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22.報い

知らない天井だ…。


なんてことはなく、自分たちが泊まっている部屋のベッドの上で寝ていただけだった。


もぞもぞとベッドから起き上がり、眠る前のことを思い出そうとする。


…魔獣を倒して、回収を手伝って、それから…。


徐々に記憶を思い出し、慌てて部屋を見渡し、気が付いた。


「…レオルドさんが、いない…?!」


この部屋にいない事実にベッドから飛び降りて、走って扉の方へ向かう。


ドアノブに手を掛けた瞬間、こちら側に扉が開き、鼻を強打した。余りの衝撃に数歩後退り、鼻を抑えて蹲ってしまう。


「ルナ?!大丈夫か!」


顔を上げると、しゃがんで心配そうにこちらを覗き込むレオルドさんがいた。


鼻は痛いが、その姿を確認できたのでホッと一安心できたのだった。



鼻は少し赤くなっているらしいが、大丈夫だと伝えると、「すまない…」と申し訳なさそうにしているレオルドさんを宥め、ベッドに戻った。


あの後どうなったのかを知りたかったのだが、メリンダさんに報告してすぐに私を連れて宿に戻ってきたため知らないそうだ。


しかも、1日近く寝てしまっていたようで、とても心配させてしまった。それが少し申し訳ない。



討伐の服装のままでいたので、それが気持ちが悪く感じて汗を流して情報収集のために冒険者ギルドへ向かうと、いきなりギルドマスターのいる執務室に案内されてしまった。ソファに座るとすぐに3人分の紅茶が出され、目の前に置かれた自身の分に口をつける。



この紅茶、好きかも…!



気持ちが沈んでいたけど、おいしい紅茶に少し気分が良くなる。そして、カップをソーサーに置き、私の前のソファに座るメリンダさんに視線を合わせる。


「忙しいのにわざわざすまないな。昨日あの後どうなったか教えてくれ」

「いいのよ。こちらこそごめんなさいね。あんなに魔力を使っていたのに、解毒を頼んでしまって。残しておいた解毒ポーションも使って全員治してくれたんでしょう?冒険者ギルドマスターとしてお礼を言います。本当にありがとう。」

「い、いえ。あれは、レオルドさんの分なので、お礼はレオルドさんに、お願いします」


あれは私に何かあってレオルドさんを解毒できない時用にとっておいたものだった。それを使う判断をしたのは彼自身だから。


「それでもよ。レオルドも、ありがとう」

「礼を言われても困るんだが、一応受け取っておく」

「うふふ。そうして。それで昨日なのだけれど、集めた魔獣の死体を一か所に集めて焼いて、陸にいるポイズンフロッグの幼体を出来るだけ沼に戻して解散したの。あなたたちのおかげで後処理もあんまり大変じゃなかったし、問題も解決できたし」

「そうか」

「よかった…」


いきなり私達が抜けてしまったことで誰かに迷惑をかけていないようで安心した。


「で~も!魔獣をいきなり全滅なんてダメよ?ここのポイズンフロッグはこの国で作られている解毒薬の半分以上に使われているんだから!いなくなっちゃったら困る人が沢山いるのよ?分かった?」

「はい…すみませんでした…」

「分かればいいのよ。…それで薬師ギルドの件なのだけれど。少し待ってもらえるかしら」

「何かあったのか」

「それがね。一般市民にも被害が出始めてから、市民を優先して冒険者を治療しないようにしていたみたいなの。それも含めて抗議しようと思ってねぇ…」

「…やっぱり…」

「やっぱりって、どういうことかしら、ルナちゃん?」


昨日薬師ギルド長に言われた言葉を思い出すだけでも腹が立つ。それでも、昨日のように衝動で動いてしまわないように唇を噛み、拳を握って深呼吸をする。


隣に座るレオルドも思い出したのだろう、眉間に皺が寄り、顔を険しくしている。


「…冒険者は、命を懸けて守るのが本望だ、って言ってた…!」

「そんなことを?!…それで昨日あんなに怒っていたのね…」

「…はい。ごめんなさい……」

「責めないでやってくれ。俺は今でもあれには腸が煮えくり返っているし、解毒ポーションを売らないようにずっと言っていたしな」

「いいえ。当然の怒りだわ。守ってもらう分際で、何を偉そうにしているのかしら…?さっさとあれをあの地位から引きずり下ろしましょう」

「…いいのか?」

「いいのよ。ちゃんとした判断ができない指導者なんて居ても迷惑なだけだもの」

「…お願いします…!」

「頼むぞ」

「任せなさい」


殺気の籠った眼をした頼もしいメリンダさんに薬師ギルドのことは完全に任せることにして宿に戻ったのだった。





「お久しぶりね。薬師ギルド長。今日は話があって来たの」

「ええ、お久しぶりでございます。それで一体何のお話でしょうか?」


目の前に座る男はいつ見ても人の癪に障る態度をしていて、本当にイライラするのよね。でも、ここで平常心を失っては相手の思うつぼだわ。それに、なぜかポイズンフロッグのこともまだ知らないみたいね。


そしていつもしているようにゆっくりと息を吐き、小さく吸って気合を入れる。


「まず、ポイズンフロッグの幼体をほとんど討伐したわ。これで被害はなくなるでしょう。」

「それは素晴らしい!これでようやく安心出来ますね。」


…理解していないわね、これは。

理解できるようにしっかりと現実を教えてやることにした。


「ええ。来期に成体になるポイズンフロッグは前期の7割減、と言ったところかしら」

「?!どういうことですか?!この街だけでなく、この国の大事な資源であり、解毒ポーションの素材なのですよ?!それを冒険者は何をしているのですか?!」

「黙りなさい!!…あなた、可愛らしい女の子と獣人の男性に解毒ポーションを全部売るように言ったのよね?」

「ええ。それがこの街のためですから」


この男は微塵も自分が悪いと思ってないのね。本当に救いがないわ。

これの物言いに心の底から呆れてしまう。


しかし、この男のペースに合わせると話が進まないので、勝手に話を進めていく。


「その2人、A級冒険者とC級冒険者なのよ?つまりあなたは、高位冒険者に喧嘩を売ったの」

「?!?!し、しかし!!!」

「ああ、何だったかしら?薬師は人のためにポーションを差し出すのが本望で?冒険者は人のために命を懸けるのが本望なのよね?」

「そ、それが何でしょう?当然のことでしょう?!」

「そう。だから彼らは、ポイズンフロッグを討伐したのよ?命を懸けてね」

「限度というものがあるでしょう?!」

「限度?それは解毒ポーションを必要とする冒険者に解毒ポーションを渡さないことを言うのかしら?」

「そ、それは!戦う力も強さもない一般市民を優先しただけで!!」


本当に何も考えずに行動していたのね、呆れちゃうわ。


「あなたのやったことは一般市民を守る冒険者を減らして悪戯に市民を危険に曝しただけだわ」

「私は!そんなことは、決して…!」

「事実を言ったまでよ。こんなことも分からないあなたに、薬師ギルドを任せられないわ」

「私をギルド長から引きずり下ろすつもりですか?!…いえ、私は薬師ギルド長なのです!今後しばらく!冒険者へのポーションの出荷を停止致します!これで困るのはあなたたち冒険者でしょう?!」


自分の考えが正しいとしか思っていないのは分かっていたが、こんなに屑だったとは。どうしてこんなのが薬師ギルドの長を任されていたのか、本当に理解できない。


こんなのとはこれ以上会話を続けたくないから、さっさと切り上げましょう。


「自分の言ったことをもう忘れたのかしら。あなたが喧嘩を売った女の子、回復魔術が使えるんですって。だから、安心しなさって?それに代官に今回のことをもう報告してあるの。だから近い内に領主様に話も行くだろうし、どちらにせよ、あなたは終わりね」

「ふざけるなあああああ!!!!!」



錯乱して喚き散らしてる用済みは放っておいて、執務室を出る。


やっと一つ仕事が片付いたわ。だけど、まだしなければいけない仕事が沢山残っている。

その事に少しうんざりしながらも憂いがひとつ消えた事に足取りを軽くし、冒険者ギルドまでの帰路についた。

読んでいただきありがとうございます!


「面白いなぁ」

「続きが見たいなぁ」

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