第6話 鬼化したスライムのDNAのマッピング
今日は3月27日。鬼化したスライムのDNAをスライムDNAシークエンサーで読み始めてから、三日が経った。そしてそのシークエンサーの動作が完了した。
シークエンサーが読むのは、断片化されたゲノムだ。スライムのDNAの鎖は30本あるがシークエンサーはそれらを一本ずつ丸ごと端から端まで読んでいくのではない。シークエンサーにかける前に、実験的な前処理によってある長さに切られた、つまり断片化されたDNAの鎖が読まれるのだ。
惑星マジーでは、普通の生き物のDNAがA、T、G、Cの四文字で構成されるのに対し、スライムだけはU、N、K、Oと命名された四文字でできているのだった。文字といってもU、N、K、Oのそれぞれはある程度複雑な分子で、それが延々と連なってDNAができているのだ。
今から始まるのは、マッピングである。つまり、今回シークエンサーで読んだ鬼化したスライムの無数のDNA断片が、ジェレミーが論文化した普通のスライムのゲノムの、どのDNAの紐のどの位置にそれぞれマッピングされるのかを、コンピュータを用いて調べるということである。
再び、ゲノム情報を或る小説に書かれた文字列で例えて説明しよう。ジェレミー達は既に論文発表した普通のスライムのゲノム情報を知っている。これはその小説の一字一句の文字の並びを知っていることに相当する。そして、小説の中にある例えば「明日でも、あなたはきっと、愛らしい。」という文字の並びが、今回読まれた沢山の断片のうちの一つの断片に相当するとしよう。これを、もともとの小説の冒頭から最後までにマッチングさせていき、何ページ目の何行目の上から何文字目にあったのかを同定するのが、マッピングである。断片のうち恐らく大多数は、元のスライムゲノムと同じそのままの文字の並びになっていると思われるが、鬼化したスライムのゲノムだと、とある断片上ではある文字が何らか変わっているというのが、現在のスラ情課の仮説で、それがどこなのかを突き止めようというわけである。
ジェレミーは手際よく、マッピング用のプログラムに、今回読んだ鬼化したスライムのDNA情報をインプットとして指定した。そして、プログラムを、軍の所有するスーパーコンピュータ上で走らせた。昼ごはんを食べ終わった頃には、今回シークエンサーで読んだ無数の断片のそれぞれが、スライムのどの染色体上のどの位置にあったものなのかが、判別するだろう。
そんな結果待ちの時、上司のエミリーから業務用チャットが来た。
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次回は明日4/18投稿予定です!
スライムとうってかわって古代人が登場する回になります