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アロンソたちからの手紙

5月14日。アロンソたちから手紙が届いた。清香と柚果は嬉々として開封した。手紙には香水が焚き染められ、鼻腔をくすぐる。内容はもちろん釈放式以降について。彼らはまず日曜から金曜への変更を提案した。訓練と対戦は週ごとに交互に行われるが、時刻はともに17時から。訓練は1時間。対戦は25分ハーフの50分。だが異世界には時差があり名古屋は21時。つまり4時間の時差がある。コレはむしろありがたい。週末だし柚果は土日休み。清香はリモートワーカーだから特に不便はない。どころかこの方がむしろ週末を満喫できる。清香はアナベル。柚果はフリーダに訓練を受けているが、マリアからも快諾を得たという。訓練や対戦時間を変更しても朝型の生活に支障はない。私たちは30日に訓練を再開し6月6日にナルシスとの再戦に臨む。なるべく日を空けたくないから好都合。アロンソたちは予備役に回され、学生生活を送っていた。シピン学園はサザナミ公国唯一のナルシス指定校で、異世界では極めて珍しい4月入学を貫く男子校。もちろん異世界では日本の教育制度が邪悪だと認識しており、4月入学にメリットは見出せない。唯一のメリットは魔法戦士が安堵する。それ以外にあるわけない。彼らの校舎は山奥にあり、非常にアクセスが悪い。都会育ちのアロンソたちはこれからを憂慮した。虫が本気を出してくるからだ。幸いにも独房に虫は湧かず、私たちの生活は清潔に保たれた。2基のおまるは毎日綺麗に清掃されるが、多少のアンモニア臭は残る。ありがたいのはヘレーネに鎖を引かれてもさほど首輪が締まらないこと。もちろんキュッと締まりはするが、クセになるレベルじゃない。女性看守は私たちに同情的だし、ちゃんとゆるめてくれた。このあたりは運であり、私たちは恵まれたのだ。柚果は早くもコーガンに返事を書き始めようとしたが、その前に話し合いをしたい。「ねえ柚果、ナルシス対策を考えましょ?」「そんなものないわ」娘は続けた。「だってもうじき6月だよ?私たちの不利は否めないわ」確かにそうだ。私たちはまだ夏服にすら慣れてない。「で、でも何かしら対策はあるはずよ」「大丈夫?お母さん、スワッピングや即興に対策なんてするだけムダでしょ」「た、確かにね」娘は手紙を書き始めた。私はため息をついた。柚果は理解していた。ナルシスがゆるめてくれていたことに気づいていたのだ。「お母さん、私たちはまずヨガから始めないと」「ヨガ!?」「体幹を鍛えてないからよく転ぶって書いてあるわ」確かにそう書いてある。「私たちは中日だからね」一昨年のペナントレース。中日は巨人の攻撃で原監督からサインがバレてることを教えてもらうエピソードがあった。「じゃあまずヨガからね」私はホッとした。よく読むとアロンソもコーガンと同じことを書いている。確かに私たちは初戦から転びまくった。彼らは半ば呆れながらも私たちを追っかけた。私たちは四つんばいのまま慌てて逃げ惑った。そんなシーンを思い出した。「私たちはナルシスにスワッピングや即興を出させなきゃならないわ」「そうね。その前に転ばないこと」「でもねお母さん、ヨガだけじゃあ勝てないわよ」「どうすれば勝てるの?」「わからないわ。でもね、彼らがいろいろ仕掛けてくれば逆にチャンスかもよ」私たちの勝機は薄いが、アロンソたちがいろいろ仕掛けてきた時に思わぬチャンスがありそうだ。「コーガンたちを追い込まないと私たちにチャンスはないわ」「たぶんね」「できれば序盤からペース握りたいし」でもこれから大気が安定するから生足が高く上がりそう。私たちは話し合いを重ねた。課題は山ほどあるが、かと言ってナルシスとの力の差はさほどない。「彼らにだって確信があるわけじゃないわ」「でもね柚果、スワッピングはともかく即興を仕掛けられたら?」「むしろこちらから仕掛ける手があるわ」「そうか。何も即興はアロンソたちの専売特許じゃないわね」「受け身に回ったら私たちは厳しくなるわ」だが魔法戦士は戦いよりも魅せるもの。私たちはヘレーネにも意見を求めた。「私ならナルシスの急所を攻めるわね」「でもそれってあからさまじゃない?」「だからね、それとなくジワジワ攻めるの」女性看守は男の子も前戯が極めて大切だと説いた。「だってイチモツと玉袋を触るだけじゃあ盛り上がらないでしょ?」「確かにそうね」「キスを交わしたり手を握ったり。手順を踏みながらジワジワ攻めるの」ヘレーネは他国のニュース映画を見るほど魔法戦士が大好き。「ニュース映画はどう?」「たぶん実戦と変わらないわ。ただ魔法戦士がヒロインだから共演するのは予備役のナルシスよ」「じゃあ彼らはゆるめてるわ」このあたり異世界はゆるい。本来ならば虜囚と看守が親しくなるなどあり得ないが、私たちはヘレーネにふくらみを育ててもらった。背後からモキュモキュ揉まれて私たちは甘い声を上げた。

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