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第15話 ONI1タンパク質阻害剤の化学合成

 ジェレミー、マリア、そしてシャラァはこうして国防軍本部へと帰還した。今日はその次の日、4月27日だ。国防軍化学課の課長シモン ロジェ及び彼の下で働く五人の化学者とのミーティングが始まった。


「皆さん、こちらが魔法熱素を司る妖精シャラァです。彼女がタンパク質阻害剤事典のKintaronib合成過程のシャラァと書かれた部分で魔法熱素シャラァを実験室に満たします。すると、そこの反応が触媒され、次の反応へと進めるはずです。」


 ジェレミーが説明する。


「どれだけの量の合成を行えばいいか、目安は有りますかな?」


 シモンが尋ねる。


「鬼は今、4体いるんですってね。二週間に一度分裂するのだから、一ヶ月後には16体になっているはず。さっき見せてもらったドッキングの結果を考えれば1グラムもあれば、十分と言えると思うわ。最初の反応のテストとスケールアップで三週間半くらいでできますか?」


 シャラァが答えた。

 

「チャレンジジングですがやってみましょう。材料その他の準備は万端です。皆さん、よろしくお願いします。」


 五人の化学者は役割を分担し、化学合成にかかった。シャラァが必要な部分では、シャラァが魔法熱素を実験室内に満たし、化学反応を進ませた。こうして一週間後の5月4日には、最初のKintaronibのバッチが出来上がり、化学合成が成功している事が分析化学的な手法により確認された。今まではドッキング計算をした時にコンピュータ上のみに、バーチャルに存在したこの薬が、現実の世界で合成されたのだ。

 いよいよ、ONI1タンパク質阻害剤Kintaronibの効果をスライム生命情報解析課の実験室で検証する。これには、マイクロ流路内で培養された培養ミニスライムが再度用いられた。

 まずはスライムDNAエディターでONI1遺伝子に変異をいれ、培養ミニスライムを培養ミニ鬼にする。そこに、今度はマイクロ流路内に流れる培養液にKintaronibを混ぜて流した。するとミルミルと培養ミニ鬼は培養ミニスライムに戻っていったのだ。一方で、Kintaronibを培養液に混ぜないで流し込んだもう一つの流路も準備したのだが、その中では内では培養ミニ鬼は鬼のままだった。つまり培養ミニ鬼が培養ミニスライムに戻ったのはKintaronibの効果だと考えられる。実験を見ていたスラ情課の課長のエミリーと化学課課長のシモンはハイタッチをした。

 その実験の後で、スラ情課と化学課合同で会議となった。アジェンダはどのようにシャモ平原にいる鬼に阻害剤を投与するかだ。


「ゲンさん、あなたなら鬼の一体一体に注射できるんじゃないかしら?」


「ヒエッ、無茶言わないでくれよ。阻害剤の大規模合成が終わる事には十六体もいるんだろ?鬼が四体の今でも死んじまうよ。」


「さらに言えば、注射よりも確実に鬼のそれぞれの隅々の細胞にKintaronibを届ける必要があるわ。培養ミニ鬼ではONI1は全身で発現していたんでしょ。」


 そう言ったのはシャラァだった。


「私の操る魔法熱素と人が使うエーテルをKintaronibに混ぜながら、空中から放つ事ができれば十六人の鬼の全細胞を狙い撃ちにする事ができるわ。今張っているバリアって、確か上は空いてるのよね。」


「軍用ヘリなら手配できると思う。それに何人か乗ってもらってシャラァあなたのサポートをしてもらえば良いのかしら?」

 

 エミリーが訊く。


「これは高度な術式で、ある一人しか私に協力するする事ができないという制約があるわ。二人目がいてもその二人目の別のエーテルが入ってくると術式が継続できなくなる。そしてエーテルの量も大量に必要になる。軍で一番デカい容量を持っているエーテル使いと一緒じゃないと難しいでしょうね。」


「それだとマリア モノーになるわね。。。」


 エミリーはマリアの名を出した。


「では、彼女に任務に参加してもらえるか、彼女と対スライム戦闘部隊の隊長達と話し合いをします。もし、そうなったら、スラ情課からはジェレミー、あなたがヘリに乗ってくれますか?ヘリの操縦が一番上手いので。」


「わかりました。」


 そして、ONI1タンパク質阻害剤の合成を始めて24日後の5月21日までに大量合成が成功した。一方でシャモ平原で分裂を続けた鬼は、この日までに十六体までに増えていたのだった。


(ジェレミーもヘリに乗るのね、これは鬼退治には都合が良いわ。)


 シャラァは密かに思った。

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