~第6話~ 初めての顔合わせ
早朝、フードを被った人間が死の森と化した例の場所を見渡せる大木にいた。
(師匠に言われた異変が見られる所の8個目、、だけどこれもう、大災害の前兆じゃん。多分すぐに報告したほうがいいよね、
緊急用の連絡魔法を使うか。)
──パルテアの裏の広場。
「氷も知っているだろうが、学園トーナメントが1ヶ月後に開催されることになった。 だが、あえて生徒の情報は渡さないでおく。そう言う実践的な練習も必要だろう。」
「確かにそうですね!」
「だからまぁ、魔法とかスキルらへんはいいとして、基礎的な体術とか、自分の能力を理解したりする訓練を行う事にする」
「自分の能力ですか、、
使い方がよくわからないんですよね」
「能力名はなんだ?大体こう言うのは能力名からわかるというのが定石だからな」
「えーと、流力感知?ですね」
「流力感知だから、多分力を……。だめだなこんな事言ったら理論がどうのこうのってネオジムに怒られてしまう、自分で考えてみなさい。能力の特徴として、ある一定のルールを満たせばあとは使用者の想像次第なんだ」
「そうなんですか?ん〜でも感知って事はわかるって事ですよね、流力、、、?流れる力がわかるってことですかね?」
「そうかもしれないし、違うかもしれない。
まぁ今考えずとも戦闘中なにか一手欠ける時にそれを埋めるように考えるのもありだ。」
「なるほど、そう言うやり方もあるんですね」
「あぁ、まぁ一度こうだ!と思ってしまったらそこから変えるのはなかなか難しくなってしまうからな」
その瞬間パルテアの脳内に最悪の事態を告げる報告が入った。
「……!」
「どうかしたんですか?」
「最悪だ。厄災が起き始めてしまった」
「え?厄災?」
「あぁ、ネオジムに偵察を任せていたんだが、、、級の話はこの前教えただろう?
あれは普通クラスでF〜Sなんだ。だが、こういった異常事態のクラス分けも存在する。
厄災クラスは普通クラスのS級と同等の強さでFになる。そういう規格外クラスだ。」
「え、そんなんが復活してしまったんですか?」
「あぁ、しかも今回の厄災は前回と同じであれば、E級厄災だろうな。
東の森付近で厄災牛と呼ばれる鬼牛の厄災個体が発見された。」
「鬼牛って、もしかして蜘蛛みたいな感じのやつですか?」
「おぉ、よく知っているな、あいつらは妖怪と言われる奴らだ。生まれる条件が複雑だから知っている者は少ないんだが、」
「ま、まぁ妖怪って前の世界の都市伝説?みたいなやつで、有名だったんですよ。
因みに条件って?」
「あぁ、生命体を数万の単位でたくさん殺した魔物が、死んだあと妖力が満ちた場所か、怨念が溢れかえった場所に数日いることで怨霊となる。
それからその怨霊の魂に近い伝承とか伝説の形を乗っ取って妖怪となる。
それで厄災個体になる妖怪ってのは、妖力か怨念が不十分だった不完全怨霊がまわりの不完全怨霊を喰らって妖怪になるんだ。」
「そんな不完全怨霊がたくさん産まれる場所なんてあるんですか?」
「あぁ、12箇所な、それをネオジムに見に行かせてたんだが、まさか本当にそんな事になっているとはな。
妖怪共の厄介な所は普通の武器では攻撃が加えられない上に妖力以外の力の流れを乱してくるんだ。
氷みたいに魔力操作に長けている者であれば一応使うことはできる」
「そうなんですか、、、因みに厄災が起こるとどうなるんですか?」
「かなりまずいな、最悪ここが滅ぶ。
一回目の厄災の時は文献によると、妖力使いの里と魔王軍が手を組んでなんとか凌いだそうだ。だが、その後人間が私利私欲のため魔王を倒してしまった。それで二回目は一国が滅んだらしい。そして、今回が三回目だ。」
「どうするんですか?」
「、、、魔王に頼るしか無いだろうな」
「え?でも魔王は死んだんじゃ?」
「確かに魔王は死んだ。だが能力としての魔王はどこかの誰かが持っている可能性もある。
ただ、能力が魔王だったら虐げられていてもおかしくはない。そうなると厄介だ、、、」
「他の強い人はどうなんですか?」
「いや、魔王であることが重要なんだ。魔王という能力は他者の力を奪う。妖怪は力そのものが生命力だから天敵なんだ。」
「そうなんですね、、、」
「ただ、目星はついている。
それが私がここの学園長になった理由でもある。
四年前くらいにここで化物だの、怪物だの、恐れられている少女がいるって聞いてな。
その子が今年丁度学園に入学してくる可能性が高い。もしかしたら入園式にも居たかもしれんな。」
「ん〜でもそんなに見るからに魔王って子は居なかったような気がしたんですが、、」
「まぁ見てわかるくらい魔王だったら幼少期にとっくに殺されているからな、」
「そんな物騒な、、、」
「まぁ、人間界では魔王は完全なる悪だからな。
まぁそれで、氷には迷惑をかけてしまうが、トーナメントへ向けての修行と平行して学園内での魔王の少女の捜索をお願いしたい。」
「任せて下さい!!
パルテアさんはどうするんですか?」
「私は知人に呼びかけて厄災への対策をしてもらう。
あとそうだな、どうやらネオジムは8個目でそこを見たらしいから、残り4個見に行って貰ったら帰ってきてもらおう」
「ネオジムちゃんこっち帰って来るんですか!」
「あぁ、だが一箇所一箇所の間隔が遠いからな、丁度トーナメントが終わった頃か?
もしかすると再会を喜ぶ暇もなく厄災に対応する事になるかもしれん、」
「大丈夫ですよ、終わったら喜べばいいですから」
「あぁ、そうだな。
…そろそろ学園の時間だな。最初は大事だぞ!気合い入れていけよ」
「わかりました!パルテアさんも遅れないようにしてくださいね!」
にっこり満点の笑顔で言う。
「うっ、まさか氷にまでイジられるとは」
「え?あ、いやそんなつもりじゃなくて!」
「大丈夫だ、それより準備をして来なさい。
私は朝の会議があるからもう行く。」
「はい!いってらっしゃい!」
「あぁ、行ってくる」
そうしてパルテアは一足早く学園へ向かい、氷は屋敷に戻った。
準備をするともうそろそろ良い時間だったので氷は少し早めに登校する。
(そういえば私Sクラスだったんだよね…
馴染めると良いなぁ…、)
氷は学園の案内板を見て、Sクラスに向かう。そして扉の前まで来た。
(よし、こう言うのは最初が肝心だ、、、。
元気良く行こう!)
「おはようございま…」
「ファイアボール!!!」
「うわぁ!」
氷は間一髪の所でファイアボールをかわす。そして氷に魔法を放ったドアホが口を開く。
「お前平民なんだってな?平民のクセしてなんでSクラスなんだよ!!なんかズルしたんだろ!」
(うわぁ〜貴族といえばの平民差別だぁ〜〜
始めて差別されたけど、これ意外とムカつくなぁ)
「なんか言ってみろや!!平民!!」
氷が静かに苛立ちを覚えていると
「朝からうるさい。黙れ。」
「んだ?てめぇ」
「別に私に魔法撃っても良いけど、撃ったら殺す。」
「きょ、今日のところは許してやるよ!」
氷は助けてくれた?少女の近くに行く。
「助けてくれてありがとう!」
「馴れ馴れしい。あとうるさかっただけだから。」
どうやら彼女は口がちょっと、いや相当?悪いようだ。
「名前なんていうの?」
「なんでそんな事知りたいの?どうせ意味ない。」
氷には彼女がどこか寂しげに見えた。
「意味なくなんてない!」
「わかった。じゃあ私は教えたくない。」
なかなか手強い相手であった。
氷も嫌だと言っているのに無理には聞けず、ごめんね、と一言言って前黒板に貼られた席表を確認し、自分の席に座った。
(はぁ、そういえばネオジムちゃんが親しみやすくて忘れてたけど、私友達つくるの苦手なんだった、、、
失敗したかなぁ〜。最初が肝心なのにぃ〜)
氷がそんな事を考えていると、
「はい皆、席についてーホームルームを始めますよ。」
流石にいきなり魔法をぶっ放す奴が居るようなクラスでも先生の指示には従うようだ。
「はい、おはようございます。
では軽く自己紹介でもさせていただきます。
私はティマ・ナルリスグレイという。
冒険者ランクは一応Sだから安心してください。
早速だが、トーナメントが開催されることになったというのは皆知っているでしょうけど、期間は1ヶ月後です。
しっかりと準備するように。」
「へっ俺なら準備しなくても平気ですよ!
特にそこの平民相手ならな!」
先程のバカが吠えている。
その瞬間教室の雰囲気が少し重たくなった。
「戦場ではそうやって油断したやつから死んでいきます。あなたも死にたくなければ考えを改めなさい。」
そうティマは一喝する。だが、ティマの脳内では全く別の事が考えられていた。
(あれって学園長の弟子の子ですよね!?
そんなこと言ってる奴がクラスにいるとバレレば私が学園長に怒られてしまう!!なんとしてでも考え直させないと、、、)
「ちっ、偉そうに言いやがって、
いいぜ!トーナメントで俺が優勝したらお前は俺に土下座しろよ!
逆に負けたら土下座してやるよ!」
「はぁ、まぁ元気なのはいいですが、あまりはしゃぎすぎないように。」
ティマはうまいことバカな宣言を聞き流したが、そのバカはそれが一層腹立たしかった。
一方氷はと言うと…
(パルテアさん、、果たして私はこの先生も怖い、同級生も怖いこのクラスで上手くやっていけるでしょうか、、、)
「そうですね、時間があまりましたので、自己紹介していってもらいましょうか」
というわけで廊下側の前の席から自己紹介をして行った。氷は廊下側の一番後の席だった為、意外と順番は早く回ってきた。
「えー、氷です!えー、魔法が好きです!」
(ミスったぁぁぁぁぁぁあ!絶対もっといい自己紹介あったじゃん!!もう!!)
氷が自分の自己紹介の仕方に文句を言っているといつの間にか23人ほど終わっていて、窓際の一番後の席の助けてくれた少女の番がやってきた。
「名前を教えても意味がない。好きなものは無い。」
それだけ言って彼女は席に座ってしまった。
ティマはというとこういう子いるのよねと言わんばかりの顔で少しため息をついた。
「じゃあ、授業で使う魔導書と剣術本を配っていくから前から後に回していってください。」
教科書が全員にわたったことを確認した後話し始める。
「それは学園側からのプレゼントです。
二冊目からはキッチリお金を取るので、無くさないようにしてくださいね。
あとそうね、この学園には何処に何があるのか解説します。」
そういうと体育館や保健室、指導施設など、重要な場所を端的に解説していった。
「こんなもんですかね。まぁ今日は授業はありませんので、学園の中を見て回りたいという人以外はもう帰っても良いですよ。」
学園の時間的には短いが、実際の時間的にはもうすでに朝ごはんを食べてから4時間ほど経っていた。
因みに氷はと言うと、先生の話をちゃんと聞きつつもまだへこたれていた。
(パルテアさん助けてぇぇぇ…)




