11.冒険者ギルド
買い物から1週間、宿を延長した。
そして、レオルドさんのズボンに尻尾が通るように服の手直しをし、薬草やポーションを専門に扱う薬師ギルドに売りに行く用の下級ポーションを作り、いきなり抜けてしまった復興作業場への顔だしをして、足りないものを買い足した。
更に、持ち物への付与も行った。
付与ができることをレオルドさんに明かすと、「なんで武器屋でわざわざ手袋買ったんだ…?」と聞かれ、「断れなくて…」と言うとひどく呆れていた。
武器屋で付与の施された手袋は購入したが、いつ効果が失われるかわからないため、手袋と、ついでに鞄と戦闘服にも付与をした。
打撃と防刃の魔術手袋と馬車3台が余裕で入る容量の魔術鞄に防刃と防汚の魔術戦闘服を手渡すと、回復魔術とともに付与魔術も秘密にするようにと真顔で念を押されたのだった。
そして、レオルドさんはこの1週間、手を握るところからリハビリを開始し、今では、日常生活に支障がなくなっている。これもひとえに彼の努力の賜物だ。
雲一つない青空。暖かな日差しが窓から差し込む。
今日から、冒険者業を再開します!
朝食を食堂で摂り、宿を出て冒険者ギルドを目指す。
レオルドさんを買った日以来の冒険者ギルドに少しずつ緊張感が湧いてくる。
実は今まではなるべく冒険者ギルドに近寄らないようにしていた。何せ怖いので。
しかし、これからはレオルドさんも一緒なのだ。お金もかかるし、守って。と言ってしまった手前、冒険者ギルドに怖くて行きたくないとは言えなかった。
行きたくない程、そこまでの道のりが短く感じるもので、あっという間に目的地に着いてしまった。
私の葛藤など知る由もないレオルドさんはさっさと冒険者ギルドに入っていく。
それに置いていかれまいと後を追い、彼のすぐ後ろをついていく。
自分たちが中に入ると、様々な視線が突き刺さる。訝しげな者、好奇の目を向ける者、注意深く観察する者…。
レオルドさんはそんな視線など全く意に返さず、受付カウンターに進んでいく。自分は彼の背に隠れるようにして真後ろを歩く。
受付は全部で3つあり、それぞれの受付カウンターには何人かが並んでいたが、すぐに二人の番が回ってきた。
自分たちの対応をしてくれるのは、スタイルのいいきれいな女性だ。
「ようこそ。冒険者ギルド、リズドス支部へ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「A級冒険者のレオルドだ。ギルドマスターに会いたいのだが」
そう言ってAランク冒険者の証であるミスリルの冒険者カードを受付嬢に渡している。
彼のカードを手に取って、驚きに思考を数秒間停止させたのち、我に返ったように、
「A、A級…?!承知致しました…!少々お待ちください…!」
と慌てて席を立ち、ギルドマスターを呼ぶためだろう、執務室へ早足で向かっていった。
そして、ギルド内も彼と受付嬢の会話に騒然としていた。
なぜこんなにも騒がれているのかというと、それは冒険者ギルドの階級制度に秘密がある。
簡単に示すと、以下の通りだ。
S級(アダマンタイト製のギルドカード)
A級(ミスリル製のギルドカード):B級クエスト500達成者のみ
B級(プラチナ製のギルドカード):C級クエスト300達成者のみ
C級(ゴールド製のギルドカード):D級クエスト100達成者のみ
D級(シルバー製のギルドカード):E級クエスト50達成者のみ
E級(ブロンズ製のギルドカード):F級クエスト50達成者のみ
F級(アイアン製のギルドカード)
A級冒険者に到達するためには登録してから少なくとも1000件のクエストを熟さなければならない。その上、3人のギルドマスターの認証が必要なのだ。まあ、例外もなくはないのだが。
例えばルナの場合はクエストをほとんど熟していないが、C級冒険者をしている。理由は高ランク魔獣の持ち込みや街への貢献によるギルドマスターの推薦である。
ちなみに、S級冒険者になれる者は全世界でたった10人と決まっている。
レオルドさんってすごいんだなぁ…。と改めて思いながら、ざわざわとしている周囲に耳を澄ませると、
「まじかよ…」
「A級冒険者なんて俺、初めて見た」
「すげぇ」
といったレオルドさんに対する称賛や驚きの声と、
「後ろにいるのもA級か…?」
「いや、違えだろ。あんな弱そうなの。」
「なんであんなガキが…」
といった自分に対する見下すような懐疑的な声が聞こえてくる。
その否定的な意見に肩身の狭い思いをして俯いていると、それに気が付いたレオルドさんが視線から遮るような位置に移動してくれた。そのことにとてもホッとした。
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