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31.衝撃カミングアウト

夜空には雲が掛かって薄暗い。光源は手元にある魔道ランプだけで、バルコニーにレオルドさんとふたりきり。



二人だけで会話ができるならどこでも良かったのだが、生憎と部屋割りは男女で分かれており、三~四人での共有だった。


仕事終わりにみんながいる前で誘ったものだから女性陣には告白だと勘違いされてすごく応援された。

誤解は未だに解けてない。


気になった人達が私達からは見えない扉の向こうで聞き耳を立てているのは仕方がないと思うけど、彼以外の人に聞かせるつもりはないので、結界魔術で遮音している。



心の準備は完璧に出来ているのに、言おうとすればするほどうまく内容がまとめられなくて、もう何分も彼を待たせてしまっていて。


それでも急かそうとせず、私のタイミングを待ってくれているレオルドさんにちゃんと向き合いたい。


俯いたままの状態ではあるものの、意を決して口を開く。


「わ、私の名前は…ルナ、じゃないです」

「ああ」

「私の本当の名前は、鈴木三日月、といいます。サクレイア聖王国に召喚された異世界人のひとり、です」

「そうか」


その薄い反応が怖くて、それでもどんな表情をしているのか気になって隣を盗み見ると、バルコニーの手摺に腕を預けて困り顔で微笑む彼の姿があった。


「…驚かないんですか?」

「まあ、正直なところ予想がついてたな」

「そう、ですか」

「それだけじゃないんだろ?」


ああ、レオルドさんはもう理解しているのかもしれない。

私が隠したいと思うものを。


「はい。…異世界人は必ず固有スキルを持っています。…私の持つ固有スキルは二つ。一つは【天眼】で、もう一つは【贈与】、です」

「…【天眼】は聞いた事があるが、【贈与】はどんなスキルなんだ?」

「【贈与】はその名前の通りで贈るというのが本質なんですが…【天眼】と同時に使用すると、急速にスキルの習得を速める事が出来るんです」

「スキルの習得を、か?」


レオルドさんの眉間に皺が寄せられている。

もう少しわかりやすく説明出来たらいいのだけれど、上手なまとめ方がよくわからない…。


「えっと…アリドスの街までの護衛依頼で私が魔法を教えたことがあったじゃないですか?あの時に【贈与】は声を介して発動するスキルなので使用せざるを得なかったんですけど、【天眼】は使ってなかったんです。それでも、バンダルさん達のスキルの習得は速かったと思いませんでしたか?」

「確かにな」

「【天眼】でスキルレベルの高い人を鑑定してスキルの情報を収集して、【贈与】でスキル情報を伝える。そうすると、教えられた人は普通の何十倍の速さでスキルの習得とレベル上げが出来るんです」

「…それは、どこの誰であろうが際限なく適応するってことか」

「はい…。スキルの習得、早いと思いませんでしたか…?」

「…そうだな」


この世界で生きてきたからこそ、スキルについて私より詳しい彼には衝撃的な事実なのだろう。

それに頭のいい人だから様々な利用方法が既に頭の中に浮かんでいることだろう。


受け入れてくれると信じる気持ちと、また騙されるんじゃないかという経験則による諦念が頭を過る。


「一緒に召喚されたクラスメイト達の中に私と同じ【天眼】を持つ人がいて、その人と比較しても私だけスキルの習得速度が速かったからか、うまく馴染めなくて…」

「そうか」


何か言わないと、という強迫観念に駆られて私の口から言葉がどんどん零れ落ちていった。


全員ではなかったけれど、目の敵にされて自分の居場所がなくて。友好的に接してきたクラスメイトは私から情報を引き出そうと企む人がほとんどで。


「…召喚された国が無くなってすぐにみんなと離れたんですけど、冒険者を始めたばかりの頃に助けてくれた人がいて、その人達にスキルの事を教えたことがあるんです。そしたら、良い様に利用されてしまって…」


あの時はショックだった。

この世界に来て初めて、何でも相談できる人達に出会えたと思ったのに…。


「辛かったな」

「はい…ぅ……ぁ…」


レオルドさんの零したたった一言に。私の頭にいつもの、安心する温もりと重みを感じて私は耐えられなかった。


そう。辛かったし、悲しかった。


いきなりこの世界に連れて来られて心細かったのに、味方になってくれる人がいなくて。


やっと信頼できる仲間が出来たと思ったら、裏切られて。


何より、寂しかった。

ずっと独りぼっちな気がして…。




でも、この人は。

この人だけは、傍に居てくれるから。


私を、待ってくれるから。


理解しようと、してくれるから。



だから、今度こそ。


「…レオルドさんには、そばに…いて、ほしい、です……!」


レオルドさんを見上げたけれどうまく焦点が合わなくて、ぼやけてしまっている。


けれど、見えなくても。


「傍に居る。……ずっとな」



嗚咽で最後まで聴き取ることは叶わなかったけれど。

低くて心地良い、その穏やかな声で紡がれた私への返答と優しげに撫でるこの掌から教えてくれる。


レオルドさんが微笑んでくれてるに違いないって。




「ありがとうございます、レオルドさん」


やっと落ち着くことが出来たから、改めて感謝を伝えた。


けれど、なぜか本人は不満そうに顔を歪ませている。


「もう、その敬語と敬称やめないか?」

「え?で、でも、レオルドさんの方が年上ですから…」

「それはそうだが。ルナは何歳なんだ?」

「17歳で、あ。でもあと数か月で18歳になります」

「……今日聞いた話の中で、一番の衝撃事実なんだが…」

「え?!これがですか!?」

「そうか…17か…」


片手で目元を覆い項垂れるレオルドさんなのだが、私の年齢のどこに驚いているのだろうか…?

どう考えても固有スキルの方がインパクトは強いと思うんだけど。


「いつまでも余所余所しいのはどうかと思うぞ。だから少しずつ慣れてくれ」

「はい、頑張ります…」

「頑張ります?」


衝撃から立ち直ったであろう彼が手を退けて私の顔を覗き込んできた。


う、否とは言わせないという意思を感じる…。

でも、その表情は笑っているから。


「が、頑張る!」

「ああ、頑張ってくれ」






一方その頃。


「何て言ってるのかしら?!」

「聞こえないわね」

「でも、二人の雰囲気は悪くないわよ!」

「これは成功か?」

「成功してなきゃ、あんな顔しないわよ!」

「よし!宴の準備をするぞ!酒を持ってこい!」

「「「よっしゃー!」」」

「待ちなさいよ!ここはドラスティア国じゃないんだから、大量のお酒なんて用意できないわよ!」

「酒がなければ意味がないではないか!」

「そんなこと私に言われても困るわよ!」


二人がバルコニーから出て来るまで、誤解と口論は加速していたのだった。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます!!!

レオルドは童顔のルナを12歳~13歳くらいだと勘違いしていました。


そしてどうにか投稿することが出来ましたが、日曜日分がぁ…!m(_ _;)m

下にある☆☆☆☆☆をポチッとして★★★★★に変えて頂けると作者が狂喜乱舞ながら必死に執筆します(ノ◕ヮ◕)ノ*.✧└(^ω^)」

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