30.元クラスメイトとの再会
「あれ?鈴木さん?」
奴隷商からの帰りに前から歩いてくるコートを頭から被った人物に声を掛けられた。
私のことを鈴木と呼ぶのは元クラスメイトだけ。
前から歩いてきたからこちらの顔は見られているし、名前も呼ばれてしまったから人違いはない。
クラスメイトの他にも三人の美女美少女が侍っていてこちらを目踏みするように見ていた。
どうしよう、どうしたらいい?
無意識に後退りをしていたらしい。その様子に気が付いたレオルドさんが警戒態勢を取っていた。
「何もしない!何もしないから!そんなに怯えないでよ!」
「あんたは誰だ?」
「僕は晴明って言います!鈴木さんとは、えっと…同郷、…そう!同郷の友人です!」
「友人ならこんな反応しないと思うが?それと、スズキという名前じゃない」
「えっ?!…あ!なるほどそういう事?」
「一人で勝手に納得するな」
そして警戒されたことに青年はフードを取り、焦った表情を浮かべて弁明をしていた。
私は彼の顔を確認できたことで、ホッと胸を撫で下ろした。
彼、安倍晴明君は少年といった感じで、接しやすい見た目とノリの良さからクラスの弄られキャラだった。
彼の持つ固有スキルは【世界地図】。
本人曰く、ゲームのマップのように世界中の地図が詳細に見ることが出来るスキルで、拡大・縮小可能で敵の位置や植生などが一目瞭然なのだそうだ。
【名前】阿部晴明
【種族】異世界人
【レベル】lv55
【固有スキル】世界地図
【スキル】身体強化lv2
自然治癒lv4
水魔術lv1
火魔術lv3
風魔術lv1
土魔術lv6
鑑定lv3
掘削lv2
鉱物粉砕lv1
精錬lv2
直感lv1
【加護】女神レイアの加護
ステータスを鑑定で確認しても、前回と変わらず私よりスキルが弱いし、戦闘向きとは思えないラインナップだった。それにしては少しレベルが高いように思うけれど。
レベルとスキルレベルに相関関係はない。
後衛で戦闘に参加しなくても、強敵に出くわしてそこを助けられても経験値は入るから、おかしくはない。
私をいじめたりしなかった人物で、むしろ庇ってくれていた側だった。それなのに、元クラスメイトと会ったからといってさっきの反応は良くない。
「ごめんなさい。いきなりだったからびっくりしちゃって…」
「いいよいいよ!気にしないで!そんな事より久しぶりの再会なんだからお互いに近況報告でもしない?」
「えっと…どうしましょうか、レオルドさん」
「…いいんじゃないか、少しくらいなら」
「じゃあ決まり!取り敢えずあそこのカフェに入ろ」
「う、うん」
そして晴明君達と一緒にすぐ近くのカフェに入り、紅茶とケーキをそれぞれ注文する。
私と晴明君は店員さんおすすめの紅茶と一番人気のドライフルーツの入ったパウンドケーキを頼んだけど、レオルドさんは紅茶だけだった。
一緒に付いてきた女の人ふたりも紅茶で小さな女の子だけは私達と同じメニューを注文した。
「で、早速なんだけどなんて呼んだらいい?」
「友人なら知ってるだろ」
「まあまあまあまあ!」
「えっと、ルナって呼んでほしい、かな」
「ルナちゃんね!りょーかい!」
晴明君は友好的に会話しようとしてくれてるんだけど、さっきの態度のせいでレオルドさんが警戒したままだ。
本当に申し訳ない…。
「そ、それで阿部…じゃなくて、晴明君はどう、かな?うまくやれてるの?」
「もうね、絶好調だね!今はクリスルレ公国で鉱石を掘ってるんだけど怖いくらいにうまくいってるんだ!スズ…ルナちゃんはどう?」
お互いに苗字で呼んでいたから下の名前呼びは慣れていないからなんだかぎこちないけれど、彼の笑顔を見る限り本当にうまくやれているようだ。レベルの件も何となくの察しが付いた。
少しホッとする気持ちと自信に満ち溢れている様子を不安に思う気持ちが混在している。
彼が話したクリスルレ公国は鉄や銅などの良質な鉱物と高品質な宝石が有名で、特に宝石はブランド化に成功しているため高値で取引されている。貴族の間ではクリスルレ公国産のアクセサリーを所持しているかどうかが一種のステータスとなっているほどだ。
また、良質な鉱石を求めて鍛冶が得意なドワーフが集っているため鉄製の武器や防具、銅製の鍋などの製品も平均して品質が良い。
そんな鉱山大国と彼の持つ固有スキル【世界地図】がうまくかみ合うのはおかしくない話ではある。
しかしいつ、かの国の鉱石が尽きるか分からないうえに食糧自給率もあまり高くない。
しかも、彼は日本にいたころから楽観的に物事を考える節があるから、取り返しのつかない状態になることなくこのままの状態が続けばいいけど…。
いつまでもこの状態が続くと思い込んで散財や贅沢に慣れているとそうなった時に苦労すると思う。
そういう意味では彼のことが少し心配だ。
「…私も何とかやれてるよ。最近やっと一緒に居てくれる人を見つけたから」
「それがこの人?」
「うん、紹介するね。この人はレオルドさん。A級冒険者で、今は私と一緒に旅をしてるの」
「どうも」
「へえ、A級なんだ!…あ!僕の仲間も紹介するね。左からアーシャ、エリス、マリアだよ」
アーシャさんは茶髪緑眼の可愛らしい少女といった感じで、エリスさんは青髪青眼の色気のある大人な女性、マリアさんは赤髪橙眼のツリ目が特徴的な同い年くらいのドワーフの女の子だった。
それぞれ軽く挨拶やお辞儀をしてくれたけど、こちらもレオルドさんと同様警戒しているみたい。
「それに良かったよ~!実は心配してたからさ、ルナちゃんの事」
「そ、その節はお世話になりました…」
「いいんだよ?気にしなくてさ!…でも1つだけ、助言をしてあげよう!」
「な、何ですか?」
「それはね~、ちゃんと仲間に事情を説明しておくことだよ」
「…」
「分かるよ、怖いんでしょ?でもさ、僕みたいにいきなり会う事もあるわけだし、その時に勝手にバラされるの、嫌じゃない?」
そうだ、こうやって突然再会するかもしれないんだ。
今回は察してくれる晴明君だったから良かったものの、次がそうとは限らない。
…もし、誰かからレオルドさんに伝えられたら…。
「…嫌、です…」
「なら今日にでも話すといいよ。意外と自分で思うよりも受け入れてくれるからさ」
「…経験談?」
「そ!経験談!信用できるでしょ?」
「…少しだけ」
「少しかー!」
「でもありがとう。話してみるね」
「どういたしまして~!」
今日の夜、レオルドさんに話してみよう。
今までも彼は私の気持ちを気遣ってくれていたのだからきっと受け入れてくれるはず。
その後私達は届いたケーキや紅茶を食べながらこれからやりたい事や思い出話に花を咲かせた。
日本の話題は悲しくなると思っていたけど懐かしさが勝って盛り上がった。その中で「マヨネーズが食べたい」と言っていたのでお裾分けしてあげると泣いて喜ばれた。
晴明君もクリスルレ公国の道中の護衛としてこの国に来ていることが分かった。ただし私達と違って王城には滞在していないらしく、お祭りを満喫して帰る時にまた護衛依頼を受けるんだそうだ。
正直羨ましい。私も普通にお祭りの屋台巡りしたかった…!
最後に確認したい事がひとつだけ。
「セイクリッド勇王国から誰か来てるの?」
「真が来てるよ」
「あ、やっぱり?」
「まあ、宰相だしね」
予想通りではあるんだけど出来る事なら違う人物が良かった。
三澄君は私をライバル視しているようだったから。
それは【天眼】の固有スキルを彼も所有している事に起因しているだろう。
雇われ侍女をしている手前、このお祭り中に一度は顔を合わせることだろうからこのタイミングで晴明君に再会できたのは幸運だった。
「変に絡まれないといいね?」
「…そういうのをフラグって言うんじゃなかったっけ?」
「どんまい!」
「…」
「まあ何かあったら僕も力になるし、程々に頑張って!」
「…ありがとう。頑張ってみる」
「どういたしまして~」
晴明君は誰に対しても優しいなぁ、本当に。
お陰で三澄君と顔を合わせる覚悟は決まった。フラグも立てられたことだし、ね?
彼が泊まっている宿近くまで雑談をして別れた後、急いで王宮に戻ったのだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
遂に30話まで来ました!これも読んで下さる皆様のお陰です!ありがとうございます<(_ _)>
それなのに、次回の木曜日は投稿できないかもしれません…。
「面白いなぁ!」
「続きが気になる!」
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