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2.道のり

冒険者ギルドを出ると、温かい日差しとともに冷たい風が吹き抜けていった。



ギルドマスターの執務室に呼ばれていたからか、はたまたその人物が少女と言って差し支えない見た目をしているからか、周りの冒険者がちらちらとルナを見ながら小声で話をしている。


ルナはここでは珍しい黒髪黒目をしており、服装も冒険者業をするときとは違う生成りのベージュのシャツと茶色い膝下丈のスカートに同色のマントと編み上げブーツという冒険者とは思えないものを着ている。そのことも注目を集める原因となっていた。


その視線が耐え難くて顔を隠すようにマントのフードを深く被り、先程説明された奴隷商に向けて冒険者ギルドを足早に立ち去った。



ある程度進むと、見定めるような居心地の悪い視線がなくなったため小さく息を吐き、先程よりもゆっくりとした速度で奴隷商への道のりを歩き始めた。


露店の呼び込む大きな声や値段交渉をする様子、小さな子供数人が笑い合いながら横を通り、荷馬車が走り抜けていく、ほんの少し前に魔獣に襲われたとは思えないその情景は落ち込んでいるルナ自身が異物であると思わせるのに十分だった。





ルナ改め、鈴木三日月は転移者である。

高校に入学してすぐクラスメイト31人とともにこの世界、レイザインに召喚され、その国の王女から魔王を倒してほしいと依頼された。


はじめこそみんな驚いて警戒していたが、私を含めたほとんどのクラスメイトは最近流行りの異世界転移だと、異世界転移者は皆往々にしてレアで強力なスキルを所持していると認識すると次第にこの状況を受け入れ始め、なかには喜びを隠せない者もいた程だった。


しかしながら、ほとんどのメンバーにとってこの世界の、召喚された国の常識が、現代日本で暮らしていたために理解できず、受け入れられなかった。


その結果、歴代の勇者や聖女、賢者と語られている者たちと同じスキルを持ち、人々から支持を集めていたメンバーが主体となって、転移してたった半年で国を乗っ取る事態となった。


国内では民衆の支持があり、そこまで混乱はなかったが、国外、特に近隣諸国には大きな衝撃を与えた。何せ、今後の情勢は召喚を行ったこの国に傾くと思われていたのが、国がなくなり、新国家が興されたのだから。


そして、国家簒奪は私たちにも大きな影響を及ぼし、クラスは別々に行動するようになった。


新国家の国王に、その側近や能力を買われ要職に就く者、政を為すのに適さないスキルを持ち、国を出る勇気もなく、街で平民として暮らす者、この事態が気に食わず国を出る者、未だにこの現状を受け入れられず、引きこもっている者…。


私は、このどれにも当てはまらない。

このクラスメンバーと馴染めず、目に留まるスキルも持ち合わせておらず、居心地の悪さに思わず国をでた者、である。


街を出る際にこの世界、レイザインに馴染めるように、故郷のことを思い出さないように、私は自身を“ルナ”と名乗るようになった。


街を出たはいいが、この世界の人々の強かさや気の強さ、狡猾さにビビりで気の弱い私は結局馴染むことができなかった。


約1年半の間、冒険者をしているが、パーティーを組めば報酬を騙し取られ、露店では多額に請求され、宿では物を盗まれそうになり、と挙げればきりがない。


そのため、食材を買い込み、町の外でスキルを駆使して過ごすようになった。


そして、このリズドスの街を魔獣から守ってもこのことを知っているものは少なく、また、気が弱そうな私はいいカモだったのだろう、扱いが大きく変わることはなかった。


この事実をいつものことと割り切り、外壁近くで寝泊まりしていたところを門兵の人に声を掛けられ、あれよあれよと復興作業をすることとなり、作業が終われば周りと同じように炊き出しに向かい、暗くなれば仮設住宅で子供たちとともに寝る。


そんな生活を数日間もしていると作業に魔法を使っていたこともあり、顔見知りの冒険者に気づいてもらうことができたのだった。


冒険者ギルドに向かう途中、その冒険者に作業をしていた理由を説明すると「うちにパーティーに来ないか。」と勧誘され、ロギレンスには奴隷を薦められたのだった。


そんなことを思い出しながら進んでいたからか、もうすぐ奴隷商に着くところまで来てしまっていた。


奴隷のほうが騙せないはずだから、大丈夫…、大丈夫…。


そう自身に言い聞かせながらフードを外してから店の中へと歩を進めた。


読んでいただきありがとうございます!


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