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VRMMOで『■■■の龍騎士』になった俺、世界を蹂躙する~ドラゴン×クトゥルフの異質な力は、ただ立っているだけでプレイヤーを狂わせる~  作者: 旅路


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4/8

死戦

 ジークは『静寂の森』のさらに深淵へと足を踏み入れる。


 進むにつれて、森の様相は明らかな変化を見せ始めていた。頭上を覆う巨木の枝葉はさらに密度を増し、昼間であるにもかかわらず、まるで真夜中のような暗闇が辺りを支配している。足元の腐葉土は湿り気を通り越し、泥のようにぬかるんでいた。


 だが全身を覆い尽くすプレートアーマーは、そのぬかるみをものともせず、圧倒的な質量で地面を平らに踏み固めながら進んでいった。


 やがて、不意に鼻腔を突く強烈な獣の臭いが漂ってくる。血と泥、そしてむせ返るような獣脂の匂い。


 同時に、森の空気がビリビリと震え始めた。圧倒的な「強者」が存在することによる周囲の環境そのものが畏縮しているかのような、暴力的なまでの重圧感。


「……いるな」


 兜の下で、ジークの口角が自然と吊り上がる。

 視界を遮っていた太い木々が不自然に途切れ、すり鉢状に窪んだ巨大な空間へと躍り出た。本来そこにあったはずの木々は、まるで小枝か何かのように無残になぎ倒され、あるいは根元から無造作にへし折られており、見渡す限りの荒涼とした赤茶けた土がむき出しになっている。

 その巨大な擂り鉢の中央、荒れ果てたボスエリアの中心に、そいつはどっしりと鎮座していた。


「グルルルゥ……」


 低い、地鳴りのような唸り声。

 立ち上がったその巨体は、優に三メートルを超えていた。緑褐色の分厚い皮膚は、鋼鉄の鎧すら凌駕するほどの硬度を感じさせその下には丸太のように太く、隆起した筋肉が異常なまでに詰まっている。顔の半分を覆うような巨大な牙、そして歴戦の証である無数の傷跡。


 この森の最深部に君臨する絶対的な覇者、『オーク・ジェネラル』であった。


 その手には、ジークの全身ほどもある巨大な片刃の戦斧が握られている。刃は分厚くただの金属の塊と言っていいあれで斬られるのではない、叩き潰されるのだと、一目見ただけで理解できる凶悪な代物だった。


 オーク・ジェネラルもまた、森の奥深くまで単騎で乗り込んできた小さな鉄の塊を見下ろし、その血走った双眸を細めた。侵入者への怒りだけではない、自らの縄張りを荒らされた不快感と、同時に「獲物」としての品定めをするような残忍な光が宿る。


「おお……! でかい、そしていかにも強そうだ。これだよ、これ! 騎士の前に立ちはだかるのは、こういう巨大で理不尽な化物でなくちゃな!」


 恐怖など欠片もない。ただ胸にあるのは、全力で戦えるという高揚感だけだった。


 ガシャリ、ズシリ。


 重厚な金属音を響かせながら、一歩一歩ゆっくり踏み出す。

 すると、オーク・ジェネラルが先に動いた。手にした巨大な戦斧を地面に突き立て、巨大な胸郭を限界まで膨らませ始めたのだ。


 ズゴォォォォォォ……ッ!

 森の空気がまるで巨大な渦潮に飲み込まれるようにオークの口元へと集中していき、周囲の落ち葉が竜巻のように舞い上がる。バキバキと音を立てて木々の枝がオークの方へとしなり始めた。


「おお……! いきなりか! いいぜ!」


 ジークは歓声を上げ、背中に背負った大剣を抜き放ち力強く地面に突き立てた。自らも両足を大地に深く沈め込み迎撃の体勢をとる。


「逃げはしない。その咆哮を放つなら、俺も龍騎士の名に懸けてお前を迎え撃つ!」


 ガァァッ!!

 その瞬間、ジークの頭部を覆っていた無骨で、何の変哲もないはずの鉄兜に異変が走った。


 ギチリ、と金属が軋む。

 いや、違う——鳴いているのだ。


 内側から何かが暴れ回るかのように、硬質なはずの兜の表面がドクドクと脈打ち、継ぎ目という継ぎ目から粘つくような『黒』が滲み出す。


 次の瞬間、それは敵意に満ちたオークの絶叫に応えるかのように——否、眼前の獲物を威嚇する凶獣のごとく、兜そのものが低く、おぞましい唸り声を上げた。誰に向けた殺意かなど、考えるまでもない。


 森の覇者が放つ重圧を喰らい尽くさんばかりに、鉄兜は牙を剥くようにその形状を歪めていった。


「……ん? なんだ」


 一枚、また一枚と、分厚く硬質な鱗がどこからともなく湧き出し、重なり合いながらみるみると兜の表面を覆い尽くしていく。


 それは爬虫類の滑らかな鱗では決してない。荒々しく尖り、光を一切反射しない絶対的な黒色をしており、表面には血管のような赤い亀裂が走っていた。

 鱗同士が擦れ合うたびに、ジャリッ、ギチギチッという、岩石を噛み砕くような不快な音が周囲に撒き散らされる。


 そして無機質で強固なはずの鋼鉄の面頬が、まるで腐肉のようにドロドロと溶け落ち、その空洞の奥から無数の漆黒の触手が這い出してきたのだ。

 触手は独立した生き物のようにうごめき、互いに複雑に絡み合い、緻密に編み込まれるようにして巨大で凶悪な「顎」の形を形成していく。


 触手の隙間からは、爛々と輝く無数の眼球がボコボコと水膨れのように浮かび上がり、ギョロギョロと狂気を孕んだ視線を四方八方へと撒き散らした。


 やがてそれらの無数の眼球が、瞬時に顔の左右二箇所へと集束し融合する。それは爬虫類のような縦孔を持ちながらも、覗き込めば精神を破壊される底知れぬ宇宙の深淵を閉じ込めたかのような縦に裂けた真紅の瞳へと変貌を遂げた。


 頭頂部からは悪魔を象徴する山羊の角と怨念を吸って育った龍の角を掛け合わせたように、歪で非対称なあまりにも冒涜的な二本の角が、天を貫くように鋭く伸びた。

 それは龍のようであったが決してこの世に存在していい龍ではない。


 龍の頭部と化したジークの顔面もまた、オーク・ジェネラルに呼応するかのようにありえないほどに、その大顎を開き、周囲の空気を貪り食うように吸い込み始めた。


 空間が歪む。ジークの周囲の空気が漆黒に染まり、オークの吸気とは全く異なる、重力そのものが狂い始めたかのような不気味な渦が形成される。

 そして、両者は同時にそれを解き放った。


「グオォォォォォォォォォォォッ!!!」

「ガァオォォォォォォォォォォォッ!!!」


 オーク・ジェネラルの野獣の咆哮と、ジークの頭部を浸食した異形の龍の咆哮。

 二つの絶叫は単なる巨大な「音」ではなく、圧倒的な質量と魔力を持った「破壊の波動」となって空間を突き進みすり鉢状のエリアの中央、何もない空中で正面から激突した。


 ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!

 それは、雷が真横で落ちたかのような、いや、それ以上の天地を揺るがす大音響であった。二つの咆哮が衝突した地点を中心に、半透明の球状の衝撃波が爆発的に膨れ上がる。


 バリバリバリッ! メキメキメキッ!

 周囲の空間がガラスのようにひび割れる錯覚。拮抗し、行き場を失った破壊のエネルギーは、容赦なく周囲の環境へと牙を剥いた。


 足元の硬く踏み固められた土壌が一瞬にして捲り上がり、巨大な土津波となって四方へと吹き飛ぶ。すり鉢状のエリアの縁に辛うじて立っていた樹齢数百年はあろうかという巨木たちが、宙に舞い上がり粉々に砕け散りながら彼方へと吹き飛ばされていく。


 ジークは突き立てた大剣の柄を握り、荒れ狂う暴風と降り注ぐ土砂の中、立ち続けた。オーク・ジェネラルもまた、その丸太のような両足を深く泥に沈め、自らの放った波動と跳ね返る衝撃波の余波に顔を歪ませながら耐え凌いでいる。


 やがて、狂乱の嵐が止んだ。

 もうもうと立ち込めていた赤茶けた土煙が、ゆっくりと風に流されて晴れていく。両者の間にあった地面は、まるで巨大な隕石が落下したかのように深く抉られ、直径十メートル以上にも及ぶ巨大なクレーターを形成していた。


 ジークはゆっくりと正面を見上げる。

 その頭部を覆っていた悍ましい異形の龍の顔は、すでに跡形もなく消え去っていた。咆哮を放ち終えた直後、あれほど冒涜的に蠢いていた触手も鱗も角も、まるで幻覚であったかのように再びドロドロと溶け崩れ、瞬く間に元の無骨な鉄の兜へと戻っていたのだ。


「……ッハ!」


 己の頭部に起きた常軌を逸した現象を、まったく気にする様子がなかった。いや、気にする余裕など最初からない、彼の全神経はクレーターの向こう側で怒りに肩を震わせる巨大な敵の存在のみに向けられていた。

 兜の奥で、ジークの口元が歪む。


「最高だ!挨拶代わりとしては満点以上の代物だったぜ!」


 地面に突き立てていた大剣を力強く引き抜き、ジークの肩に担ぎ上げられた。


「さあ来い!」

「ガアアアアッ!」


 地面を蹴る音というより爆発音に近かい三メートルの巨体が、その質量からは信じられないほどの速度で距離を詰めてくる。振り上げられた巨大な戦斧が、空気を引き裂きながらジークの頭上へと落下してきた。


 回避はしない。いやする気など最初からない彼は、両足でしっかりと踏みしめバスタードソードを両手で下から上へとカチ上げた。


 ガガァァァァァァンッ!!

 大剣と戦斧が激突し、森全体を揺るがすほどの凄まじい轟音が響き渡った。ぶつかり合った金属の境目から、オレンジ色の火花が爆竹のように弾け飛ぶ。

 凄まじい衝撃足元にあった土が一瞬にして吹き飛び、クレーターのように陥没した。ジークの膝がわずかに沈み込み、全身の骨が軋むようなフィードバックがVRのシステムを通じて脳に伝達される。痛覚制限があるとはいえ、この重圧は本物だった。


「ぐっ……おぉぉぉぉッ! 重いな、さすがボスだ!」


 歯を食いしばりながらも、兜の奥で狂気じみた笑みを浮かべていた。オーク・ジェネラルは驚愕して目を丸くする。自分の渾身の一撃を、こんなちっぽけな人間が真っ向から受け止めたのだ。しかも、その鉄の鎧はひしゃげるどころか、微動だにしていない。


「ギガァァッ!」


 オークは戦斧を強引に引き戻すと、今度は横薙ぎの一撃を放つ。大木を何本もまとめて薙ぎ払うような圧倒的な暴力、ジークは大剣の腹を盾にしてそれを受けた。

 ズガァンッ!衝撃でジークの体が数メートル後方へ吹き飛ばされる。フルプレートアーマーの重量がなければ、はるか彼方まで飛んでいっていただろう。ジークは空中で体勢を立て直し鋼鉄のブーツで地面をえぐるようにして着地した。

 左腕の装甲がわずかにひしゃげ、鈍い痛みが走る。


「強いな……いいぞ!もっとだ!」


 次の瞬間、ジークの姿が弾けた。抉れたクレーターの斜面を一息に踏破し、土砂を爆ぜ上げながらオーク・ジェネラルの目前へ躍り出る。


「ガァアアアッ!」

 オーク・ジェネラルもまた、迎え撃つように巨大な戦斧を振り上げる。三メートルを超える巨体から放たれる純粋な筋肉の暴力だ。

 ガギィィィィィンッ!!!

 大剣と戦斧が真っ向から激突した瞬間に強烈な閃光が迸り、鋼鉄同士が限界を超えて軋み合う凄まじい金属音が周囲の空気をビリビリと震わせた。


 膂力の勝負。人間の規格を遥かに超えた力と、魔物の頂点に立つオークの怪力が拮抗し、両者の足元の地面がさらに深く陥没する。


「オオオオオッ!」


 ジークが気合と共に剣の角度をずらし、戦斧の軌道を横へと逸らす。生まれた一瞬の隙に、大剣の刃をオークの分厚い胸板へと滑らせた。

 ズバァッ!

 鋼鉄の鎧より硬いとされる緑褐色の皮膚が裂け、どす黒い血が飛沫となって舞い上がる。だが、その傷は浅い三メートルを超える巨体からすれば、掠り傷に等しいものだった。


 しかし、大剣が切り裂いた傷口から煙のような「黒い粒子」が侵食し始める。その粒子はただ傷口から漏れ出ているのではない、傷の断面にへばりつき肉を焦がすようにして、オークの体をゆっくりと捕食し始めたのだ。


「グガァッ!?」


 オーク・ジェネラルが、ただの切り傷以上の痛みに顔を歪め一歩後退した。あの黒い粒子は、確実にこの巨体の生命力を内側から削り取っている。大剣に宿る特異な力。


「効いてるな。よし、削り合いなら望むところだ!」


 しかし、その油断が一瞬の隙を生んだ。的確に蹴りを放ち、丸太のように太い脚が容赦なく腹部へめり込む。


 ドゴォッ!

 凄まじい衝撃、重量級のプレートアーマーの腹部が大きく陥没した。ジークの体はのように後方へと吹き飛ばされ、泥に塗れた地面を何度もバウンドし、倒木に激突してようやく止まった。


 肺機能低下のデバフアイコンが視界に点滅し、全身を焼く痛みと、折れた肋骨が内臓に刺さるようなリアルな感触。


「クソっ!……いてぇ……!」


 仰向けに倒れた視界の端で、赤く点滅する警告灯が煩わしいほどに主張している。だが、ジークは口の中に溜まった鉄の味がする唾を吐き捨てると、軋む膝を無理やり伸ばして立ち上がった


「こんな痛ぇのかよ……このゲーム…!だがよ、ここまで来たらやるしかねぇよな!」


 全身から、凄まじい気迫が噴き上がる。腹部の装甲は無惨に凹み、内側から肉を圧迫しているはずだが、動きに鈍りは一切なかった。


「グルァアアアッ!」


 オーク・ジェネラルもまた、待ってはくれない。獲物がまだ動くことに苛立ちを覚えたのか、その巨体に見合わぬ敏捷さで再び突進を開始する。

 ドスン、ドスン、と地響きが近づく。

 ジークは真正面から迎え撃った。今の彼の頭には、回避という選択肢など微塵も浮かんでいなかった。


 大剣と戦斧が再び激突する。だが今度は、一撃離脱ではない互いに武器を押し付け合い、至近距離での力の比べ合いへと発展した。

 ギギギギギ……ッ!

 鋼鉄と鋼鉄が悲鳴を上げた。オークの圧倒的な筋力が押し潰そうとするが、足元の泥を深々と踏みしめ、全身のバネを使って拮抗した。


「へっ……効いてきたか、この野郎!」


 ジークは剣の鍔迫り合いを維持したまま、空いた左手の拳をオークの土手っ腹に叩き込んだ。

 金属のガントレットが硬質の皮膚を殴打し、オークが苦悶の声を漏らすが、即座に裏拳でジークの側頭部を殴り飛ばす。


 ゴォンッ!

 兜の中で鐘が鳴ったような衝撃。視界が白黒に明滅し、平衡感覚が一瞬で吹き飛ぶ。だが、ジークは倒れなかった。揺らぐ視界の中で、本能だけで大剣を振い、大剣の先端がオークの太腿を掠め、分厚い肉を削ぎ落とす。鮮血がジークの鎧に降り注ぎ、赤黒い染みを作っていった。


 そこからは、まさに泥仕合だった。技術も戦術もない、ただ互いの体力を削り合うだけの原始的な殺し合い。


 オークの戦斧がジークの肩口を捉え、幾重にも重ねられた肩鎧を紙屑のように引き裂いた。鎖骨が砕ける感触が脳に走る。

 返す刀で大剣を突き出し、オークの左腕に深々と突き刺さり、骨に食い込む感触。ねじり込むと、オークは絶叫しながら腕を振り回し、剣ごと放り投げようとする。


 フルプレートアーマーは、今や原形を留めぬほどに歪み、砕け、剥がれ落ちていた。露出した鎖帷子も千切れ、アバターの生身が覗いている箇所からは、赤いポリゴンのエフェクトではなく、生々しい血が流れ出している。


 オーク・ジェネラルもまた、全身が傷だらけだった。自慢の緑褐色の皮膚はズタズタに裂け、無数の切り傷からはあの「黒い粒子」が侵入し、傷口を腐敗させ続けている。片目は潰れ、呼吸は荒く、口からは血と泡が混じった涎を垂れ流していた。


「ハァ……ハァ……! コイツしぶといな……!」


 距離を取り、互いに肩で息をつく。雨のように降り注ぎ血が流れた。


 ――その瞬間は唐突訪れた。


 オーク・ジェネラルが、最後の力を振り絞るように咆哮する。それは威嚇ではない、決着をつけるための合図だ。

 奴は巨大な戦斧を両手で高く振り上げると、全身の筋肉を膨張させ、赤黒いオーラを纏い始めた。


 ジークは目の奥を焼くような鋭い痛みを強引に飲み込み、無意識のうちに求めていた。

 先ほど一瞬だけ顕現した、あの兜の奥に潜む龍の咆哮を。大剣の柄を握る手に全神経を研ぎ澄ませ、足元の泥を根こそぎ抱き込むかのように大地を踏みしめた。


「これで最後だ!」


 低く漏れた唸りに呼応するように、内側から何かが「目醒める」ような、逃れがたい圧迫感が彼を取り巻く。

 同時に、大剣に宿る黒い粒子がじわりと発現した。それは傷口で見せた貪欲さを増し、刃に沿って立ち上る冷たい霧となって、周囲の光を吸い込んでいく。


 オークの巨大な戦斧が、空を割って振り下ろされる。

 刃と刃が激突する直前、世界から音が消え、時間が停止したかのような錯覚がジークを包んだ。だが、それは破滅的な衝突への前触れに過ぎない。ジークはそのわずかな静寂を逃さず、全身の質量を剣へと乗せた。

 腕、胴、脚——そして内側から噴き上がるナニカ。すべてが一点に収束し、臨界点を突破する。


「——いい加減、くたばりヤガレェェ!」


 ドォォォォンッ!!

 轟音と共にジークの大剣が爆ぜた。

 放たれたのは、規格外の軌道を描く蹂躙の一撃。刃が空気を切り裂くたびに黒い粒子が狂ったように煌めき、地表の泥と血をまとめて引き裂いていった。

 そこにあるのはもはや単なる物理的な斬撃ではない、触れるものすべての生命を根こそぎ削り取っていく。


 オーク・ジェネラルは本能的な恐怖に突き動かされ、戦斧でそれを受け止めようとした。しかし、ジークの剣は鋼の理を無視して軌道を変え、戦斧の刃元を粉砕。そのまま奴の分厚い胸部へと深く叩き込まれる。


「グガァッ……!!」


 鋭い刃が胸板を抉り、緑褐色の皮膚が、肉が、無残に裂かれた。

 その傷口から、待機していた黒い粒子が雪崩のように流れ込んだ。粒子は傷の内側で瞬時に増殖しオークの強靭な筋肉を内部から蝕み、まるでもう一つの意志を持つ獣のように、その命を蒸発させていく。


「グガガァァァッ……!!!」


 オーク・ジェネラルは空気を引き裂くような断末魔を上げ、その巨体を大きくよろめかせた。だが攻勢は止まらない、追撃を躊躇することなくさらに剣をねじ込み、刃を引き抜く。


 黒い粒子は逆流を許さず、貪欲にオークの体内へと食らいついた。噴き出すはずの血は蒸発するように消え失せ、森の覇者たる咆哮は次第に、力なき雑音へと成り果てていった。


 ジークは全身に残された全精力を振り絞り、剣を水平に一閃した。

 刃が通り抜けた軌道に沿って、オークの胸部は真っ二つに裂け、内臓と筋繊維が断ち切られる。大地にこだまする凄まじい地鳴りとともに、巨体は前のめりに崩れ落ち、戦斧は主を失ったまま深く泥にめり込み静止した。


「やっとくたばったか……」


【戦闘終了:「オーク・ジェネラル」を討伐しました】

【レベルが大幅に上昇します:3→12】

【称号『森の覇者を討つ者』を獲得しました】

【固有能力『■■■の龍騎士』の進行度が上昇します】

 • 進行度:7.0%

 • 第一段階 破損した鎧が『這い寄る龍鱗』へと変異しました。


【初討伐対象を確認。「オーク・ジェネラル」の討伐記録を全体公開しますか? はい/いいえ】


【はい】

読んでいただきありがとうございます。

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