~第2話~ 神刀と心友
「中央剣魔上級学園って興味ある?」
氷はめちゃくちゃ異世界っぽい学園の名前をネオジムから聞き、興味と期待がわかりやすく顔に出ていた。
「その調子じゃ、気合は十分って感じかな?」
「もちろん!そんなワクワクする所興味あるに決まってんじゃん!」
「そっか!それは良かった!
因みにこっから速くても一週間くらいかかるからいろいろ用意してきてね!」
「わかった!」
「あ、それと、そんなただの私服じゃ流石に門前払いだろうから防具と武器も買ってあげよう!」
「え?買って上げるって、
武器とか防具って結構高いんじゃないの?」
「いーのいーの
その代わりかなり無理言って入園試験を受けさせるから、絶対結果だしてね!」
氷はとても申し訳なく思ったがネオジムのいつもの圧に押され、渋々了承した。
「無理を言うってどういうこと?」
「あ〜実はさもう入園試験終わってるんだよね、んで今未来の生徒たちは春休み満喫中なんだけど、」
「ちょ、ちょっと待って、流石にそれはもう無理なんじゃない?」
「大丈夫!そこの学園長は私の師匠だし、
あの人なら氷ちゃんを無理くり入園させる重要性を理解できるだろうし!」
「え、えぇ、、、本当に大丈夫なの、、、」
「まぁ、多分大丈夫!」
ネオジムは小声で言う
「面倒な仕事押し付けられるかもしれないケド、、、」
「え?なんて?」
「と、とりあえず!防具と武器を見に行くよ!」
半ば強引に手を引かれ、鍛冶屋に向かうのだった。
鍛冶屋はこの何でも屋から大体2kmほど離れた場所にある。
行く道中に中央剣魔上級学園はどのような所なのか説明を受けながら歩いていたため、
体感的な時間だと5分で鍛冶屋の前についた。
「おやっさん!!ネオジムちゃんが来てやったぞ〜」
「おい、ネオジム!何度も言ってるが、俺はまだ28だ!お兄さんと呼べ」
「ドワーフ感覚で話さないでよ
人間換算だと84のジジイでしょ?」
「それはそうだが、そうじゃなくてだな、、、」
氷が話に入れないでいることに
そのドワーフが気づいた。
「おいネオジム、彼女の件でなんか用があって来たんだろ」
そのドワーフは目線で合図をする
ネオジムはしまったと言う様子で氷の方を向いた。
「ごめんね!氷ちゃん、
彼がドワーフのハゼ、口は悪いけど腕は確かだから安心してね!」
「一言余計だ!全く、」
ハゼは呆れた様子でため息をつく。
「俺がウェルナム・ハゼ、
ここらへんではそこそこ有名な鍛冶職人だ」
「あ、よろしくお願いします!
私は氷って言います」
「よろしくな!嬢ちゃん!
それで何を買いに来たんだ」
「防具と武器を買いに来たんですけど、」
「あ、それなんだけどね!
氷ちゃんには刀が良いと思うの!」
「え?魔法使いなのに杖じゃないの?」
「まぁ普通は杖なんだけどね!
氷ちゃんは魔力操作も魔力変換効率も優れてるし、
ただのファイアであれだけの威力がでるなら正直要らないんだよね〜」
「へぇ、ネオジムがそこまで言うなんて、
嬢ちゃんかなり凄い奴なんだな
確かに中級程度の杖じゃ特殊効果もねぇし、
素で魔力操作も上手くできるんならあんまり意味はねぇかもな」
「そうなんですね
でもなんで刀なんですか?」
「えっとね〜刀ってのは作り方の都合上、妖力と馴染みやすいんだよね、
んでたまーにたくさんの妖力蓄えた刀が
特殊効果を発揮する事があるの!
それを妖刀っていうんだけど…」
ハゼが焦ったようにネオジムの話を遮るため大きな声を上げた。
「おい!!まさかあれを嬢ちゃんに使わせるつもりじゃねぇよな!」
ネオジムはごく自然にまるで当たり前のことを言うように落ち着いて応えた。
「そのまさかだよ、ってかうるさい」
なにが何だかわからない氷はポカンとしていた。
「妖刀ってなんですか?」
ハゼは質問に答えず沈黙を貫いていた。
数秒気まずい雰囲気が流れたあとついにネオジムが限界を迎え、口を開いた。
「ハゼ、教えて上げて」
また、数秒黙っていたが、
ネオジムが睨んでいる事に気づいたハゼは話さざるを得なかった。
「、、、
あー!もう!話せばいいんだろ!
うちの裏の倉庫に妖刀の中でもとびきり変わった刀がある。
あれは昔からあったものだけど、刃こぼれどころか、錆や汚れすらついていない。
多分自己修復系のスキルかなんかがついてる」
「多分ってどういう事ですか?」
「鑑定しても見れないんだ、
俺の鑑定スキルは上級だし、能力も鑑定スキルを上げるやつだから基本すべての武器、防具はステータスが見れる。
…それでも見れないなんて、1つしかない。」
氷はこの場の空気が凍りつくような感覚に襲われる。
ハゼはゆっくり時間をかけて重々しく口を開く。
「あれはもう人間が作ったものじゃない。
たくさんの人間の魂を喰らってできた
呪いの装備だ」
「呪いの装備、ですか?」
「あぁ、
呪いの装備は意志をもつ半生命体みたいなものだ、刀自身が認めた装備者でなければ魂に干渉して人を殺す。
今は封印してある、というか抵抗する気配が無いから普通の武器みたいになっているが、常人であれば今の状況でも近くに来ただけで寒気がする。
だから嬢ちゃんには持たせたくないんだ。」
「悪いね、おやっさん。
でも氷ちゃんをそこら辺の奴らと同じに見てもらっては困るね。
彼女ならあの妖刀を従えさせられるよ」
「なんの根拠があって!」
ハゼが言おうとしたことを遮り、ネオジムが言う。
「魔力操作能力強化(S)、そして氷ちゃんのもとの才能と成長も加えて考えればB+級は余裕で超えると思うよ。」
ハゼは考えていた。
いつもは鬱陶しい彼女だが、
実力は確かだし、仲がいいからと言って、
過剰評価するような奴でも無いことは彼自身がよく知っていた。
数分が経ち
ようやく結論を出した。
というより結論は出ていた、勇気が無かったのだ。
「、、、
わかった。試してみる価値はある。
だが、危険だと感じたらやめろよ。」
ネオジムは氷が不安がっていることを察した。
「大丈夫!大丈夫!氷ちゃんなら余裕だよ!」
「う、うん」
(本当にそうなのかな、、、
妖力ってことは霧のイメージ、
その霧が人に危害を加えるのだとしたら、、、
それを抑える事ができれば、、、)
「それじゃあ嬢ちゃんとネオジムついてきてくれ、そこまで案内する」
一度鍛冶屋を出て、裏に回る。
倉庫との距離が3mほどになった時であろうか、そこから一歩、また一歩踏み出す度に空気がズンと重くなっていく。
ついに扉を開けた、様々な失敗作と思われる武器たちがズラッと並んでいたが、
一番奥にしか目線はいかなかった。
一見、見事な刀であるが、実力があるものほどその存在感、異様さ、圧に押しつぶされそうになる。
一歩一歩しっかりとハゼを先頭に歩いていく
武器たちは綺麗に整頓してあり転ぶ気配はない。
その刀の前まで来た。
この瞬間氷のみが何かを感じていた。
「この刀、、、優しい。」
「は?」
「そんな訳ないだろ!妖刀だぞ!」
この世界の力とは理論だ。
それはその力を持つ物たちにも共通する。
氷だけがわかっていた。
頭の中に流てくる意志。
たとえ刀を作った者が殺しの道具として作ったとしても、その刀自身が人を殺すことを目標としているとは限らない。
この刀も主を守るため、主の友を守るため、
正義のために振るわれることを良しとしていた。
それこそ戦が終わった2年程度は伝説上の刀として崇められた。
ただ信仰は薄れ歴史はあやふやになり、
いつの間にか人をたくさん殺しただけの
恐ろしい妖刀に成り下がってしまった。
人々の妖刀という偏見、理論、意識が平和を導いた伝説の刀を妖刀たらしめていたのだ。
同様にこの世界で異質である異世界からきた氷になにか、仲間意識を感じていた。
だからなのか、それとも自分の事を理解してくれたからなのか。
刀は決めた。
無も知らぬこの人間を主と認めること、
そして、主以外に信仰をさせないこと。
主は自分に優しいと言ってくれた。
優しさの理論を持ってくれた。
であれば、
今の妖刀は災をもたらすものではない。
主たった一人に祝福をもたらす神刀として生まれ変わったのである。
急に刀が光だし氷の中に印として収納された。
「うわっ!!!」
「氷ちゃん!!大丈夫!?」
「だ、大丈夫だよ」
「嘘だろ、、、本当に手なづけやがった、、、」
ネオジムは心配が一気に消え、笑顔で溢れかえる
「さっっすが!!氷ちゃんならやれると思ってたよ!」
氷は刀の存在は感じられるけれども実際に手元にないので自分の中に問いかけた。
(刀〜、刀〜、どこいった〜?)
『ステータス変更点
Lv.3
防御力 30(+30)
生命力 28(+30)
魔力量 50(+30)
追加スキル
神刀収納・顕現
神刀:
「主の成長と一緒に自身も成長する。
祝福:主のレベル×10分を
防御力 生命力 魔力量に追加する
周囲の力を利用し耐久値を回復させる」』
(おお!これは凄い!!つまり努力すればするほどステータスがどんどん上がっていくのか!あと収納もありがたい!)
「ネオジムちゃん!これ凄いよ!」
「もしかしてこれ、、おやっさん!
ちょっと鑑定してみて!」
「あ、あぁ、 武器鑑定!」
「おやっさん!何が見えた?」
「これは凄い、神刀になってやがる
しかも嬢ちゃん専用武器だ。」
「専用、そりゃまた凄いね、、、」
「でもそれ以外は分からねぇ、
基本嬢ちゃんにしたステータスは見れなくなってるぽいな」
「でもこれで更に入園試験を受けさせて貰える確率があがったよ!氷ちゃん!良かったね!」
「そ、そうだね?」
雑談をしながら表に戻っていく
「あとは防具だけど〜、
氷ちゃんはどういうのがいい?」
「ちょっと待ってくれ、ネオジム」
ハゼはそういうと鍛冶屋の中に入っていき
数分経ち服を持ってでてきた。
「はいこれ、嬢ちゃんにやるよ。」
「え?こんな良さそうなのいいんですか?」
「あぁ、ジャイアントスパイダーの糸で作ってある。
軽い上にそこら辺の鉄装備より防御力がある優れものだ。
本当ならだいぶ高いんだが、、、
目の前であんなもん見せられちまったらな。
俺からの礼だ!」
「えぇ!あのケチのハゼが!?珍しい!」
「はぁ!?お前はいつもいつも一言余計なんだよ!」
氷が笑う
「実は2人って仲いいよね?」
「「誰が!?」」
二人は声を揃えて言う。やはり仲が良いのかも知れない。
話をそらそうとネオジムが話しだす。
「とりあえず!武器も防具も揃ったし一安心だね」
「そうだね」
「あ、そうだ中央都市行きの馬車は明日来る予定だから
まだ何か買いたい物があれば今日中にね!」
「わかった!
ん〜でももう買いたい物とか無いかなー?」
「じゃあ長旅になるし今日は速く寝ようか!」
いくらなんでも速いだろうと氷は思ったが、気づけばもうすぐ夕日が沈み始めるような時間であった。
「そうか、嬢ちゃん中央いくのか、
中央は曲者が多いって聞くからな
まぁ頑張れよ!」
ハゼと別れの挨拶を交わし、氷たちは何でも屋に帰った。
ポッカ~ン
「ふぅ〜〜やっぱりお風呂は気持ちいなぁ
今日の疲れが全部吹っ飛ぶよ」
そのときドアが勢いよく開く
ガチャ!!
「氷ちゃ〜〜〜〜ん」
「うわぁ!!なんで入ってきてるの!!」
「別にいいじゃーん女の子同士だし!
それに、さ、もうお風呂に一緒に入れるのはこれが最後だし、、、」
ネオジムは一緒にタメで話せる友などいなかった。そんな彼女にとっての初めての友達。
別れが寂しいのは当然である。
「ネオジムちゃん、大丈夫!また会いに来るよ」
「ねぇ氷ちゃん、、、」
「ん?」
「今日は一緒に寝てもいい?」
「しょーがないなー、、
でもそんなしおらしいのネオジムちゃんらしくないよ」
「、、、それもそうだね!!
ありがとう」
たかが数日、されど数日。
最高の友達になれた二人は明日の為に就寝するのであった。




