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VRMMOで『■■■の龍騎士』になった俺、世界を蹂躙する~ドラゴン×クトゥルフの異質な力ゆえに、プレイヤーからラスボス扱いされる~  作者: 旅路


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深淵迷宮1日目 続き

 第6層へ続く階段は、これまでの階層と比べて明らかに空気が重かった。足を踏み入れた瞬間、肌にまとわりつく湿気と、どこか甘ったるい腐臭、遠くから聞こえてくる低いうなり声が混ざり合い、奇妙な圧迫感を生み出している。


 ジークは錆びた大剣を肩に担ぎ直し、自分の後ろを歩く三体のスケルトンに目をやった。召喚体たちはもうつまずかないし、壁に激突することもなくなっている。ようやく戦力としてまともに機能し始めたのだ。


「よし、行くぞ」


 ジークが一歩を踏み出すと、背後のスケルトンたちも足並みを揃えて続いた。


 6層のフロアは細い通路と広間が入り組んだ迷路のようで、視界が開けた瞬間に何体もの敵と鉢合わせる可能性がある。案の定、最初の広間に到達すると四方から姿を現したのは、計六体のゾンビだった。腐肉に覆われた腕が一斉にこちらへ向けられ、喉の奥から獣じみた唸り声が響く。


「三体、右側へ」


 ジークの指示が飛び、スケルトンたちは迷うことなく右側から迫る三体へと突撃した。肉のない細い骨の身体は、ゾンビの鈍重な振りを紙一重でかわし、錆びた剣を的確に隙間へと突き立てる。


 その隙に、ジークは左側の三体へと踏み込んだ。

 大剣を両手で握り締め、腰の捻りを加えた全力の横薙ぎ。鉄の塊が空気を切り裂く、ブォン!という重低音が響き、最前列にいたゾンビの胴体に食い込んだ。腐った肉と骨をまとめて断ち切る感触が、柄を通じて掌に伝わる。

 勢いは止まらない。一体目を両断した大剣は、そのまま二体目の胸部を粉砕し、後方の壁際まで吹き飛ばした。

(この重量感だ……!)

 一撃必殺の破壊力が、ジークの脳内に高揚感をもたらす。


【HP:72/100】


 だが、三体目のゾンビが横から腕を振るい、ジークの脇腹に爪が食い込んだ。皮膚が裂ける鋭い痛みが走り、思わず顔をしかめる。


「ッ……!」


 大剣の欠点は、その余りある重量による硬直だ。振り抜いた後の隙は、熟練の戦士でも埋めるのが難しい。しかし、ジークは強引に姿勢を戻すと、頭上から叩きつけるような一撃を見舞った。


 ぐしゃり、という嫌な音が響き、ゾンビの頭蓋が床にめり込む。もはや動くものは、右側でスケルトンに囲まれ、なぶり殺しにされている残骸だけだった。やがて静寂が戻る。


【スキル『死霊術の芽』発動】

【召喚上限:3】

【現在の召喚数:3/3】


 倒れたゾンビから黒い霧が立ち上り、二体が再び立ち上がろうとした。しかし、上限に達しているシステムメッセージがそれを拒む。ジークは目の前に浮かび上がった青いウィンドウを見つめた。


【6層クリア報酬を選択してください】

 ①『筋力強化(小)』:近接攻撃力が微上昇。重い武器の扱いが僅かに安定する。

 ②『骨の硬化』:召喚体の防御力が上昇。骨の密度が増し、損壊しにくくなる。

 ③『魂の吸収(弱)』:敵を倒すたびに微量のMPを回復する。継戦能力の向上。


 ジークは迷うことなく②を選んだ。

 自分一人の火力よりも、盾となるスケルトンたちが長持ちすることの方が、この深層では重要だと理解していたからだ。


 次の通路へ進むと、壁の窪みに古びた木箱が鎮座していた。鉄の留め金は赤錆び、今にも崩れそうだ。


「罠……いや宝箱か」


 蓋を開けると、そこには不気味な鈍色に光る指輪が転がっていた。

【アーティファクト取得:『骨喰いの指輪』】

【効果:召喚体が敵を倒した際、そのHPの一部を術者に還元する】


 ジークは指輪を左手の人差し指にはめた。金属の冷たさが指に馴染み、ステータス欄に小さなアイコンが追加される。地味だが確実に生存率を上げてくれる、悪くない効果だ。


 ◇ ◇ ◇


 第7層は狭い通路の先に、装甲の厚い「錆びた騎士」が三体、まるで番兵のように立ち並んでいた。ジークは正面から大剣を振るが、騎士の盾に弾かれる。金属同士が激しくぶつかり合い、衝撃で腕が痺れた。


「硬いな……正面じゃ無理か」


 スケルトンたちが側面へ回り込もうとするが、通路が狭く十分なスペースがない。先頭の騎士が剣を横薙ぎに振り、スケルトン一体の胴を真っ二つに切り裂いた。骨が砕け散り、床に転がっていく。


【召喚数:2/3】


 ジークはわざと背を見せ、広めの分岐点まで後退した。騎士たちは鈍い足音を立てて追ってくる。

 狙い通りだ。広い場所に出れば、数の利を活かせる。

 先頭の騎士が大きく剣を振りかぶった瞬間、ジークはサイドステップでその懐に潜り込み、大剣の腹で騎士の盾を弾き上げた。


「今だ!」

 側面に回っていた二体のスケルトンが、騎士の鎧の継ぎ目に錆びた剣を突き立てる。ジークもまた、がら空きになった胴体へ大剣を叩き込んだ。鎧を歪ませ、中の腐肉を潰す感触。

 一体、また一体と、騎士たちは沈黙していった。しかし、最後の三体目が放った刺突がジークの肩を深く貫いた。


【HP:54/100】


「っ、この……!」

 返す刃で騎士の首を跳ね飛ばし、ジークは荒い息を吐いた。肩から流れる鮮血が、黒いローブを濡らしていく。だが、『骨喰いの指輪』の輝きとともに、わずかに痛みが引くのを感じた。


【7層クリア報酬を選択してください】

 ①『死体操作(中級):蘇生確率がさらに上昇し、召喚体の動作が滑らかになる』

 ②『耐久強化(小):最大HPが微上昇』

 ③『骨の刃:召喚体の攻撃に追加ダメージが付与される』


 ジークは①を選んだ。蘇生確率が上がれば上がるほど、このビルドは安定する。


 ◇ ◇ ◇


 第8層に足を踏み入れた瞬間、遠くから炎が飛んできた。


「ッ!」


 ジークは咄嗟に石柱の陰へ飛び込み、視界の先に五体の「呪われた術士」が杖を構えているのを確認した。術士たちは距離を保ち、次々と火球を生成している。


 スケルトンたちを突撃させるが、術士たちは巧みに距離を取り攻撃を続ける。火球がスケルトンに命中し、骨が焼け焦げて崩れていった。高熱で骨の表面が黒く変色し、やがて砕け散る。


【召喚数:1/3】


 このままでは全滅する。ジークは決断した。


 石柱から飛び出し、一直線に術士へ向かって走り火球が肩を掠め、肌が焼ける熱さが走る。次の火球が脇腹に直撃し、激しい痛みが全身を駆け抜いた。革鎧が焦げ、焼けた肉の臭いが鼻を突く。


【HP:35/100】


 視界が揺らぎ足がもつれそうになる。それでも止まれば終わりだ。ジークは歯を食いしばって最も近い術士へ大剣を叩き込んだ。大剣が術士の胴に深く食い込み、そのまま壁まで吹き飛ばす。術士は壁に激突してゆっくりと崩れ落ちた。残るスケルトン一体が別の術士を襲い、ジークは二体目の術士めがけて走った。


 火球が顔の横をかすめ、耳が焼けるような熱さを感じる。ジークは構わず大剣を振り下ろし、術士の頭部を叩き潰した。杖が手から滑り落ち、床に転がる。三体目、四体目、五体目と順番に倒していき、最後の術士を倒したとき、ジークは膝をついて荒い息を吐いた。


【HP:18/100】


 ボロボロだ。骨喰いの指輪のおかげで少しずつHPが回復しているが、焼け石に水に近い。全身が焼けるように痛み、呼吸するたびに肺が軋む。


【8層クリア報酬を選択してください】

 ①『魂吸収(中):敵を倒すたびにHPとMPを回復する』

 ②『大剣の技巧:大剣使用時の攻撃速度が上昇』

 ③『死霊の武装・兜(永続):専用装備【骨の兜】を追加する』


 ジークは迷わず③を選んだ。防具が増えれば被ダメージを減らせる。生存率が格段に上がるはずだ。


【専用装備【骨の兜】取得】


 黒ずんだ骨でできた兜が瞬時にジークの頭部へ装着された。視界は遮られないが、確実に防御力が増した感覚がある。重量はほとんど感じず、むしろ頭を守られているという安心感の方が強い。


 ◇ ◇ ◇


 第9層のボスは、巨大な斧を振るう「腐肉の戦士長」だった。身長は優に三メートルを超え、全身が腐りかけた筋肉で覆われている。ジークはスケルトンたちを展開し、慎重に距離を図った。戦士長の斧が振り下ろされると、石床に深いヒビが入る。その一撃を受けたスケルトン一体が粉々に砕け散った。


【召喚数:2/3】


 だが数秒後、倒されたスケルトンが黒い霧に包まれて再び立ち上がる。五層で取得した『骨の癒し』の効果だ。完全に破壊されても、一定時間で復活する。


 ジークは戦術を変えた。スケルトンたちを囮にして戦士長の注意を引き、自分は背後へ回り込んで大剣を叩き込む。刃が腐肉に食い込み、黒い血が飛び散る。戦士長が怒りの咆哮を上げ、斧を横薙ぎに振るう。ジークは転がるように回避して距離を取り、また隙を見て背後へ回り込む。何度も繰り返し、スケルトンが倒されては復活し、攻撃を続けた。やがて戦士長の動きは鈍り、腐肉が削れていく。


 ついに戦士長が膝をつき、大きく息を吐いた。ジークは最後の一撃を振り下ろす。大剣が戦士長の首元に深く刺さり、巨体は完全に崩れ落ち、光の粒子となって消えていった。


【9層クリア報酬を選択してください】

 ①『筋力強化(中):近接攻撃力が上昇』

 ②『召喚体強化:召喚体の全能力が上昇』

 ③『死の刻印:攻撃した敵に継続ダメージを付与する』


 ジークは②を選んだ。召喚体が強くなれば、さらに戦闘が安定する。


 ◇ ◇ ◇


 第10層はこれまでで最も広いフロアだった。中央には巨大な祭壇が鎮座し、周囲を十体近いゾンビと騎士が取り囲んでいる。ジークは慎重に接近し、スケルトンたちに指示を出した。


「一体ずつ引き離せ」


 スケルトンが一体のゾンビに攻撃を仕掛け、そのまま後退する。ゾンビが釣られて追いかけてきたところで、ジークが大剣を振り下ろした。刃はゾンビの肩口から胴まで深く切り裂き、そのまま倒れこませる。一体ずつ確実に仕留めていったが、五体目を倒したとき、残りの敵が一斉に反応した。騎士三体とゾンビ五体が同時に襲いかかってくる。


「チッ、囲まれたか!」

 四方八方から飛来する剣と爪。

 ジークは『骨の兜』の恩恵で致命傷を避けながら、大剣を狂ったように振り回した。

「邪魔だ、どけ!」


【HP:42/100】


 騎士の剣が肩に食い込み、ゾンビの爪が脇腹を裂く。痛みで視界が霞むが、ジークは止まらない。大剣を両手で握り、全力の横薙ぎで騎士二体とゾンビ一体をまとめて吹き飛ばし、壁に叩きつけた。そのまま床に崩れ落ち、動かなくなる。残る敵めがけて突進し、一体ずつ確実に仕留めていく。最後のゾンビを倒したとき、ジークは完全に力尽き、膝をついた。


【HP:21/100】


【10層クリア報酬を選択してください】

 ①『召喚上限+1:召喚可能数が4体に増加』

 ②『骨の再生強化:召喚体のHP自動回復速度が大幅に上昇』

 ③『死霊の武装・盾(永続):左手に専用装備【朽ちた円盾】を追加する』


 ジークは少し考え、①を選ぶ数は力だ。四体になれば敵の処理速度は格段に上がる。


【召喚上限:4】


 その瞬間、視界の端に別のシステムメッセージが流れた。


【警告:第11層以降はPvP区域です。他プレイヤーとの戦闘が発生する可能性があります】


「……来たか」


 ジークは大剣を強く握り直し、ゆっくりと階段を下りていった。

読んでいただきありがとうございます。

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