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VRMMOで『■■■の龍騎士』になった俺、世界を蹂躙する~ドラゴン×クトゥルフの異質な力は、ただ立っているだけでプレイヤーを狂わせる~  作者: 旅路


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鎧の変貌

【はい】を選択した瞬間、ジークの視界の中央に浮かぶ無機質なウィンドウが弾け飛び、金色の光の粒子となって空へと吸い込まれていった。

 

 直後、静寂を取り戻したはずの森の上空に、システム音声ではない、世界そのものが震えるような荘厳なファンファーレが響き渡る。それはこのエリアにいる全プレイヤー、いや、サーバーに接続している全ての冒険者の耳元へと直接届けられた。


『【ワールドアナウンス】

 ――偉業達成!

 プレイヤー:ジークが、未踏破エリアボス『オーク・ジェネラル』の初討伐、ソロ討伐を達成しました!

 この栄誉は永遠に『始まりの碑石』へと刻まれます』


『【ワールドアナウンス】

 エリアボスの討伐に伴い、新フィールド『腐敗した湿地帯』へのルートが解放されました。』


 そしてオーク・ジェネラルの巨体が、黒い粒子に食い荒らされながら光の塵へと還っていく。

 その光景を、ジークはクレーターの中心で大剣を杖代わりにして、膝をついたまま見つめていた。周囲には、先ほどの咆哮の激突で粉砕された巨木の残骸が転がり、抉られた大地の生々しい土の匂いと、焦げ付いた魔力の残滓が立ち込めている。


「……はぁ、はぁ、……クソ、こんな苦戦するとは思わなかった。完全にナメてた…」

 

 ジークは思わず毒づく、自分の力を過信しボスに挑んだ事を。


「ギリギリで勝ったはいいものの、あと少しで負けていた…!」


 視界には、レベルアップのログとスキルの解放通知が点滅し続けているが、それを確認する余裕すらない。

 アドレナリンが引き代わりに襲ってきたのは、全身を苛む凄まじい疲労感と、VRが再現する「重い倦怠感」だった。痛覚制限があるとはいえ、心臓の鼓動が耳元で爆音のように鳴り響き肺が焼けるような感覚は本物だ。

 疲れ果てた体が休息を求めるように目を閉じた。

 

 だが突然。

 ――カチ、リ。

 小さな金属音が響く、それはジークの胸元から聞こえていた。


「……は?」


 ――ギチッ。

 ジークが視線を落とすと、そこには目を疑うような光景が広がっていた。オークの戦斧をまともに受け、紙屑のようにひしゃげていたはずの腹部のプレートアーマー。その「傷」に滞留していた黒い粒子が吸い寄せられるように集まり、粘着質の黒い流体が埋めていく。

 流体は瞬時に硬化し、鋼鉄よりも硬く、黒曜石のように歪んだ金属を繋ぎ合わせ始めていたのだ。

 

 だが、それは単なる「修理」ではなかった。

 修復される箇所から、鋼鉄の質感が変質していく。かつては板金そのものだった胸部は、今や荒ぶる龍がその胸郭を膨らませたかのような、圧倒的な立体感を伴うフォルムへと変貌していた。


 装甲の表面には、まるで生物の筋肉の走行をなぞるように、鋭利な幾何学的赤いラインが刻み込まれていく。

 それは鎧でありながら、その下に強靭な巨獣の肉体が隠されていることを予感させる、禍々しいまでの「躍動感」を秘めていた。中央の合わせ目に向かって幾重にも重なる装甲板の層は、外部からの衝撃を逃がすための機能美を超え、獲物を威嚇する龍の胸筋そのものを硬質な金属で鋳造したかのようだ。


 ジークが深い呼吸を一つ吐き出すと、その胸板がわずかに「動いた」。

 肺の膨らみに合わせて装甲が柔軟に噛み合い、隙間を埋める黒い繊維状の組織が、まるで呼吸を補助する蛇腹のように収縮する。


 光を当てれば銀色に輝いていたはずの鋼鉄は、今や煤を塗りたくったような、あるいは深海の底を思わせる「光を拒絶する黒」へと塗り替えられていく。

 鈍い光を放つその黒い鋼は、以前の単なる防具とは一線を画していた。それは持ち主の心拍に合わせ、その意思に呼応して脈動する、硬質な「外殻」と呼ぶべきものだ。


 次に変化が起きたのは、腕の関節部分だった。

 以前は革のベルトと関節金具で繋がれていた肘の隙間。そこから、赤黒い筋肉のような「繊維状の組織」が這い出し、金属と金属の間を強固に埋め尽くしていった。

 軽く肘を曲げると、以前までの重量感ある無機質な摩擦音は消えていた。代わりに響くのは、濡れた革が擦れるような、あるいは巨大な獣が身じろぎする時のような、「ミシリ……」という重々しい生体音だ。


「……っ、なんだこの感覚!鎧が締まるのか……?」

 

 ジークは顔をしかめた。

 鎧が自分の体に合わせて、わずかに収縮している。いや、まるでオーダーメイドの革製品が馴染むように、ジークの筋肉の動きに最適化された形状へと、内側から作り替えられているのだ。


 兜の形状も、かつての円筒形に近いものから、中央がわずかに盛り上がった、龍の頭蓋骨のラインをなぞるようなシルエットへと落ち着いている。

 スリット状の視界の縁には、肉眼では確認できないほど細かな、しかし指先で触れれば皮膚を裂くほどに鋭い「牙」のような刻みが、びっしりと並んでいた。


 変化は足元、足甲へと伝播する。

 かつては、重歩兵らしい平坦で重厚なものだった。それが今地面を掴むための「爪」を暗示するように、先端がわずかに鋭角化し三つの節に分かれた構造へと変わっている。

 泥を噛むその感触が、今までよりもずっとダイレクトに足の裏に伝わってくる。まるで、自分の足がそのまま鋼鉄化したかのような一体感。

 

 そして、最も変化したのが肩鎧だ。

 かつては敵の刃を弾き返すために大きく丸みを帯びていた肩の形状。それが、後方に向けて流れるように「ヒレ」のような形状へと鋭く変化した。それは、空気抵抗を極限まで減らし、一瞬の踏み込みで音速を超えるための、「捕食者のための空力形状」を彷彿とさせた。


 ジークは立ち上がった。

 総重量は以前よりも増しているはずだ。しかし、不思議なほどに体は軽い。

 背中を覆うボロボロになったマント、その基部からも黒い組織が侵食を始め、布地を重厚な「龍の翼の皮膜」を思わせる質感へと変え始めていた。


「これは…元の騎士の鎧とは、完全に別物だな」


『装備修復完了:形状変異を確認』

『名称変更:【装備:黒蝕の竜騎士鎧】

 • 特性:[這い寄る龍鱗]

 • 外部からの物理衝撃を吸収し、微量のMPへと変換する。

 • 破損時、周囲の魔力粒子を吸収して自己修復を行う。修復のたびに性能がランダムに強化される可能性がある。

 • 特性:[深淵の拍動]

 • 戦闘継続時間が延びるほど、装備者の全ステータスを微増させる。ただし、増加量に応じて『侵食』が進行する。

【固有スキル:龍の咆哮(下位・不完全)】

 • 広範囲に物理・精神的衝撃波を放つ。発動時、一時的に頭部パーツの形状が『龍』へと固定される』


 *ここでいう魔力とはMP、マナの事。


【固有能力:■■■の龍騎士】

 • 進行度:7.0%

 • 第一段階『這い寄る龍鱗』発現中

 • ※警告:進行度が50%を超えた場合、種族カテゴリが『人間』から外れる可能性があります。


 それが目に入った瞬間、背筋に冷たいものが走る。

 だが、ジークの口元は恐怖よりも好奇心で歪んでいた。

 普通のゲームならバグ報告するものだが、このフルダイブVRにおいては「固有能力」こそが正義。誰にも真似できない、自分だけの力その代償が「人間を辞める」ことだとしても、この圧倒的な全能感には代えがたい魅力があった。


 その頃、ワールドアナウンスを聞いていた者達は……。


 ◇ ◇ ◇


 焼け焦げた戦場、あるいは血生臭い闘技場の最深部。

 そこに、ボロボロに引き裂かれた深紅のマントを羽織り、巨大なパイルバンカーを右腕に固定した男が座っている。


「……ハッ、ハハハハッ! ソロか! たった一人で、あの化物をブチ殺したのかよ!」


 地響きのような笑い声。身体と排気筒から蒸気が勢いよく噴き出していた。




「ヘぇ〜面白いのがいるね。あのオーク、狙ってたんだけどな」


 万年雪が降り積もる孤高の山。

 白装束に身を包み、身の丈ほどもある抜刀を携えた青年がいた。


「なら――代わりに斬るか……」


 彼はゆっくりと、長刀の柄に指先を滑らせる。白銀の装飾が施された鞘が淡い光を弾いた。




 きらびやかなカジノエリアで積み上げられたチップの山を前に、一人の男がトランプを弄んでいた。シルクハットを深く被り、常に不敵な笑みを浮かべる男。


「彼はどういう勝ち方したんだ?気になるなぁ?探すか」


 指先には常に一枚のトランプが挟まれており、それが生き物のように指の間を動き回る。




 静寂が支配する、真っ白な大聖堂。

 高い天井から降り注ぐ陽光が、無数の塵を黄金色に輝かせ、ステンドグラスを通した極彩色の影が冷たい大理石の床に落ちている。


「……あら。あのような不浄の塊を、たった一人で倒したの?どうやって…?」


 彼女がゆっくりと立ち上がると、重厚な法衣が衣擦れの音を立てる。


「ぜひ、この目で確かめたいですね!」


 伏せられていた瞼が持ち上がった瞬間、穏やかな慈愛の奥底で、底知れない狂気と好奇心が淡く発光した。


キャラの個性出す為、初期地の場所をランダムに修正しました。


読んでいただきありがとうございます。

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