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18.不足した解毒ポーション

「すいません!今忙しくて!ちょっと待ってて下さい!」

「あ、はい…」


今自分たちは溜まったポーションを売るために薬師ギルドに来ている。


しかし、なぜか妙にギルド員が慌しく動き回っていた。しばらく待ってようやく呼ばれることができた。


「お待たせしてすみません!どのようなご用件ですか?」

「ポ、ポーションを売りに来ました…」

「解毒ポーションだったりしますか?!?!」

「?!一応あります!…けどほとんどは下級ポーションです…!」

「それでも!ありがとうございます!」


ギルド員の圧に押され、売る予定のなかった解毒ポーションも30本ほど売ると大喜びされ、ギルド員・クリスに盛大に見送られて薬師ギルドを出た。



薬師ギルドは基本的にポーションを備蓄しているものだ。


下級ポーションから上級ポーション、貴重な魔力ポーションに至るまで、特級ポーション以外なら何もかもが十分な量置いてあると言っていい。それは解毒ポーションも例外ではないはずだ。


つまりこれは、予想外の何かが起こっているということになる。


「何だったんでしょうか?高く売れたからいいんですけど…」

「さあな。毒持ちの魔獣でも発生したんじゃないか?冒険者ギルドで聞けばいいだろ」

「そう、ですね…」

「収納に魔獣が溜まってるんだから仕方ないだろ?さっさと売って宿に戻ればいい」

「はい…」



冒険者ギルドも薬師ギルド程とは言わないが、騒々しい様子だった。


しかし、それほど待たずに魔獣の売却対応をしてもらうことができた。


「はい。鑑定の結果、クローイーグル1羽分の鉤爪に羽毛、オークの肉が5体分にファングボアの肉と毛皮が5体分、フォレストウルフ24体分の毛皮と肉、ファングラビットの毛皮と肉が30体分で、ここから解体費用2割を抜いた合計が740万リグでございます。」

「はい…!ありがとうございました…!」

「この街で何かあったのか?」

「それはですね、街のすぐ近くの沼にポイズンフロッグというD級魔獣の幼体が大量発生しているんです。この魔獣は成体になると体内に毒袋を生成し、それが解毒ポーションの材料になるのですが、幼体では毒袋がなく、体表に纏う粘液が毒になるので、倒しづらいうえに素材としても価値がないのです。」

「なるほど。それで薬師ギルドがあんなに慌しかったのか」

「そうですね。冒険者ギルドではポイズンフロッグ幼体の討伐クエストを出していますから、解毒ポーションが必要になる人が連日のように薬師ギルドに駆け込んでいるので、在庫が少ないのでしょう。…いつ、在庫が尽きるか…。できれば、買い占めだけはやめていただけると…。」

「しないから、安心してくれ」

「ありがとうございます。」


ほんの少し疲れた顔に笑顔を浮かべた受付嬢に挨拶を言って、冒険者ギルドを出た。



宿屋を目指して大通りを歩きながら、隣を歩く彼に先程の話題を振る。


「どこも大変ですね」

「そうだなぁ」

「…レオルドさんは討伐に参加しないんですか?」

「俺と毒持ちは相性が悪い。他の冒険者と同じように薬師ギルドに駆け込むのがオチだ」

「あ、それもそうですね」


あっさりと納得したことに不満気なレオルドさんと話しながら宿に戻った。夜には念のため解毒ポーションを追加で製作してから就寝したのだった。



そして、次の日の朝、宿の食堂で朝食を摂っていると、いきなりドタドタと中に入ってくる人がいた。


「すいません!昨日解毒ポーションを薬師ギルドで売ってくれた人はいませんか?!」


…正直、名乗り出たくない。

そう思ってしまっても仕方がないと思う。


実際に他の人は迷惑そうな顔を薬師ギルド員・クリスに向けている。


「迷惑だ、静かにしろ。食事が終わったら話を聞いてやる」

「あ…。すいませんでした…。お願いします…」


レオルドさんがそう言い放つと、ようやく周りが見えたであろう彼は身体を小さくして俯いたまま、黙って食堂の隅にある席に移動して自分たちを待っていた。



「で、何なんだ?昨日、解毒ポーションを結構な量売っただろう?」

「それが…昨日売ってもらった分も、もう半分以上ないんです…」

「…もう在庫がないのか…」

「あ、い、いえ!在庫がないわけではないのですが…。なぜか昨日、あれから患者がいきなり増えたんです…。それで、焦ってしまって…」

「なるほどな」

「はい…すいませんでした。…もし、まだお持ちでしたら、解毒ポーションを売っていただけませんか…?」

「うーん…。ルナ」

「は、はい!!」


呼ばれると思っていなかったから、声が裏返ってしまった。少し恥ずかしい…。


レオルドさんが目を細めて呆れた表情を自分に向けながらも話を続けた。


「昨日、解毒ポーション追加で作ってたよな?売っていいか?」

「はい!どうぞ!」

「だ、そうだ。…ポーションはここで受け渡しでいいのか?」

「あ、ありがとうございます…!出来れば、薬師ギルドまで持ってきていただけると…!」

「わかった。じゃあ、今から行くぞ」

「「は、はい!」」



そうしてこの日も薬師ギルドにポーションを売った。そして夜にまた解毒ポーションの追加を製作した。



次の日も。


「すいません!レオルドさんいますか?!」



そしてまた次の日も。


「解毒ポーションまだありますか?!」



そしてそのまた次の日も。


「解毒ポーション売って下さい!!!」



……………。



そして…。



「いい加減にしてくれ!!!」



キレた。レオルドさんが。



「毎日、毎日!解毒ポーションがないのはわかるが、俺たちには俺たちの予定がある!宿屋にも迷惑だ!!」

「す、すいませんでした!!!」

「もういい!直接薬師ギルドに抗議しに行く!」


そう言って自分たちは宿からクリスさんを引きずるようにして薬師ギルドに向かったのだった。

読んでいただきありがとうございます!


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