19.薬師ギルド長
「一体どうなっているんだ!状況を説明してくれ!」
怒った状態で薬師ギルドに乗り込んだレオルドさんはクリスに話をつけさせ、応接室に通させた。
そして自分たちの目の前には30代前後の偉そうな態度の薬師ギルド長と身を縮こまらせて項垂れたクリスさんが座っている。
レオルドさんの怒声を聞いても態度を変えないギルド長がゆっくりと口を開く。
「少し落ち着いてください。私はこのアリドスの街の薬師ギルド長を任されております、ディーンリッヒと申します。以後お見知りおきを。」
「いいから本題に入ってくれ!」
「承知致しました。5日前からですが、増えすぎてしまったポイズンフロッグが沼から陸に上がってきておりまして、一般市民の方々にも被害が出始めているのが現状です。今までは冒険者の方々の分だけでしたから、解毒ポーションも何とか持っていたのですが…。」
「で、在庫は?」
「ほとんど残っておりません。」
「冒険者ギルドには?」
「前々から在庫については話していましたが、現状はまだお伝え出来ていません。」
「…薬師ギルドはどうする気だ?」
「…持っている解毒ポーションを全て売って下さい。」
「はぁ…?!」
ディーンリッヒの上から目線すぎる言葉にレオルドさんは目を見開き、怒りを隠せない。
プツッ。
そんな音が、聞こえた気がした。
「まだ持っているのでしょう?出して下さい」
「ふざけるな!なぜ俺たちが持つものを全部差し出さないといけない?!」
「この街のためです。薬師として誰かのためになれるのは本望でしょう?」
「そんな訳ないだろ?!」
「あなたは冒険者なのでしょう?なら分かるのではないですか?誰かのために命を懸け、そのためなら死ぬのも厭わないものではないんですか?」
「んな訳あるか!!!」
プツンッ
「レオルドさん」
「なんだ?!」
「薬師ギルド長。1本を残して他は全部売ります。」
「ルナ?!」
「おお!ありがとうございます。本当はその1本も売って欲しかったのですが、仕方ありませんね。では…。」
そうして反対するレオルドさんを無視して1本を残し、解毒ポーションを全部売って薬師ギルドを後にしたのだった。
大通りの街並みが見えていないかのようにレオルドさんの前を足早に歩いていく。
「おい」
「…」
「おい!」
「…」
「どういうつもりだ?!何を考えている?!」
レオルドさんに肩を掴まれ、振り向かされる。そうしてやっと歩みを止め、彼の顔を見上げる。
彼は再度怒鳴るような声で自分に問いかける。
「あんな言い方されたのに、なんで解毒ポーションを売った?!」
「…」
「何でか聞いてるんだ!!答えろ!!!」
「…レオルドさん。これでも私、怒っているんです」
「はあ?だから何だ!」
「なので黙って付いて来てください」
「はあ?!」
「付いて来てください」
「あ、ああ…」
そして再度前を向き、歩き出す。彼が後ろを困惑しながら付いて来ているのがわかる。
自分の今までにない物言いに、表情に、きっと彼は驚いているだろう。
しかし。我慢ならなかった。
今、この街で数少ない解毒ポーションを全部売れ…?
誰かのために命を懸けるのを厭わないものだ…?
ふざけるな。
ルナも、キレていた。
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