友紀と美玖の日常
5月13日。友紀と美玖は登校した。26日には柚果たちが釈放されるし、私たちは異世界へ参戦するのだ。もとより娘たちに参戦の大義名分はないが、渡りに船。友紀たちはゴールデンウィークに[ウイングマン]にハマった。実写版は微妙だが、漫画の方が断然いい。発育が遅れ気味の友紀たちはアオイや桃子に馴染めず、小川美紅と深沢久美子に惹かれた。2人は細身だし、ふくらみが小ぶりなのがいい。私たちは美紅ほど可愛らしくないが、久美子はクラスメイトにいそうなタイプ。もとより特撮オタクではないから感情移入しやすい。恭子たちは昭和末期のアダルトコミックや少女漫画が大好き。母親たちも私たち経由で[ウイングマン]にのめり込んだ。私たちはその世界観よりもむしろウイングガールズに惹かれたに過ぎない。ぶっちゃけ主人公の広野健太やリメルやライエルなどどうでもよかった。つまり部分的にしかハマらなかったのだ。かと言ってまだマジカルナイツの自覚は芽生えない。だがリアルにマトモな出逢いがないのはお母さんたちを見ればわかる。かと言って出会い系には犯罪の匂いしかなく、パパ活は顔が長あいウマヅラブッサイクのホスト狂いがやるものと相場が決まっていた。11月の文化祭には他校の男子が来てくれるが、彼らと親しくなれるなら誰も苦労はしない。来年の3月に私たちは15歳になるが、それまでには処女を捨てたい。だがふだん男の子との接点が乏しく、他校の男子と付き合っている子は極めて少ない。その大半は同じ自治会にたまたま同世代の子がいたに過ぎないのだ。エスカレーターだから受験はなく生徒会役員でもない。バイトは校則で禁じられ、部活は帰宅部。打ち込める趣味もない。だが幸いにも異世界の世界観は昭和末期に近いのだ。理由はアナログ社会だから。魔法戦士の文化は黎明期に過ぎず、異世界に取り込まれた子は200人に満たない。20年で100組200人が参戦し、95組190人が異世界に帰化した。中には訓練相手のマリアと結ばれた事例も多く、残る5組10人は虜囚の身に堕ちた。だが別荘暮らしは女としての羞恥を失わなければ必ず復帰の道が開かれた。すでに蒸し暑く、私たちの前途はまだ不透明。だが異世界の世界観からして暗い未来にはならないわ。「だってさ、ウイングガールズで不幸にされた子っている?」「たぶんいないわ」「きっと大丈夫よ」クールでリアリストの美玖は楽観的ではないが、天然でおっとりした友紀は楽観的に捉えた。そもそも情報が乏しい以上、変に気にしてもムダ。6月下旬からの参戦が楽な展開になるわけない。だが友紀たちはなるべく気にしないようにした。ナルシスと3戦して別荘暮らしに慣れれば9月からの仕切り直し。10月からは冬服に変わるし、露出度が下がるから思い切ってやれるはず。イメルダに聞いても異世界の情報を教えてくれない。事務員は最小限の情報しか流さない。下手に情報を与えれば思春期の女の子たちは尻込みしてしまうからだ。だが私たちはイメルダが名古屋に常駐したからだと好意的に捉えた。異世界はアナログ社会だから帰国しないと情報が入らない。私たちはウイングガールズの追体験がしたかった。美紅や久美子と同じく魔法戦士として異世界の舞台を踏んでみたい。だがもちろん一抹の不安が拭えない。「ナルシスってどうなんだろ?」「力の差がないなら引き分けばかりかな?」「でも屋外でやる以上、対戦は天候に左右されるわ」「やっぱり私たちが不利なのは否めないわね」サザナミ公国は魔法戦士との力の拮抗を図るため彼らの女性化に注力。3ヶ月置きに4色8枚のショーツが国から無償で支給された。赤と黒とパープルとブルー。12月から2月はオーバーニーソックスが4色8本支給された。こちらはグレーと黒とブルーとボルドー。だが果たしてコレだけでナルシスが女性化するかは未知数。「柚果に聞かないと」「そうね。現場の声が一番正確」私たちはブルマーの着用を制限された。体育の時間や着用しないといけない時以外はダメ。理由はブルマー離れしないと恥じらいが健全に育たないから。羞恥と生気が魔法戦士の命であり、恥じらいを強められてこそ魔力は増す。つまり私たちの成熟や成長はナルシスとの共同作業に他ならない。色香に欠ける服装を禁じられ、ジーパンや短パンを処分した。代わりにブックオフでミニスカートを買い求めたが、違和感を拭えない。「私たちふだん履かないからね」「でも慣れなきゃ柚果たちの二の舞になるわ」幸いにも大気は安定し、気まぐれな風はあまり吹かない。私たちは近くのコンビニやスーパーでミニスカートに慣れることにした。イメルダも近場で明るい時間帯に慣らすよう釘を差した。幸いにも不審者や変質者に目をつけられはしなかった。ムレるブルマー離れはこの時期に最適だし、私たちのブルマー離れは極めてスムーズに進んだ。あとは活動に慣れるだけね。