒険者

 いやでもそれもゲームデザインとして想定してるんじゃないか

 「倒すことで追加強化報酬を獲得」ってわざわざ書いてあるし

 PKも戦略の一つとして組み込まれてる系のやつだろ


12. 名無しの冒険者

 「運営は本イベントで発生する全ての現象について責任を負いません」

 この一文が不穏すぎる

 いつもそういう免責文あるにしても、特記してるのはなんで?


13. 名無しの冒険者

 >>12

 俺も気になった

 イベント内の特殊ギミックで何か起こる予告みたいなもんじゃないの

 ダンジョン内に運営仕込みのトラップとか、特定フロアでボスが暴走するとか


14. 名無しの冒険者

 深淵スコアの計算式が気になる

 クリア階層・討伐タイム・PvP撃破数・死亡回数の総合って書いてあるけど

 死亡0でひたすら深く潜るのが最強ルートなのか

 それともPvPで稼ぐのが効率いいのか


15. 名無しの冒険者

 >>14

 死亡回数がスコアに入ってるなら、死亡ゼロクリアが最重要条件では

 一回でも死んだら大幅ペナルティとかになりそう


16. 名無しの冒険者

 闘技大会の「ビルドは深淵迷宮での最終構成を引き継ぎ」ってやつ

 つまり前半でどれだけ強い構成を作れるかが後半に直結するわけか

 大会まるごと繋がった一本の戦いなんだな


17. 名無しの冒険者

 優勝報酬の「未公開の激レアアイテム宝箱」がめちゃくちゃ気になる

 ゲームの根幹に関わるアイテムだったりして


18. 名無しの冒険者

 正直、魂源封印なら普通に強い奴が強いだけでしょ

 結局「黄金の盾」の団長とか「剣聖」とか上位層が独占するんじゃないの


19. 名無しの冒険者

 まあとにかく一ヶ月後が楽しみすぎる

 久々にゲームで本気でドキドキしてる


20. 名無しの冒険者

 俺は今から参加登録してくる

 みんなも会場で会おうぜ


21. 名無しの冒険者

 参加するとして、あの剣聖と同じブロックに入れられたら…

 拒否権ある?


22. 名無しの冒険者

 >>21

 ない


23. 名無しの冒険者

 合掌



読んでいただきありがとうございます。

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