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20.激怒

「A級冒険者レオルドとC級冒険者ルナです!ギルドマスターに話があります!そして、〈火焔の聖剣〉と〈閃光〉の両パーティーに指名依頼を出します!」

「?!かしこまりました!少々お待ちください!」


冒険者ギルドに到着してすぐ、よく通る大きな声で要件を告げ、いつもより騒々しいギルド内を受付に向かって堂々と歩く。すると、返事をした受付嬢がギルドマスターを呼ぶために走っていった。


この大変な状況下で現れたA級冒険者にギルド内は静まり返っていく。


誰もが自分たちに注目しているのが分かる。


いつものルナなら、腰が引けてレオルドの後ろに隠れていることだろう。


しかし、今はそんなことは気にならない。むしろ早くギルドマスターを連れて戻ってこないことにイライラしする。


この場にいる全員がギルドマスターの登場を待っていると、大柄な女性1人が武装した格好で現れた。


「ギルドマスターのメリンダよ。あなたたちが私を呼んだのかしら?悪いのだけれど、今は色々と立て込んでいるから手短にお願いできる?」

「では。薬師ギルドには約100人分の解毒ポーションしか残っていません。ですので、回復魔術が使える私が解毒を行います。それから、ポイズンフロッグを全滅させるために先程の2パーティーに指名依頼を出して下さい」

「…正気?」

「要件は伝えました。私は現場に向かいますので、あとはお願いします」

「ちょ、ちょっと?!」

「レオルドさん、行きますよ」

「…ああ」


伝えなければならないことは全部言えたので、何かを呟いているギルドマスターを無視して踵を返し、沼へ向かう。


沼へ向かっている間レオルドは一言も発することはしなかった。



沼の近くの陸地には既に数え切れないほどの全長2mを超える足の生えた大きなオタマジャクシ、ポイズンフロッグの幼体が飛び跳ねていた。


その場ですでに戦いを繰り広げている冒険者たちは、飛び跳ねる上に数の多すぎるそれらに苦戦し、毒を含んだ粘液で身体を汚していた。沼から離れた陸地には毒にやられてか、倒れている人も少なくない。


「C級冒険者のルナです!回復魔術が使えるので、毒にやられている人は来てください!来れないようであれば、誰かに運んでもらってください!」


この場にいる全員に届くようにと声を張り上げる。すると、声の届いた人たちの中で動ける人たちが少しずつ自分に近づいてくる。


近づいて来てくれる彼らに自分からも近づき、無詠唱で解毒して行く。解毒し、顔色が戻った者たちが前線へと戻っていき、それを見てルナに気が付いた人たちが解毒を求め、集まってくる。


人数が多く、ルナ一人ではうまく捌けなかっただろうが、そこはレオルドがスムーズに解毒が進むように、彼らを整列してくれた。おかげで、そんなに時間がかかることもなく、ほぼ全員の解毒が完了した。



そうなったら、やることは決まっている。



冒険者のいない沼の近くに行きながら、右手に魔力を込めていく。


自分の目の前に飛んで来るものは前に突き出した左手で氷の槍を発生させて串刺しにしながら、辺り一帯が凍り付くようなイメージを固めていく。それに合わせて右手に集まる魔力が膨らんでいき、破裂する寸前に右手も前へ突き出してキーワードと共に一気に放出する。




「凍れ」




魔術の発動とともにルナから約20m先までの沼がポイズンフロッグ共々凍りついて動かなくなった。



この現象に誰も彼もが驚愕する。彼女を回復術師と皆が思い込んでいたのだから。


その周りの感情など知る由もないルナは凍っていることを確認し、次の凍っていない場所を目指す。



そして右手に魔力を込めてイメージを固め、左手で魔術を発動し、自身を守る。



「凍れ」



唇から紡がれた言葉とともに先程と全く同様の現象を起こさせる。


確認が済んだと同時にまた歩き出す。凍っていない場所へ。




全滅させる




その言葉だけが思考を支配していた。



誰もが近づきたくないかのようにルナを避ける。怒りに我を忘れている彼女の瞳には彼らの行動が、表情が、映らない。





しかし。







「やめろ」




そんな彼女を戻す者がいた。


彼だけはルナから離れることなく、ずっと付き添っていたのだ。



自身の右腕を掴まれる感覚に少しずつ意識を取り戻していく。そして、レオルドの顔を認識する。


それでも心の中にある、燃え上がるような怒りは消えてくれない。


「やめろ」

「…どうしてですか」

「これ以上はもう、必要ない」

「どうしてですか!?」

「本当に全滅させたら、生態系が崩壊する。わかってるだろ?」

「で、でも!」

「ルナ」

「だってぇ…!」


心の中がグチャグチャになっていく。


感情が抑えられず、目から涙が零れ落ちる。それを俯いて左手背で拭うが、溢れてなくならない。


そして頭に何か、温かいものが乗った重みを感じる。


「大丈夫だ」

「うぅ…ひう……んぐっ………!」

「もう、大丈夫だからな」

「……は、いぃ…」

読んでいただきありがとうございます!

本日はあと3話投稿する予定です!

ルナは元凶を倒して問題解決と怒りを発散するだけでなく、全滅させることによって薬師ギルドを窮地に陥れようとしていました。それを止められてしまって怒りの矛先がなくなり、泣いてしまった感じです。


2025.7.21

誤字脱字報告ありがとうございます。


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