第一章 AAB
なろうの仕様上あらすじと内容に同じ文が含まれます。ご了承ください。
「全く、偵察任務ってのはなんでこうも退屈なんだか。」「YO隊の長がそんなこと言ってどうするんですか…まあそろそろ帰投命令が来る時間なんでもう少し頑張りましょう」「分かったよ、相棒」
いつもの様に大気圏を飛びながら地上へ偵察ポッドを向ける二機、彼等が大気圏を飛ぶのには勿論理由ががある。「地上に向けたところでAABなんて居るのかよ、だって奴ら火星に居るんだろ?」 「表向きはAABの監視ですけど実際は連邦の監視だって噂もありますからね、真偽は不明ですけど」「そんな陰謀論じみた話なんてあるかよ、俺はそういうの信じない主義なんだ」 「まぁ所詮はソースもはっきりしないネットの噂話ですからね、全くそんな話を広げて何がしたいのか理解に苦しみますよ」
数十年前、連合国の火星探査機が謎の信号を傍受。それは火星より遥か遠くから飛んできた信号であり我々に向けられたものであった。しかし当時の人間には一体何の目的で送って来たのか、それが自然現象なのか、人為的なものであったかさえも分らない。そして信号の初受信から3年、今度は火星から信号が送られて来る。探査機からではない、あの時と同じ信号、宇宙軍は即刻解析を始める、今回は人工知能も使った、だが解析にはさらに数年を費やす事になる。 その間にも異なる様々な信号が飛んできた、その度に費やせるほぼ全ての解析能力を費やしたが依然として分からない。そして一般民衆の関心も薄れて来た頃、その日は来る。信号の初受信から6年と3ヶ月を要したその内容として民衆に公開された内容は 『Hello』、その他にも様々な一般的な『挨拶』の言葉がその信号の内容だった。その話は瞬く間に世界中へ拡散、予想外の信号の内容に一般民衆は困惑の声を上げた。そして相手は異星の生物であるにも関わらず歓迎する運動も見られた。しかしその内容はあくまで表向きの内容。仮に本当にそんな内容だったら今戦って居るはずが無いのだから。「YO隊に通知、AAB2機をそちらの空域に確認。雷雲の中に居た様だ」 「こちらでもレーダーで確認しました。距離15km、交戦しますか?隊長」 「やっぱり陰謀なんて無えんだよ、まぁどれにしろその距離ならやるっきゃねえ... 行くぞ!」 二機のFD-5が急降下しながら雷雲の中に突っ込む 「畜生火器レーダーが使えない、これだから雷雲は嫌いなんだよ」 「雷雲の中でもSARHミサイルなら辛うじて使える筈です、かなり近づく必要がありますが」 「どんだけ近づけばいい?」 「500m程まで近づければ」 「上等だやってやる、来るぞ!」 雨風を超音速でをかき分けながらヘッドオン、両者の機関銃が轟音をまき散らしながらすれ違い、一機のAABが文字通り蜂の巣になって落ちてゆく
「AAB、一機撃墜!FD-5の25mmを甘く見るなよ!」 「もう一機、旋回してこちらに来ます!」 その後両者180度旋回、水平に戻ったのちAAB1機が反転し急降下、それを追う形で二機が続く。「雷雲の中でドッグファイトとは中々イカれてる、あいつに恐れと言うものは無いのか?」 「そんなものが有ったら堂々とこの星を飛ばないと思いますよ、あいつらには恐れどころか知能が有るかどうかも分からないんですから」 雷雲の中は暴風、雨による着氷、雷による電磁波干渉などが有る為まともにドッグファイトなんて本来は出来ない、しかし今前に居るAABは偵察機であろう機体な為に逃してはならないのである。逃してしまえばYO隊との戦闘データ、地球側の様々な情報が洩れてしまうためだ。
「しかしトンデモねえGを掛けやがる、奴は本当に生命体なのか?」 「雷雲の中で10G以上掛かっているのはお互い同じです。もうすぐ抜けますのでそこでケリを付けましょう」 雨風に煽られつつも必死に視界から逃れられない様にAABを追う、その後マッハ5は優に超えるであろうスピードで3機が分厚い雷雲から地面に向かい降下して行く、しかしそこは山々が乱立する山岳地帯であった。
「このままだと山にキスしちまう!早く機体を引き上げろ!」 機体が雪を舞い上げながら山スレスレを辛うじて通り、山に沿いながら上昇。コンソールパネルには11Gの文字が出ているにも関わらずお互い一瞬もスロットルを緩めようとしない、AAB側にとっても当然落とされる訳には行かないのだ。
山岳地帯を縫う様に駆けてく3機、速度は音速を優に超える。しかしそれも長くは続かない、数秒の長い直線、無情にもAABは火器レーダーに捕捉されてしまう 「やっと捕まえたぞ、クソな蝿みたいに逃げ回りやがって」 機体をよじらせる様に必死にレーダーから逃れようとするAAB、しかしそれは第9世代戦闘機の前では無意味に近かった「YO-1FOX1!」コール後無慈悲にも胴体から発射される1発のSAAM、AABはフレアの様な物を炊くものの機体に直接レーダーを照射されている為無意味。ミサイルが急激に距離を詰めていきその場の二人がこれで撃墜しただろうと思ったその時、AABは突如どこに格納していたか分からない主翼を広げコブラの様な機動で急減速し二機の間に滑り込んで来る、それでもミサイルは当たってしまう。AABは爆散し、その左右に居たYO隊にその破片が飛んでくる。破片はYO-2の右翼を軽く掠める「YO-2無事か?」 「右翼が軽く損傷しましたが大丈夫そうです。念のため自己診断プログラムを走らせてみます、隊長もやったほうが良いかと」 「そいやそんなのも有ったな、減るもんでもねえしやってみるか...って10分掛かるのかよ!」 FD-5は自動診断機能を搭載しているが想定はあくまでも出撃前の最終チェックであり、本来空での使用は想定外。
しかし彼等が乗っている機体は偵察仕様であり、長時間空を飛ぶことが前提として改修されている。長時間空を飛ぶと言う事はバードストライク等の危険も通常より高まる点などに考慮して、空中でも簡易的な自己診断が行えるようになっているのだ。
そんなこんなで楊一にとっては暇な時間が流れる中「ところで隊長」とYO-2が口を開く 「いつもなら管制から帰還命令が来ますけど何の通信も来なくないですか?」 「確かに来ないな、ちっと一回こっちから通信を試してみる」
「あーあー、YO-1からAWACS、聞こえてたら返事くれ、どうぞ」 「管制に対してその口は無いでしょう...」
YO-1が無線を送るものの管制機からの返事はない、どれだけ待とうと返事は来ない。「全く、こっちは命かけてるのにあいつらは呑気に居眠りかい、あーそうかいそうかい」 「隊長、通信切れてないですよ...」 それを聞いたYO-1は慌てて管制との通信を切る。しかし返事は来ない、「なぁ、これ管制機になんかあったんじゃねえか?まぁいいや、一回基地に通信を取ってみる」 痺れを切らしたYO-1は無線を広域に切り替え直接基地に通信を試みる、「YO-1から地上管制、聞こえてたら返事が欲しい、どうぞ」
すると予想外の相手から返事が来る。「こちらAWACSエアーフライ、YOと言ったか?、貴機らの所属を明らかにせよ」
AWACSエアーフライなど聞いたこともない2人、しかし本来の管制と通信が取れないのと軽いとは言え僚機の翼に傷が入ってる今、所属を明かさないと言う選択肢はなかった。「こちら西連合軍所属、第4246戦闘偵察隊、YO-1はこの機のコールサインだ」
所属を明かすと嫌な空気と間が流れる『やはり明かすべきでは無かったか?』と言った考えも浮かんだが、明かしてしまったものはどうしようも無い、なんせ異星の生物とトンデモない戦いを繰り広げて来たのだ、例えここで地対空ミサイルが飛んで来ようとどうってこと無い。
そして嫌な間もそろそろ鳥肌が立ちそうに成る頃、AWACSが重い口を開く 「こちらエアーフライ、貴機らの情報を調べさせてもらった」 その言葉にYO隊に悪寒が走る。『わざわざ調べる?まさか連邦の管制機...?だとしたらここは連邦内なのか?』 嫌な考えが頭をよぎる中AWACSは続ける 「今後の対応と今現在の状況を端的に伝える、まず貴機らは現在連邦内を飛んでいる、本来なら即撃墜だが、調べたところ今の4246飛行隊は対AAB戦を主にしてるそうじゃないか。」 「だから何だ?落とすなら落とせ、SAMがこっち向いてるのは分かってるんだ」 予想外の開き直ったような態度に若干の戸惑いを見せるAWACS、大体仮にも領空侵犯をしているのはこちらなのだ、普通は命乞いの1つや2つはするだろう。「貴機らは自分の立場が分かっているのか?本来なら即撃墜と言った筈だ。…まぁいい、貴様らには少し話がある、こちらで指定する周波数に切り替えろ」
これ以上反抗しても無駄だと悟ったYO各機は言われた通りに周波数を切り替える、しかしYO-1はあることに気が付く
「AWACS、一つ聞いていいか?」 「何だ?今度調子に乗った発言をしたら本当に撃墜も辞さない。」 「そんな事をしてもこっちが死ぬだけだ、そんな馬鹿なことは何度もしない。んと、質問に戻る。これ西連合の周波数だろ?しかも... 『よく気が付いたな、流石我が軍の戦闘偵察部隊だ、誇らしいよ。』 と遮るように言う聴き馴染みのある嫌味な声、紛れもない、基地司令だ。
それに気づいた二人は一瞬黙り込む、アイツの事を良く思う奴なんて居ない。隙さえあれば某帝国人くらい皮肉を混ぜてくる。
「どうした?月居中尉、無線では散々言っていたのに急に黙るじゃないか。現在地を把握できてないのに無線を使った挙句、西連合軍の信用を害するような言葉遣いの数々、どう料理しても美味そうじゃないか。君もそう思うだろ?中尉」
最早皮肉とも言えないであろう言葉の数々に言葉を詰まらせるYO-1、この状態では何を言っても無駄なのは明らかなのだから。
そのとき「あの」 と話に入ってくるYO-2、「隊長は確かに不適切な言葉を使いました、領空侵犯もしました、本来なら国際問題どころでは済まない大事です。しかしAABという前例にない星外の『生物なのか』すら分からない特例中の特例に対応していたと考えると仕方がないことなのでは無いのでしょうか、現に今飛んでいるのは連邦の領土の筈なのにミサイルの一発も飛んでこない、それにAABの問題は西連合だけでは無いはずです。」
その言葉の後、またしても嫌な沈黙の時間が流れる。しかし奴の口から出た言葉は予想もしない
「そちらの言い分は十分理解した」
という言葉。「反応が無いようだな、そちらの言い分は十分理解したと言っているんだが」
奴はそう続ける。しかし二人の反応は無い、できないと言った方が正しいかもしれない。YO-2だって物理的にも首が飛ぶ覚悟だったのであろう。
そして「そちらの話を遮ってすまないが少し現状を説明したい」と言うAWACS、YO隊も我に返り耳を傾ける。
「改めて言うが私は『連邦軍所属』のAWACSだ、本来なら君たちとはお世辞にもいい関係とは言えないだろう。しかし、先程そちらの二番機が言ってくれた通り今の状況は平時ではない、だから君たちとこうして空でおしゃべりが出来るわけだ。そしてAABに関する問題は二国、いや国際規模と言って良いだろう。それに伴い、協定世界時15時に国際連盟に所属する国で対AABにおける共同声明を発表する事が決定している、今の時刻が13時だからまだ発表されていないが、両国に亀裂を生じさせる訳にもいかないので君たちにはこの様な対応をしている訳だ。」
AABに関する問題は最早西連合で収まる問題ではない、その事を改めて理解したYO隊。そう、彼らはAABと戦った数少ない戦闘機乗りである、そして皆は後に彼らをこう呼ぶ
『逸般戦闘機乗り』と
「一応言っておくが言葉遣いの件に関してはきちんと処理するから安心したまえ」




