閑話.追加の解毒ポーション
私は宿屋の部屋の机に器具を置き、解毒ポーションをどんどん作っていた。
今、この街では解毒ポーションがほとんどない。
そして、来月には成体になったポイズンフロッグを討伐して毒袋を取り出し、解毒ポーションを製作する時期がやってくる。
毒袋を裂いたり、手を滑らせたりで毎日何人かは解毒ポーションが必要になるらしい。そのために100本程の解毒ポーションを作っている最中だ。
ぐつぐつと専用の鍋で素材を煮て成分を抽出しているところで、作業を見ているレオルドさんが自身の疑問を口にした。
「…なあ、すごい量の解毒ポーションを作っていたよな?何日も」
「はい。作ってました」
「で、その解毒ポーション全部、薬師ギルドに売ってたよな?」
「はい。売りました。…どうしたんですか?急に」
…何となく言いたいことは分かったけれど、最近この状態のレオルドさんは面白いことが起こると気が付いたので、今はわざとズレた返答をしてみた。
きっといい反応をしてくれるはず…!
「…いや、おかしいだろう?!何だ!!この目の前に広がる解毒ポーションの数は!!」
「何って、レオルドさんが言うように解毒ポーションです」
「違う!そうじゃない!なぜ!これが今!目の前にあるのかを!聞いてるんだ!!」
彼は納得がいかないというように解毒ポーションの瓶を睨みつけている。
いつも冷静な対応をしている人がほんの少しだけ取り乱している様は見ていて楽しい。なんでなんだろうね?
今、彼の目の前には50本以上の解毒ポーションがズラッときれいに並んでいる。常識で考えたらこの数の解毒ポーションがあるのはおかしいことなので、彼の反応が普通ではある。
しかし、相手はルナだ。常識や普通なんて言葉は通じない訳で。
「収納に入れていた素材を使って作っているだけですよ?」
「…だが、収納は万能ではないはずだ。昔、持っている奴が、中は普通に時間が進むと言っていたぞ」
確かに彼の言う通り、現実と同様に時間が進むようになっている。しかしそれは時空魔術がlv7になっていれば時間停止が出来るようになり、問題なくなる。
つまり、昔に会った人は。
「それはスキルレベルが低かったからです。レベルさえ上げれば、中の時間は止められますよ?」
「…ルナは収納のレベルが高い、ということか…?」
「はい!頑張りました!より良い野営環境のために!」
昔のルナは宿に泊まって嫌な経験をしてから野営をして過ごすようになっていたため、睡眠環境や食事内容などを少しでもいい物に変えるための努力を惜しまなかった。
その結果のひとつが高レベルの時空魔術である。
この時のルナは濾す作業に入り集中していて見ていないが、もう何度目かも分からない非常識な発言に対し、レオルドはそっと頭を抱えていた。
ついでに言うと、「もう、これ以上秘密にしてることはないよな…?」と若干の疑心暗鬼になっていたりもした。
「…そうか。それは良かったな…。だが、こんな量の素材なんてどこで手に入れたんだ?」
「…。」
「…どうした?」
急に黙り込んだ私を不思議に思い、再度問いかけてきた。
しかし、私はこれらを討伐したときのことを思い出し、遠い目をしてしまっていた。
…本当に思い出したくもない…。
でも言わないのも、変な誤解を与えてしまいそう。
「……ポイズンフロッグがいることを知らずに、池に入ってしまって…」
「…襲われたのか…」
「はい…」
あの時はいきなり現れたポイズンフロッグが気持ち悪すぎて池を凍り漬けにしてしまった。あの時は本当に池にいた生物を全滅させたと反省したのだが、数日後に行ってみれば普通に生きていて池で泳いでいたのだ。
だから今回は、その時の教訓を生かして〈火焔の聖剣〉と〈閃光〉の2パーティーに指名依頼を出したのだ。止められたが。
そして、私の言葉にあんまり話したい話題ではないと気が付いたのだろう、レオルドさんは気を利かせて話を変えてくれた。
「にしても、すごい量が入るんだな?収納って。どれくらい入るんだ?」
「入る量はその人の魔力量に比例するので、みんな違います。私は…うーん…魔獣1000匹くらいだと思います…多分…」
「…1000匹…そんなにか…」
「はい。多分ですけど…」
「…これも人には言わないようにな?」
「はぁい」
こうしてレオルドさんと話をしながら解毒ポーションを全部で100本製作した。
その後、薬師ギルドに売りに行くとクリスに半泣きで喜ばれた。
材料がないため作ることも出来ないのに、今もちょこちょこ毒状態になった人が薬師ギルドを訪れていて、本当に解毒ポーションの底が尽いていたそうだ。
そして、このことが冒険者ギルドにも届いてメリンダさんにとても感謝され、褒めてもらった。
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