28.おいしいご飯をお腹いっぱい食べるのは正義!だけどたくさん作るのは大変!!!
「そなたら、なぜ我らより贅沢な野営をしているのだ…」
「…私達に合わせていたんですね、今まで…」
私達は護衛依頼と指名依頼をレズリー様に押し切られる形で引き受ける代わりに野営を普段通りにする条件を付け足してもらった。
話した当初は首を傾げて不思議がっていたが、今は目の前に広がっている光景を見て唖然としている。
といっても、ベッドが設置されたテントを収納から出しただけだけど。
それでもこの反応は当然だと思う。だって私も初めて彼らの野営の実態を知った時、あまりの不便さにびっくりしたから。
彼らの野営ではお風呂がないことは当たり前で、トイレも囲いがあるだけの簡易的なものだったり、馬車の中に簡易ベッドを作っていたり、食事も冒険者達と大差なかったりと、国のお偉いさんとは思えない環境だった。
それと比較するとお風呂にトイレ、クイーンサイズのふかふかベッドに新鮮野菜も使った出来立ての料理が食べられる私達の野営環境は快適と言わざるを得ないということを知りました。
しかしここでやめる気は更々ない。
話し合いをしたことでレズリー様達に慣れてきて、何か言われても意見を言うくらいなら出来るようになったし、もうこの野営生活に嫌気が差していたので。
「今からご飯作りますね。何が食べたいですか?」
「はあ?!今から飯も作るのか?!」
「もはや何でもありですね…」
「……肉で」
「お肉ですね、分かりました!少し待ってて下さい!」
「肉ぅ?!こんな所でそんなもの焼いたら魔獣が寄ってくるだろうが!!!」
「…分かりました、結界張りますね」
「けっか…はあ?!」
結界魔術で野営地全体を覆ってからいつものように収納から魔道コンロなどを取り出して準備をしていく。
後ろではまだ何かを言っているが、全部聞いて居たら料理が作れないから、レオルドさんに彼らの相手を任せておこう。
最近はずっと携帯食ばかりでガッツリ食べたい気分だから今日はあれを作ろう!
そうと決まったらお肉はこの前レオルドさんが倒したクローイーグルのお肉を使おっと。
「まずはお肉が薄くなるように開いて、塩コショウで味付けして」
メインだけでは足りないから野菜とクローイーグルでスープも同時進行で作っていく。
そしたら卵と水と小麦粉でバッター液を作ってお肉を潜らせた後、パン粉を全体に塗して油で揚げていく。高温で揚げてしまうと中が生焼け状態になってしまうので注意しないといけない。
「こんがりきつね色…これだけでもおいしそう!」
ちゃんと切り分けて火が通っているか確認して、キャベツの千切りも添えて盛り付けていく。
これでも十分おいしいと思うんだけど、個人的にはこれにオーロラソースは欠かせない!異論は認めます!
それでやっと完成するのが、チキンカツなのです!!!
「レオルドさ~ん!出来ましたよ!さあ、熱々のうちに召し上がって下さい!」
冷めないように収納に入れていたのをテーブルに出していく。湯気が上がっているのがなんともおいしそうだ。
「じゃ、いただきます」
「私もいただきます!」
「いやいやいやいや!普通にそなたらだけで食おうとするな!!!」
「え、でも、二人分しかないです」
「それに食事は各自で準備だったよな?」
「うぐぐぐ…。し、しかしだな、…そう!我はそなたらの依頼主だ!食事を準備するのも仕事のうちではないか?!」
そんなこと聞いたことないけど、私は護衛依頼二度目なので知らないだけかもしれない。
でも、冒険者として経験豊富なレオルドさんだったら知ってるよね。
「…そうなんですか?」
「それが依頼内容に含まれていたらな。だが、今回俺らにそんな義務はないな」
「…分けてくれても良いではないか!!少しくらい!!」
「………俺の分から分けてやる」
「よし!!!礼を言うぞ、レオルドよ!!!」
面倒そうな表情をしながらもレズリー様に分けてあげるレオルドさんだけど、少しと言いながらも一枚分くらい持っていかれてしまった。
折角沢山作ったのに、少なくなっちゃった…。
私の分は元々多く作っていないからあんまりあげられないけど、少しでもお腹いっぱい食べてほしい。
「…どうぞです」
「ありがとな」
そして改めて一緒に挨拶をしてご飯を食べ始める。
まずはなにもかけずにそのまま食べてみる。
うん!おいしい!塩コショウだけでもクローイーグルの旨味がすごいから何も付けなくても十分おいしい。
お次はソースをかけて、パクリ。
やっぱり合う!!食べる直前にかけることで衣のサクサク感が残っているし、酸味のあるソースで口の中がさっぱりしていくらでも食べられそう!
隣に視線を送ると、レオルドさんはオーロラソースをこれでもかとカツにかけて爆食していた。
「カツどうですか?気に入りました?」
「ああ、うまいな。…このソースもいいんだが、この前魚のサンドウィッチに入っていたあのソースも合うんじゃないか?」
「あ、タルタルソースですね!今度作るときは両方作って食べ比べでもしましょうか?」
「いいな。楽しみにしておく」
「期待していて下さいね!」
「ああ」
未来の献立が一つ決定したところで再度チキンカツにソースをかけて齧り付く。
やっぱりおいしい…!でも、これにお米があればもっとおいしいんだけどなあ…。
黙々と食べ進めていくと、盗られてしまったのもあって二人そろってすぐに食べ終えた。
なんだか物足りない感じがするし、レオルドさんを見ても満足していない気がする。
「…やっぱり足りないですか?」
「まあ、物足りない感はあるな」
「…追加で何か作ります!」
「いや、携帯食齧ればいいだろ?」
「…充実させるって、言いましたから…」
「…十分充実しているが、ルナが良いなら何か頼む」
「はい!」
レオルドさんの言葉が嬉しくて再度立ち上がって気合を入れて料理を始める。
あんまり時間をかけずに、でも腹持ちがいいものが良い。
となればやっぱりジャガイモでしょう!
皮を剥いたジャガイモをスライスにしてから千切りにする。
スライスを薄くするのがコツだけど料理スキルがあるから難なくクリア!日本にいた時にはスライサーをよく使っていたなぁ。
少ししんみりしつつ、千切りジャガイモに塩を馴染ませてから薄力粉とチーズを混ぜてフライパンで焼いていく。
それだけでシンプルジャガイモガレットの完成!
私には一枚でレオルドさんには五枚。
ソースは無し、もしくはチキンカツの余りオーロラソースかケッチャプでいいよね。
「…出来ました。熱いのでゆっくりどうぞ」
「早いな。いただきます」
「私も、もう一回いただきます」
そのままフォークで切れ目を入れると表面がカリッとしていてチーズが伸びる。思い切ってパクリと口に入れると余りの高温にハフハフと熱を逃がしながら味わう。
カリッモチットロ~が最高においしい!チーズと塩だけの塩味もちょうどいい!
だけどここで味変にケッチャプを少し。…間違いない!!こっちのオーロラソースは…うん、良い!
…横で食べてるレオルドさんもフォークが進んでるみたいで良かった。
「また、そなたらだけで旨そうな物を食っているではないか!!」
…またまたご飯泥棒ことレズリー様が来た。
でも今回は奪わせないんだから!
「これは私達の分です!絶対に!あげませんから!」
「何を言っている!レオルドの皿に沢山あるではないか!」
「さっきもレオルドさんから貰ったんですから遠慮して下さい!」
「いいや!我も食べたいのだ!」
「我が儘言わないで下さい!」
「…そうだぞ!俺らだって旨いもん食いてぇよ!」
そう言ったのはドラスティア国側の護衛冒険者だった。
そしてその言葉に他の冒険者も「「「そうだそうだ!」」」と同意している。
私は第三者の介入にどうしていいか分からなくてレズリー様の方を見遣ると冒険者を睨みつけ、臨戦態勢に入っていた。
「そなたらの目は節穴か!ここに残っているのはあと一枚なのだぞ!つまり食べられるのは我だけだ!」
「あんたはさっき食ってただろうが!それは俺が食うんだよ!」
「何勝手に決めてんだ?!」
「そうだぞ!ここは俺が!」
「いいや!私が!」
「そんなヒョロヒョロに飯なんていらないだろ?!ここは重い盾を常に持ち歩いていたおれに!」
いつの間にか当事者そっちのけで醜い論争が巻き起こっていた。まだ暴力が振るわれてないだけ理性があるというべきか…。
この騒動にレオルドさんは手を止めてしまっているし、セルバイド王国の騎士達や王子様も何事かと注目している。
これどう収拾つけよう…?
「…ルナ、これってまだ作れるのか?」
レオルドさんが問いかけてきた。まだ一枚食べ終わっていないけど、盗られることを諦めたのかな…。
「出来ますよ?もう一枚作りましょうか?」
「…出来ればもっと作れないか?」
「?はい、良いですよ?」
「おーい!!お前ら!!!追加で作ってくれるそうだぞ!ルナが!」
あ、なるほど!他の人達にも振舞ってしまおうってことかな…って、今からどんだけ作る羽目になるの?!
「「「うおっしゃーーーーーー!!!!」って雄叫び上げっちゃってるんですけど?!
「頼むな?」
そんな簡単に言われても…。
でも期待させてしまった手前作らない訳にはいかないし。
この後、私はジャガイモが底を尽きるまで作り続けたのだった。
途中で王子様も参戦してきたのはビックリだった。騎士達に諫められてたし。それでも食べてたけど。
チーズが無くなりそうだったので「ない」って嘘を吐いたのは皆さんには内緒です。ごめんなさい。
でも、代わりにお肉を乗っけたら更に喜ばれたからいいよね?
読んでいただきありがとうございます!
お腹が空くと食べないか、もしくはカップ麺やポテチなどの高カロリーな物食べるかの二択。
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