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恭子と友紀のお仕事

5月17日。恭子と友紀はイメルダの事務所にいた。2人は嬉々として更衣室でコスチュームに身を包んだ。恭子たちは白のセーラーに紺のミニスカート。夏服の定番だが、身にまとってみると露出度がやっぱり高め。最近の女子校生のミニに比べたらいくぶんマシだが、娘は5センチ。母親は10センチ長めに過ぎないのだ。だが幸いにもミニスカートの生地が厚く、ちょっとした風ではめくれ上がらない。かと言って重くもなく、美人母娘は安堵した。今日からはいよいよ本番を想定したミッションに移行する。訓練や対戦でコンビを組む以上、私たちは一緒に行動するのが当然といえた。左胸には[きょうこ][ゆうき]と鮮やかに刺しゅうされ、コレまでとは違う。右胸には[イスカ]と鮮やかに刺しゅうされた。[イスカ]は私たちに付与されたコンビ名であり、異世界での通称。コンビ名が与えられて初めて魔法戦士は異世界へ参戦できるのだ。だがまだ私たちには訓練が足りていない。3人は[時の間]で呪文を唱えた。「ワルナ、グスマイ、コッべケス。ワルナ、グスマイ、コッべケス。ワルナ、グスマイ、コッべケス」すると目の前のゲートが開き、恭子たちは異世界にいた。名古屋は21時前だが、こちらはまだ17時前。そこは廃牧場だが、すえた糞尿の匂いがしない。3人はナルシスに温かく迎えられた。「初めまして恭子。僕はエフィー。仲よくしようね」「こちらこそよろしくエフィー」「初めまして友紀。僕はキース。仲よくしようね」「そうねキース」彼らの日本語は流暢だしイントネーションもさほど不自然ではない。白のセーラーはお揃いだし白のズボンは野暮ったい印象。エフィーたちは金髪碧眼でもイケメンでもないが、いずれも美人母娘の好みに近い。作業は牧場内の雑草の除去だが、5人は鎌を持ち軍手をはめて作業を始めた。エフィーと恭子ペアが北側。キースと友紀ペアが南側。イメルダが真ん中を担当した。後半はペアが変わる。理由はスワッピング対策。本命としか話さないと対戦中にペアが変われば泣くのは私たちだからだ。幸いにも雨上がりのせいか作業はスムーズに進んだ。恭子たちは虫を恐れたが、意外と虫が出てこないのだ。「実は僕たち虫が苦手なんだよ」「エフィーの学校は山奥なのに?」「都会育ちだからね」「じゃあキースは?」「僕もだよ」ナルシスが虫が苦手だなんて。美人母娘はホッとした。休憩に入ると5人は雑談に花を咲かせた。「なんで廃牧場でやるの?」「魔法戦士は牝牛への憧れが強いからさ」「でも足元が悪いわよ?」「園芸会社が整備するから大丈夫さ」後半はエフィーと友紀。キースと恭子がペアを組んで作業した。コレまた意外と楽しい。事務員は安堵した。参戦する子は人見知りが激しく、初日から躓く子がいる。だがイスカは違った。ちゃんと地に足がついている。だが母親はキースとよく話すが、娘はそうでもない。そこでイメルダが間を取り持ち、軌道に乗せた。すると友紀はがぜんやる気になり、恭子を安心させた。「いきなりだと緊張するよね」「そうねエフィー。でも慣れたわ」どうやら娘は吹っ切れたようだ。このあたりで躓くようでは参戦しても序盤から厳しくなる。だが友紀は殻を破り、エフィーに話しかけるようになった。「実は私、出逢いがなくて参戦を決意したの」「それで充分さ」彼は続けた。「参戦に立派な動機はいらないよ」「どうして?」「参戦はそんなに甘くないからさ」エフィーたちはこれまでに何度も待ちぼうけを食わされたが挫折する子は見通しが甘いという。「エージェント活動もせずに参戦するのは無謀さ」「確かにね。コスチュームに慣れなきゃ戦えないわ」「でも友紀たちはちゃんとエージェントから始めた」「エフィーたちの期待に添えるよう頑張るわ」キースたちも盛り上がった。「どうやら友紀は大丈夫そうだね」「もちろんよ。だってこの私の娘だもの」「てっきり廃牧場を目の当たりにしてドン引きしたかと思ったよ」「私もドン引きしたわ。でもコレが異世界の世界観なら受け入れきゃ」ふとノボリが目に留まった。[桃尻戦隊静香さま由衣ちゃんご歓迎]。「ねえキース、アレなあに?」「次回ここでやる子たちのノボリさ」「そ、そう」私も慣れなきゃいけないようね。「ねえキース、あなたたちもアレやる?」「どうかな。たぶん友紀次第だね」「私次第じゃないのね?」「母親はたいがいノリがいいが、娘はシャイだから」ソレは偏見よ。だが恭子は飲み込んだ。せっかくのいい雰囲気を壊したくないわ。娘を見やるとノボリを見て歓声を上げていた。「なあにアレ?」「僕たちが作るんだよ」「じゃあエフィー、私たちにも作ってくれる?」「もちろんさ」「よかったあ」いや友紀。ソコは胸を撫で下ろす場面じゃないわ。「恭子はもちろん作って欲しいだろ?」「う、うん」「決まりだね」まあいいか。なんか変な方向に行ってるけど。コレが異世界なのね。

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