第二十一話 交渉
「――それで、あんた達はこの国をどう変えたいんだ?」
カイアスが真正面から問うた。もはや商人の仮面はない。声は静かだが、その奥には刃のような鋭さがあった。
「私たち革命軍は、誰か一人の王や英雄にすがる時代を終わらせたい。民の声が届く仕組みを作る。それが目的よ」
リヴィアは迷いなく言い切った。
「民の声、ね」
カイアスは口の端を歪めるように笑った。
「理想論だな。俺はそういうのには興味がないぜ。民が飢えようが王が死のうが、戦争だろうが平和だろうが、商売さえできりゃそれでいい」
リヴィアはその冷めた言葉に、一瞬だけ眉をひそめた。
「……あなたらしいわ。でも、それじゃ何も変わらない」
「別に変わんなくても困っちゃいないしな。変えようとするから争いが起きるんだぜ。儲け話を潰すから敵を作る」
カイアスは肩をすくめた。
「それでも、私は変えたいの。怒りや暴力で押し通すんじゃなくて――民の想いを言葉にして、政治の場に届ける。それが、私のやり方よ」
「……綺麗事だな」
吐き捨てるように、カイアスは言った。
「そいつらが言葉で動くようなタマか?あの議会、俺もちょっと覗いたけどな。剣を足元に置いたまま、目だけギラギラさせて意見言ってたぜ。“暴力を我慢してるだけ”にしか見えなかったけどな」
「無理かもしれない。でも、それでも私は――戦わずに、この国を変えたいのよ」
リヴィアの瞳はまっすぐで、揺らぎがなかった。
「暴力で変わる国は、また暴力で壊されるわ。そんなこと、もう繰り返したくないの」
沈黙が落ちる。焚き火が静かに、ぱち、と音を立てる。
「……ようやくまともに話し合える相手に会えたと思ったが……夢物語の商談かよ」
カイアスは小さくため息をついた。
「けど、まぁ……悪くねぇ。そんな馬鹿正直な姉さん、昔から嫌いじゃなかったしな」
「ありがとう。……でも、あの頃と違って、今の私は本気よ」
カイアスはその言葉に、にやりと笑った。
「なら、見せてもらおうか。姉さんの“本気”が、どれだけこの国に通用するかをな」




