~第3話~ 師匠と試験
氷とネオジムは手短に朝の挨拶を交わし、荷物の最終確認を始める。
数十分後、荷物の確認が終わり、馬車が来るまで二人は少し休憩をしていた。
「あ、そうだ、もし向こうで私の事を聞かれたりしたらネオジムじゃなくてガムネッドって言ってね」
「うん、わかったけど、ガムネッドって?」
「私フルネームだとガムネッド・ネオジムなんだけど、ネオジムはビビッと来た人にしか呼ばせてないの」
「そうなんだ!初めてフルネーム聞いたかも」
「あ〜確かに、初めて言ったかも?
ってかもうそろそろ馬車が来るから外でとこうか」
二人は一歩一歩を噛み締めて外まで歩く。
外に出て少しして
なかなか立派な馬車がやってきた。
「あ、そうだ!これ渡しとくね」
「これは?」
「身分保証書だよ!中央は警備が厳しくて
身分を証明できる物がないと入れないし、
あっても3時間くらい待たされちゃうんだけど
ま、私が身分を保証するって言ったら5分くらいで通れるはずだよ!」
「そうなんだ、ありがとう!
…やっぱり一緒には来れないんだよね」
「うん、
一緒に行きたいけどこっちでまだ仕事が残っててさ
大丈夫!いつか絶対会えるよ!」
「そうだね、」
「それより、氷ちゃん
絶対受かってよ!応援してるから!」
「うん、!絶対受かるよ!」
二人はハグをする。
それで氷は馬車に乗り込む。
馬車は別れを惜しむ暇も与えず、颯爽と走り去ってしまった。
「……さてと、私も氷ちゃんに会えるように仕事終わらせようかな」
ガタガタガタガタ
馬はその自慢の足で舗装がされていない荒れた地面をしっかりと踏み抜き、車体を引っ張っていく。
(……ここから一週間くらいかかるのか〜
暇だなぁ、、、
そうだ!ネオジムちゃんから貰った術式大全でも読んで勉強しておこうかな!
酔いには強いほうだし大丈夫でしょ!)
5日後。
中央の一部では混乱が生じていた。
「ね、ねぇ昨日から学園長機嫌悪くないですか?」
「やっぱり?あの人なにかあるとすぐ出るからね」
「ん?二人とも何話してんの?」
「いやぁ学園長が昨日から昨日悪いよねって話」
「あ〜俺も思ったわ
ってか機嫌悪いのは良いんだけど、
仕事が手につかなくなってその分が
俺達教師に回ってくるのやめてほしいんだよね」
「たしかにそれは思う」「ですよね〜」
ドンッッッ!!!!
職員室の扉が勢いよく開く。
職員室にいた全員が驚いたが、
学園長の話をしていた3人はより驚いた。
「おはようございます。」
「お、おはようございます学園長、」
あはは、と愛想笑いをする3人。
しかし学園長はその3人に構う暇が無いほどに
考え込んでいた。
(どうすればいいんだ!!!
久しぶりに弟子から手紙が届いたかと思ったら、一人、入園試験を受けさせろだと!!!
しかも明日馬車が来るから8日後くらいに
着くだと、、、?
この手紙を送ったのは6日前だろうが!
速達便でも5日くらいかかることはわかっているんだからそれを見越して少し出発を遅らせるとかもっと速めに送るとかしろよ!!!
大体他の奴らにどう説明すればいいんだ!
特にムカール家が黙ってないだろうな
あいつは昔からそうだ!!!
人の立場なんて全く考えずに
急にフラっと現れては新しいダンジョンの場所を教えろだの、強い武器を見つけろだの
言いたいことばっか言って……)
その時先程の3人は少し遠くの自分の席で頭を抱えている学園長に聞こえないように最善を尽くしていた。
「ねぇねぇ、やっぱり機嫌わるいよね?」
「だよね」「だよな」
「また仕事増えるのかなぁ」
「多分ね」
仕事が増えることはほぼ確定だと考え、
そぉっとため息をつく3人であった。
一方その頃。
(う〜んまだあと2日あるのにこの本に書いてある火、水、土魔法、全部覚えちゃったなぁ
これもスキルの成長補正ってやつが関係してるのかな?、そうだ!おじさん他に魔法知ってないかな?)
氷は5日目にして御者のおじさんと喋れるほどに仲良くなっていた。
「ねぇ、おじさん!なんか魔法しってる?」
「魔法、ですか、そうですね、
仕事柄あまり本を読む暇がないものですからそこまでは知りませんが、、、
探知魔法はどうでしょう?
皆様を安全に運ぶために探知には長けているんですよ」
「探知魔法?いいね!それ教えてくれない?」
「ではお教えしましょう
まず探知魔法は魔法の中でも特殊でして、
使い続けると、スキルとして取得できるんですよ。一説には人の周囲を感じる力が魔法を使うことによって研ぎ澄まされるとか、
話がそれてしまいましたね、
探知魔法は風魔法で、詠唱はサーチです。
使う人の魔力操作能力と変換率に効果が大きく左右されるそうですよ」
「へぇ〜そうなんだ!やってみようかな!」
「ははは、普通はやってみようかなでできるものではないのですが、氷様ならできてしまいそうですね」
「まぁね!」
そんな事を話しながら馬をせっせと走らせる
残り2日間、氷は探知魔法を発動し続けていた。
通常Lv.3の常人であれば、そんな事をすれば
1日も持たずに魔力が枯渇してしまう。
だが、氷の精密な魔力操作と高変換効率、そして半径2mという超小規模の発動範囲がそれを可能とさせていた。
普通であれば2日弱で魔法を完璧にすることなどできるはずがない。だが、氷にはとってこの2日弱は期間としての2日弱ではない。40時間という意味での2日弱である。
ただ、半径2mのみの展開であったために
真の探知スキルを手に入れる事はできなかった。
だが、実際に魔法は発動していたし、時間も十分。スキル入手の条件は達成している。
代わりに特異なスキルが手に入った。
そんなことはつゆ知らず氷は鍛錬を続けるのであった。
ゴトゴトゴト、、、
ガチャ
「氷様着きましたよ」
氷は大きく背伸びをする
「ん〜〜、おじさんありがとう〜」
「いえいえお礼には及びません
私は次の仕事が予約されておりますので、
少し名残惜しいですが、これで失礼します。」
「うん!じゃあねー!」
氷は中央都市と平原を分けるための堀にかけられた巨大な橋の上で馬車から降りた。
本当にこんなに大きい必要があるのかというほど大きい門の前まで来た。
「すいませーんこの中央都市に入りたいんですけど!」
すると巨大な門の前につっ立っていた兵士がダルそうにやってきた。
「あ〜、身分を証明できるものか冒険者カードをお持ちですかぁー」
「は、はい」
(な、何この人、、、さては仕事サボってたな)
「は〜い確認しまーす少々お待ちくださーい
あーめんどくせ」
(いやいや普通に聞こえてるんですが、
なんなのあの兵士、教育がなってないんじゃないの)
兵士がちんたらと事務所らしき建物の中に入っていった。
数分して、急にドアが勢いよく開いたとおもうと先程の兵士が生まれ変わったかのように血相を変えて走ってきた。
「す、すみません!
ガムネッド様のご友人でしたか!
あなたの身分は保証されました!どうぞお入りください!」
「あ はい」
(急に態度変わるじゃんこの人)
氷は身分で人を舐め腐ったり崇めたりする姿に苛立ちを覚えたが、初めての大規模都市ということで気分が高揚しており許してやる事にした。
長い門の影をくぐり中央都市内部に入る。
数秒眩しさで満足に見られなかったが、
段々と慣れてきてその壮大な都市が目に入る
「わぁ!!!すっごいデッカイ!」
氷はなにか詩的な事を言おうかと考えたが、余りの雄大さに語彙力を失ってしまった。
(ん〜〜、いろいろ見て回りたいけど、
まずはネオジムちゃんの師匠の所にいくか〜
えっと確か門に入って道なりに直進、6つ目の右側の通路に入ってすぐの階段を上がって、
そうすると見えてくる大きい教会の方向に進んで、大通りにでるからそこを左に真っ直ぐ行って右側にある黒色の屋敷、、、)
「これ、、、かな?」
コンコンコン
「すいませーん!!誰かいますかー?」
氷の呼びかけに答えるように扉が開いた。
ガチャ!
「君が、あのバカ弟子が紹介していた、、、
あの!バカ弟子が!紹介していた子か?」
どうやら大事なことなので2回言ったらしい。
「え、えっと、は、はい、
氷っていいますよろしくお願いします」
「はぁ、、なるほどな。
まぁ、ガムネッドが言っていたことは嘘では無いようだな。
とりあえず入りなさい。話はそれからだ。」
「お、おじゃましまーす」
これからこの見るからに疲弊した女性に何をされるのかと不安になりながらも屋敷に入っていく
応接間に案内された氷。
その女性に促され席に対面して座る。
「あー氷とか言ったか?
その水晶にふれてみろ」
「これはなんですか?」
「これは信仰国アリストディスクリアの三大国宝の1つであり、中央剣魔上級学園が直々に保存、管理を任されている全てを見透かす水晶だ。
とりあえず触れてみろ。」
「わ、わかりました。」
突然水晶が光出す。
「解析、鑑定の結果が出ました。
情報公開対象を選択してください。」
「私のみでいい。」
「了解いたしました。
情報公開対象者に頭に直接情報を流します。」
「あぁ、頼んだ
、、、
なるほど。貴様、何者だ」
急に雰囲気が変わる。
先程までただの疲弊した女性に見えたが、
今は英雄にも魔王にも見える。
その極大の存在が全身全霊を込めて圧をかけてきている。
もはや氷に思考の余地は残されていなかった。
「さっきいったよなぁ、この水晶は全てを見透かす。
ステータスは平凡だ、
スキルは確かに強い、だがこれくらいならそう珍しくはない。
能力は個人特有のものだから珍しいもクソも無いが、、、
なぜ危険度が80%を超える。」
「そ、そんなの…」
「水晶は絶対だ。本当も嘘もない。
質問に答えろ。氷。いや
異世界からきた外来種、といったほうが答えやすいか?」
「…!」
「図星のようだな。
じゃあ次。お前は何が目的でこちらの世界に来た?」
「………い」
「ん?」
「分からないよ!私だって急にこっちに来てネオジムと出会ってネオジムの紹介でここまで来ただけだし!
向こうの世界で私が死んだかどうかも分からない、、、
何も分からないよ、、、」
「………、
氷。合格だ。」
急にガハハと笑う女性に驚きを隠せない
「え、?」
「試すような真似して悪かったな、
入園試験をやるのは面倒くさかったから確認と同時に行わせてもらった。
確かに危険度は80%を超えているし、現に異世界からやってきたイレギュラーだ。
だがネオジムと言う名前をしっているなら
あの子にも認められた、そうだろう?
それに何より私の勘が君は悪ではないと言っているし、
私のあの覇気にさらされていながらマトモに反論できるとはな!
これでうるさい連中も黙るだろう!」
未だに動悸が止まらない氷は余りの温度差に思考が固まってしまった。
「しまったな、少し怖がらさせすぎたか、、、」
1時間ほど経った頃ようやく氷は地上に戻ってきた
「は、私はなにを!?」
氷の目の前には頭が地面にうまるほど土下座している女性が見えた。
「本当にすまなかった!!!」
「え、急にどうしたんですか!?」
「いや、本当に無事でよかった!
もしあのまま意識が戻らなかったら…
きっとネオジムに存在ごと抹消されていたよ、、、」
「え、えぇ、、、」
「と、とにかくだ!氷!
いろいろな説明は明日するから!
とりあえず今日はゆっっくり休んでくれ!
部屋はこの部屋をでて右側の所を使ってくれて構わない!」
氷は部屋にたどり着くと考える暇もなくベッドに横たわり気絶に近い形で就寝した。




