17.商業都市・アリドス
「俺に格闘術の稽古をつけてくれ!」
「格闘術を、教えて、下さい!」
「と言われてもなぁ…」
なぜ、こんな状況になっているかというと、見張り番が終わり、皆が起きて始めていた時だった。
鷲に似た魔獣であるB級のクローイーグルが現れ、商隊を襲ってきた。しかし、急降下してきたタイミングを狙ってレオルドさんが拳一撃で仕留めてしまったのだ。
それを騒ぎに飛び起きて一部始終を目撃したセバンさんとダリさんがこうして彼に教えを乞うているというわけだ。
自分的には人に教えることの難しさをぜひとも知ってほしいと思う。なので。
「いいんじゃないですか?空いてる時間にだったら」
「だがなぁ」
「頼む!」
「お願い!します!」
「何がダメなんですか?」
こういう言い方を私がすれば否とは言えまい!ものすっごく卑怯な手ではあるが、仕方のないことである。
レオルドさんも渋々と頷いた。
「…わかった。ただし、本当に空いている時だけだ」
「本当か!感謝する!」
「ありがとう、です!」
少しはひとの苦労を理解するといい!
こうして、レオルドさんは護衛依頼をしながら2人に稽古をつけることになった。
しかし、私の予想に反して、彼は教えるのが丁寧で的確だったうえに頼まれると必ず稽古を付けていた。
しかも、2人は休憩時間の度に稽古を頼んでいたし、野営時の見張り番でも彼を指名していた。
そして私はバンダルさんに指名された。そのことにみんな驚き、理由を説明して彼が魔術を披露すると、なぜか魔術師のフラーラさんと弓術士のセルジオさんにも指名されてしまった。
つまり、レオルドさんと別々で見張りをしなければならなかった。
それはもう大変だった。
うまく伝えられないし、フォローしてくれる人もいないし。
レオルドさんに仕返しをしようとした過去の自分を恨み、彼の有難みを再確認した夜だった。
そして結果から言うと、セルジオとフラーラは伸び悩んでいた風魔術と水魔術がレベルアップし、バンダルは風魔術も扱えるようになったのだった。
護衛依頼をしながら、魔術講義や格闘稽古をしていた私たちは、リズドスの街を出てから6日目の昼に目的の街、商業都市・アリドスに到着したのだった。
商業都市・アリドスはその名の通り、商業が盛んである。
他国から持ち込まれる様々な珍しい商品を見ることができるが、主に、隣国から輸入しているダンジョン産の魔獣素材や薬草、武器、防具などが取引されている。
ダンジョンというのは魔獣が闊歩する洞窟であり、未だに謎が多く、共通してわかっていることは魔獣が湧き続ける、宝箱がある、ということだけで、それが何で何のためにあるのかは、誰も知らない代物である。
そして、この街のすぐ近くには沼があり、そこに住み着く魔獣から獲れる素材が解毒薬を作る材料になる。これもこの街の一つの特産となって取引されている。
街に入り、商人から依頼完了の依頼表を受け取る。予定より早く着いたからだろう、いい評価を貰えた。
そしてそれを持って護衛メンバー全員で冒険者ギルドに向かい、受付で達成報告を行って、報酬を受け取る。
「お疲れさま!みんなのおかげで無事に依頼を終えることができた。よかったら皆で宿をとった後にでも依頼達成を祝して飲まないか?」
パルレが仕切って、馬小屋のある良い宿屋やおいしいと評判の食堂へ案内してくれた。
そして。
「みんな!護衛依頼お疲れ様!依頼達成とこの出会いを祝して!乾杯!」
「「「「「かんぱーい!!!」」」」」
それぞれの手に飲み物を持って、木製のジョッキを上に突き上げ、打ち鳴らす。
護衛依頼を共に熟したメンバーとはとても親しくなることができた。
自身が受けた初めての護衛依頼は大成功を収めたのだった。
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