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13.固有スキルと決断

「はあっ!!」


突進を避けたレオルドさんの左拳から放たれた攻撃を避けられずに魔獣が吹っ飛ばされた。


この光景をもう何度も繰り広げている彼は楽しそうな笑みを浮かべて、吹っ飛ばした魔獣を魔術鞄に収納しては先に進んでいる。機嫌が相当いいのだろう、尻尾がゆらゆらと揺れている。



私たちは今、リズドスの街から2時間ほど歩いた森の中にいる。


自分たちが受けたクエストはこの森に生息する鹿の額に角を生やしたホーンディアーというC級の魔獣である。このホーンディアーは土魔術を使用して、ストーンバレット、石の礫を放ってくるのが厄介な魔獣である。


ここで言うクエストは常時ギルドから出されているもののことで、依頼は一時的に依頼主から出されたものである。当然失敗したときには違約金が発生するが、多く請求されるのはもちろん依頼である。


先程から倒されているのはファングボアというタスクボアを一回り大きくして牙を2倍にしたような魔獣だ。


彼のやったように突進さえ避けられれば、簡単に討伐可能なのだが、一度も右拳で攻撃を繰り出していない。まだ本調子ではないのだろう。


「…レオルドさん。手袋の調子どうですか?」

「ああ。すごくいい。前よりも威力が増した感じだ」

「それはよかったです!…ダガーもせっかくなので使ってみてくれませんか?」

「ああ、わかった」


そうして、私の提案通りにダガーを右手に構え、現れたファングボアに切りかかる。アドバイスをすれば素直に意見を聞いて傷の負ったファングボアに止めを刺す。


このダガーはサブウェポン兼右腕訓練用にと思って買ったもので、彼もそれを理解してくれているようだ。



そしてもう一つの目的が短剣術スキルを獲得してもらうことである。



これにはルナが持つ固有スキルが関係している。


まず、《天眼》。


スキル説明欄には『全ての深淵を知ることができる』とある。


通常だと、対象の所持スキルや家族構成、はたまた過去に至るまでを知る事が出来るが、欠点として頭がかち割られるような酷い頭痛に見舞われる。

そのため普段は簡易的な負担の少ない鑑定を行うようにしている。



そして驚くべき所は【天眼】が真価を発揮するのはこれではない事だ。


具体的な使い方は他者がスキルを使用しているところを【天眼】の最大出力で鑑定し、観察する事でその時の筋肉の動きや呼吸などの状態を正確に理解することができる。

それを自身の身体に落とし込み、動かすことで簡単にスキルを獲得、レベルアップが可能なのだ。


しかも、今まで鑑定したものの情報は全て、天眼に記録されたままになっているのである。例えば、自身が今まで見てきた中で一番短剣術のスキルレベルが高かった者はlv8で、その情報が今もルナの天眼に劣化することなく保存されたままなのだ。


しかし、何事にも才能というものがある。


自身は運動が得意ではないため、身体を使うようなスキルは習得するのには時間がかかるし、時にはいくらやっても習得しないし、成長できない。つまり、ルナ本人が短剣術lv8になることはできないということだ。


そしてもう一つの固有スキル、【贈与(ギフト)】。


これの説明欄には『贈る』とだけ記載がある。

色々と検証した結果の真価として、声を媒体としてスキルの説明などを行うことで、他者にスキルを習得させることができたのだ。

スキルレベルの成長速度を上げることもできるが、これは才能によって左右し、成長率が10倍や20倍に跳ね上がることもあれば、手応えが全く感じられないこともある。


しかし、【天眼】と【贈与】を同時に使用することで、どんなに才能のない人でも短時間で、簡単に、一流と呼ばれるスキルlv5にまで成長させることが可能なのである。


やろうと思えば、一騎当千の軍隊を作り出すことが可能だ。やる気はないが。



そして、この固有スキルを誰かに伝える気はない。

もちろんレオルドさんにも。余りにも大きすぎる力は人を変えてしまうから。



自身の持つ固有スキルの危険性を再確認しながらも、必要な事と割り切ってレオルドさんに使用する。


今回、短剣術を習得するのはすでに剣術lv2を持つレオルドさんで、手元には短剣術lv8の情報がある。つまり。


「ん?何かコツを掴んだ気がする…」


鑑定すると、たった1回の戦闘で短剣術スキルを習得していた。


更に短剣術について話をしながら魔獣を倒して進んでいると、今回のお目当て、ホーンディアーがいた。


「ホーンディアーのストーンバレットは私が風魔術でどうにかするので、レオルドさんは、接近して首を切り落としてください」

「任せとけ」


こちらにはまだ気が付いていないホーンディアーに接近するためにレオルドさんが走り出す。

すると、自分たちに気が付いたホーンディアーが石礫を放ってきたが、それらが彼に当たらないように風魔術で風の障壁を発現させ、打ち払う。

その間にすぐ傍まで到達した彼が前足から繰り出された足蹴を避けながらも、ダガーを横に振るい、首を落とした。


「お疲れ様です、レオルドさん!完璧でした!」

「まあ、これくらいの魔獣相手ならな。ルナのアシストも良かったぞ。1つも当たらなかったし。それに無詠唱とは、なかなかやるな?流石、街の救世主様だ」

「も、もうそのことは忘れて下さい!」


そうして揶揄われた後、収納魔術から朝に屋台で買った串焼きなどを出して食べ、魔獣を倒ながらリズドスの街へ戻った。



街に着く頃にはレオルドさんの短剣術はlv3に上がっていた。




クエスト達成の報告のため冒険者ギルドに立ち寄ると、中は人で溢れていた。


受付カウンターに並び、順番を待っていると、自分たちの前に並ぶパーティーが作業場で自分を見つけてくれた人たちであることに気が付く。それとほぼ同時にあちらも自分に気づいてくれた。


「よう!久しぶりだな!あんた、ちゃんと冒険者に戻れたんだな!最近見ないからま~た復興作業やらされてんのかと思ってたが、強そうなやつと組んだんだな!」

「そ、その節は、ありがとうございました…」

「いいってことよ!まあ、本当はパーティーに入って欲しかったんだがな!」

「ええっと…すいません…!」

「あははは!謝んじゃねぇよ!もし、なんかあった時はよろしく頼むな!」


そうして順番が来るまで話をして、クエスト完了の報告と素材の売却、報酬を受取をして冒険者ギルドを後にした。



ちなみに、ホーンディアーとファングボアは傷が少なかったこともあり、120万リグで売れた。


高位にもなると優遇措置が設けられるって聞いたことあるからそれでかも?

とにかくさすがA級冒険者だ。


解体費用として2割持っていかれたので、レオルドさんにも解体のスキルを習得してもらおう…。と心の中で誓った。



夕食も食べて、お風呂にも入り、部屋に戻ってもう寝るだけという状態で寛いでいたのだが、私はある提案をしたくてレオルドさんに話しかけた。


「あ、あの!…少し、いいですか?」

「どうした?」


ベッドの上で腕の調子を確かめるようにして動かしていたのをやめて、怪訝そうな顔をこちらに向けた。


「えっと、その。この街を出ようかなって、思ってて。」

「わかった。いつ出る?」

「…いいんですか?」


気負いのないその様子に拍子抜けし、思わず再確認する言葉が洩れ出た。


「ああ、構わない」

「あ、ありがとうございます…!実は王都に行きたいなって思ってて…!」

「王都か。いいんじゃないか?」

「本当ですか!」

「ああ」


そうして、旅に出る計画を二人で立てていく。

大まかな内容を決めて眠りに就いたのは、日付が変わったことを告げる鐘の音が街中に鳴り響いた後だった。



そして、王都に行く計画を立ててから1週間が経った。


この1週間は全て準備に当てた。食料に野宿用品、馬、武器の手入れ用品などを買い揃えた。




ついに明日、リズドスの街を出る。


何があるのか、誰と出会って、何をするだろう。

少しの不安と楽しみを胸に宿らせてこの街最後の夜を過ごしたのだった。

読んでいただきありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
日付変更が夜中なら鐘が鳴るのは迷惑すぎるね。夜でも明るい現代日本ですらありえないわ
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