33.今後の方針
王都に着いて約二週間が経過してやっと落ち着きが出てきた。
そして、今日は念願の一日休暇!しかも、レオルドさんと二人揃ってだ。生憎の雨で空気がジメジメと湿っぽいが、出かけられる機会は限られている。
街に繰り出す以外の選択肢なんてない。
私は少しでも気分を爽やかにしたくてレモンイエローのワンピースを着用していて、レオルドさんはベージュのゆったりとしたカーゴパンツに白のシャツとシンプルな格好である。
今はA級冒険者権限のご相伴に与って王家御用達とされている高級料理店の個室で昼食の美味しさに舌鼓を打っていた。
元々旨味の強いお肉を更に熟成させたメインディッシュは本当に美味しかった。その他の料理もとてもおいしかったけど、一番は最後のデザート。この国の伝統スイーツと説明されたそれは甘いんだけれど、瑞々しいフルーツの酸味が絶妙にマッチしていて最高だった。
彼もフォークの進み具合が早く、「うまいな」と漏らしていたから絶対にまた来ようと思う。
食事を終えてお茶で休憩を挟む。
高級店なだけあって紅茶も薫り高く、スッと心を落ち着かせてくれる。
「それで。ルナはセルバイド王国の王太子を治療したいのか?」
右手で持ったカップに視線を固定したまま彼は問いかけた。
あの時聞いてからずっと気になっていた事。だけど結論は出ないままで。
「…私はどうしたらいいと思いますか?」
「ルナに治して貰った立場の人間から言うと、お勧めはしないな」
「どうしてですか?」
「俺自身治療された時、邪な考えがなかったわけではないからだ。あんたはどの立場の人間に対しても利用価値があり過ぎる」
「利用、価値……」
「魔術師だけでなく、回復術師、付与術師。あと、異世界人を囲っているという牽制にも使えるな。セルバイド王国側の人間がそんな人材を見過ごさないだけならいいが、最悪ドラスティア国やセイクリッド勇王国に教会まで出張ってくるぞ?」
「…そんなに?」
「ああ」
自分の思った何倍も大事な状況に陥る予想に驚く。
付与魔術師や高レベルの回復魔術師が少ないからといってもにわかに信じ難いが、レオルドさんが言うのならそうなるんだと思う。
「治せる力があるのに…」
「…他にやり方はないのか?」
「他に?」
「例えばそうだな。…ポーション、とか?」
「ポーション…」
「ただの例だ。欠損治癒可能な最上級ポーションなんて伝説の産物だしな」
「……いけるかもしれません」
「……………は?」
彼の提案に対して私のスキル構成を加味してみると…。
ポーション制作時に使用する調薬スキルは現在lv.7。
回復魔術で欠損治癒に必要なのが、lv.8。
実現範囲に充分収まっているのではないだろうか?
「スキルレベルを上げればどうにかなりそうです!」
「………おかしいだろ…」
「何か言いましたか?」
「いや、何でもない。作れるだけの腕があるなら、材料も全部揃っているのか?」
「あ…、作り方も分からないです…」
解決の糸口が見つかったと思ったのに再度壁にブチ当たってしまった。
確かに材料がない上に製作方法も知らないではお話にならない。まずは最上級ポーションのレシピが記載されている本を探さないといけないが、伝説上の産物と謂われるレシピが果たして残っているのだろうか…?
…やっぱり、別の方法を考えた方がいいような気がする。
「あの、レオルドさん」
「図書館に行って調べてみるか」
「え?」
「悪い。何か言ったか?」
「あ、えっと。他の方法を考えた方が良いんじゃないかなって、思って…」
「そうか?可能性があるんならこれに賭けてみるのが良いと思うが」
「そうですか?」
「ポーションだったら誰かを経由してセルバイド王国の王太子に届けられる。それにもし出来なくてもルナは自分の可能な限り手を尽くしたって言えるだろ?」
自分という存在を隠しつつ、陰ながら治療の為に奔走する。
レオルドさんに言われるとそれが最善の策の様に思えてくるから本当に不思議。
「確かにそうですね!今から作り方を調べに図書館へ行きましょう!」
「行くか。あと、敬語に戻ってるぞ」
「あ!…早く行こ!」
なんとなく恥ずかしく思えて足早にお店を出た。
図書館に向かう途中でレオルドさんは建国祭・誕生祭の為に出店している露店に寄っては買い食いをしていた。普段からたくさん食べている彼にとって少しずつ出てくるコース料理は物足りなかったらしい。
寄り道をして迷いながらも辿り着いたアスリズド中央国王都図書館はそれはもう立派だった。
ポーションについて記載されている本を手分けして読み進めていったが、結局最上級ポーションのレシピの詳細は見つけられなかった。
その頃。
「レオルド達今頃デートか!若いというのは良いな!」
「おじさん臭い…」
「な!我に失礼ではないか!」
「失礼致しました。ふたりは露店を回っているのでしょうか?デートとしては少し地味なような…」
「安心するがいい!我のオススメ店をレオルドに知らせておいた!」
「レズリー様にしては珍しく気が利きますね」
「珍しく、は余計であるぞ!」
「ルナちゃんはまだ気が付いていない様子でしたからどうにか進展して頂きたいところですね」
「そうだな!女をとっかえひっかえしてそうなあのレオルドが本気になってるっぽいからな!」
「結ばれると良いですね?」
「ハハハハハ!金獅子獣人ならば狙った相手を見す見す逃したりしまい?」
「…それもそうですね」
面会希望者を効率よく捌きながらも合間合間にふたりの帰宅時の様子や今後の展開を予想して楽しんでいる、他人の恋路に興味が尽きないドラスティア国一行。
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