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古代文明の遺産

 途中何度か野宿して昼下がりに辿り着いた遺跡の外観は、保護の為か軍事施設のような見た目になっている。

 発掘途中で放棄されたのか、未発掘なのか分からない状態だ。でも、警備システムの電源は落ちている。稼働した痕跡も無い。

 埃避けでストールをマフラーのように首に巻いて口元を覆い奥へ進むが、これと言った痕跡と言えるものは見つからない。未発掘なのか?

 歩みを慎重に進めて、広大な空間に出た。手持ちの懐中電灯レベルの灯りでは全貌が把握出来ないほどに広く暗い。気配探知で周囲に人がいない事を確認してから、魔法で光源を生み出して天井近くにまで飛ばす。天井付近で浮遊する光球が広い空間を白く照らす。

 空間の奥行・幅・天井までの高さは、日本の国有の体育館を連想させる程に広かった。暗かったら広大って思うのも納得の広さだ。バスケコート何面分だよ。

 けれども、このだだっ広い空間に存在するものは、壁を背に立つ直方体の金属の箱一つだけ。

 高さは天井近くまで有る。横幅は高さの半分ぐらいかな? 箱に近づいて表面をペタペタと触り観察する。

 ……この金属板、角以外に繋ぎ目が無いんだけど、どうなってんの? 現代技術でも繋ぎ目無く鉄板を溶接する技術は未確立なんだけど。

 壁に面した背面以外の、箱の周囲を見て歩くが、溝やパネルの蓋らしきものも見当たらない。視力を魔法で強化して上も見るが見つからない。

 悩んだ結果、魔法を使い箱の天辺に向かう。

 しかし、降り立った天辺も溝や蓋っぽいものは無かった。

 床に降り立って、天井の灯りを消し、代わりに手元の灯りを点ける。重複して魔法が使えない訳じゃないが、使っている最中に誰かが突撃して来る事は十分に有り得る。不要な用心かも知れないが、やって損は無いだろう。

「――鑑定」

 使うのは鑑定魔法だ。箱の中身は分からないので、金属板の特徴(腐食に強いとか、熱に弱いとか)から中身の推測を行う事にした……のだが。

「うおぉう!?」

 直後、ブウォンッ、と重低音を立てて空中にパソコンのモニターに似た画面が空中に出現。同時に天井の明かりが灯り、室内を一気に照らす。

 予想外の事に素っ頓狂な声が出てしまった。手に持っていた点けたままの灯りが目に入り、動揺は落ち着いた。懐中電灯を消して息を吐く。周囲に人がいなくて良かった。しかし、安堵するのは早かった。

 空気が抜ける音と共に金属板が横にスライドし、箱の中身が姿を現す。

「……」

 箱の中身を見て、思わず絶句した。両親の事を調べる過程で集まった情報によれば、十一年前の大戦で箱の中身は全て破壊されて現物は残っていないとされている。

 だが、目の前にその現物が新品のような状態で――古代式人型機動殻が直立不動の姿で収められていた。

 新雪のような純白に染められた全長十五メートル程の大きさの人型の機体。迷彩柄に染められていないので勘違いされがちだが、発掘されて実際に使用されたこの機体は全て白色で染められており、それ以外の色のものは存在しない。同じ外見性能の機体は大量に見つかったが、全て量産機だったのか、例外なく色は白。

 量産機の色が白ってどう言う事だよと突っ込みたい。作成者は何の意味を込めて白に染めたのだろうか。

 少し反れた事を考えたからか思考が落ち着いて来た。

 放置していた空中画面の文字の羅列を見る。文字は古代語だったが、自分の場合は無限の言語と言う名の『読み・書き・会話の内、自動翻訳で読みと会話に不自由せず、短期間で言語習得出来る』と言う技能を保有している為、読む分には困らなかった。今回に限っては困って欲しかったが。

「はぃ?」

 文面を追い、本日二度目の素っ頓狂な声が出る。

『魔力の個別認証登録完了しました。操縦室にて正規登録を願いします』

「いやいや、お願いします、じゃ無いでしょ!?」

 空中画面に手を伸ばして文章に力一杯突っ込んだが、声は空しく響き、空中画面には触れる事すら出来ず宙に溶けた。それどころか、箱内部の一部が勝手に動き、遥か頭上で空気が抜ける音と共に何かが動く音が聞こえて来る。

 恐る恐る顔を上げて音源を見ると階段が出現していた。階段の先、人間で言うとの鳩尾の辺りの人型機動殻装甲のカバーが開いている。あそこが操縦室――この世界には英語系単語が殆ど存在しないので、操縦室=コックピット――なのだろう。

 まるで、早く来い、と誘っているかのようだった。

「……どうしよう」

 本当に、どうすればいいんだろう?

 階段を見上げて呆然としてしまう。

 何か売り物になりそうなものが見つかれば良いなー、程度の感覚でやって来たらまさかの大物がヒット。海老で鯛を釣ったに近い状況だが、鯛と言うよりも『デカい鮫(食用不可利用不可)』を釣った感覚だ。

 所有していたら絶対に色んなところから目を付けられる。でも、このまま放置して次にやって来た誰かが悪用する可能性も有る。

 どうしようと悩み、個別認証登録云々と表示されていた事を思い出した。

 個別認証は消して置かないと遺恨を残しそう。正規登録は気が進まないが、認証の削除はしておくべきだろう。

 階段を上り、踊り場からコックピットの入り口を覗き込んだ直後、腹の底に響く爆音が轟いた。爆発の振動で階段が揺れて体勢を崩し、慌てて手すりに掴まる。

「今度は何!?」

 今日は厄日か? 厄日なのか? 何でだよ、畜生っ。

 悪態を吐いていると大量の足音が響く。首に巻いていたストールで鼻から下を覆い直し、護身の為にオートマチック式の銃を道具入れから取り出す。

「貴様! そこで何をしている!」

 怒声と共に現れたのはライフル銃を持ったバラバラの服装の成人男性十数人。でも、髪型が統一されているのでどこかの集団の一味の可能性が高い。 

「調査していただけだ! 爆破するとかそっちこそ何を考えてんだよ!」

 成るべく低い声で問われた事について回答し怒鳴り返す。

 自分の回答を聞いた、怒声上げた男がピクリと反応する。

「調査だと? 禿鷹風情がか?」

 吐かれた侮蔑の言葉で、こいつらが何なのかが判った。発掘屋を禿鷹と口汚く罵るのは、とあるところに所属している連中だけ。

 意外な正体に思わず眉を顰めたが。

「お前ら、大陸連邦の軍人か」

 正体がバレると思っていなかったのだろう。怒りか羞恥か。男の顔が赤く染まって行き、無言のハンドサインから銃弾が放たれた。

「っ」

 足が狙われたが回避に成功する。狙いが甘くて助かった、などと安堵する暇は無く、次々に銃弾が放たれる。

 舌打ちを零しつつ、相手の無力化を狙い、高低差を利用して階段の床を盾代わりにこちらも銃弾を放つ。銃を使うのは久し振りだけど、腕が鈍っていなくて安心した。三発撃ち、三人を無力化する。無力化と言っても殺してはいない。二の腕や上腕を撃ち抜き、銃が一時的に使えなくする程度だ。本音を言えば数減らしに急所を狙いたい。

 更に五人脱落させると、ズシーンと、地揺れが響いて階段が揺れた。手すりに掴まって体勢を維持しなくてはならない程の揺れではなかったのが幸いだ。

 次から次へと何なの? と内心で悪態を吐く。が、入口方面から予想外のものが登場して思考が止まった。

 ズシーンと、複数の足音を立てて登場したのは、背後の古代式人型機動殻を参考に製造・量産された現代式の人型機動殻だった。銃で武装したそれが三機もいるから吃驚だ。

『死にたくなければそこから退け』

 スピーカーから発せられた言葉は真っ当な勧告そのものだが、同時に行われた威嚇発砲は自分を生かす気が無い事を示している。

 ……魔法が使えれば、こんな状況でも一発でどうにかなるんだよなぁ。

 魔法が使えれば、そんな方向に思考が動く辺り、思っている以上に動揺しているのか。

 カンカン、と小さな音が下から聞こえて来た。何時の間にか数人が階段を上って来ている。

 前門の虎、後門の狼みたいな状況だな。前後じゃなくて、正面と横だけど。取り合えず上って来ている連中と足止めに銃を撃って来る連中の二組に向かって閃光弾を一個ずつ投げて目潰しによる足止めを行い、銃弾が飛んで来ない僅かな時間を作り、どうやってこの場を凌ぐか思考を回す。

 古式機動殻に乗って逃走するのが一番楽なんだろうけど、それはそれであとが面倒な事になるのは目に見えている。隠す方法も持ち運ぶ方法も有るんだけど。

 ここはやはり、体一つで逃走するのが無難か。

 視力が復活すると同時に悪態を吐く連中を眺めながらそう判断し、床との高さを目算で測る。十メートル程度ならば、飛び降りても問題は無いな。

 階段の反対側に飛び降りる為に、コックピットの前の踊り場に移動した瞬間、再び機動殻から発砲音が響いた。直後、金属が軋む音が鳴る。

「へっ!?」

 視界が傾いだ。何事かと音源を見ると、階段の一部が消失していた。

 ――ちょっと待て。支柱の無い階段で、階段中央がごっそりと無くなっていたら、先端部分の踊り場はどうなる?

 ――そりゃあ、ぽっきりと折れるよね。

 自問自答の通りに、悲鳴のような金属音を上げて階段が折れた。反射的にコックピットの足場へ跳んでしがみ付いた。

 危なかったが、地面に落ちればそのまま逃走出来たのにと、後悔に襲われる。本当に、後悔先に立たないな。

 地面に飛び降りようにも、人間と機動殻から次々と発砲される。確実に殺す気満々だな。

 久々の窮地を感じて背に冷や汗を掻くが、運は尽きていなかった。

 目の前で銃弾が潰れて床に落ちて行く。何が起きているのかさっぱり分からない。

「うわっ」

 下から体を掬い上げられた。何が起きているのか。

 自分を掬い上げた何かを見ると、巨大な機械仕掛けの左手だった。よく見ると古式機動殻が勝手に動いている。

 ナニコレ? エヴァンゲリオン初号機ですか? アニメ版の第一話みたいに、勝手に動いて主人公を守っていたシーンの再現じゃないけど、何で動いてんだよ!

 混乱するが、そのままコックピット前に運ばれた。銃を撃っていた連中から『どうなっている!? 何が起きている!?』みたいな動揺の声が聞こえて来るが放置。

 ここまでされたら腹を括るしかない。覚悟を決めてコックピットに入る。コックピット内部は真っ暗で、操縦席らしい椅子と両脇のひじ掛け部分に操縦桿らしき球体が着いていた。

 取り合えず椅子に座る。サイズが大きく背凭れに背を付けてシートベルトを装着すると、今度は球体に手が届かないので浅く腰掛けた。シートベルトの代わりに、今回は重力魔法で位置固定する。

 椅子に座ったが肝心の操縦方法が分からない。けれども、簡単な取扱説明書は搭載されている筈。爆音が響く中、出入口が閉まって行くのを視界の端に捕えつつ、球体に触れる。

 瞬間、暗かった室内が一気に明るくなった。

 外部映像を映すモニターはどこだろうと思っていたら、まさかの全周囲モニターだった。一気にガンダムっぽくなった。いや、ロボットアニメで全周囲モニターの操縦室は割と多かったよ、ね?

 青いモニターに古代語で幾つかの文章が表示されて消えて行く。

『遺伝子個別認証完了』『自己進化機能起動完了』『自動調節機能起動完了』『初期装備異常無し。使用可能』『拡張武器庫起動完了』『補助器装着して下さい』

 文章を眺めていると、頭上からクレーンゲームのアームに似た何かが、何かを掴んだ状態で、掴んでいるものを差し出す。よく見ると、操縦席の頭部天辺がかぱりと開いている。そして、差し出されたのはカチューシャに似た頭に装着する何かだった。エヴァかよ。文章を見るにこれが補助器なのだろう。手に取り頭に装着する。

「お、おおう……」

 古代文明は本当に凄いな。感動すれば良いのか、技術の高さに敬意を表するべきか分からない。

 補助器を装着した瞬間、見聞きした覚えのない全く知らない知識が沸き上がる。その中には操縦方法も含まれていた。どうなってんだよこれ。

 改めて操縦桿の球体を掴む。全周囲モニターが青一色から外部映像に切り替わった。

 外は先程までいた屋内。変わった事は現代式人型機動殻との距離が先程よりも近く、歩兵がいない。それぐらいか。

 人を誤って踏み潰す心配は取り合えず無さそうだ。

「片付けて脱出。やる事はそれだけ」

 成す事を口にして意識を変えて、戦闘を開始する。

 操縦は簡単だ。どう動きたいか頭でイメージすれば良い。体が大きくなったと思って動かせば良い。

「初期装備。片手長剣、ロングソードか? これが二振り。しかも実剣? ビームサーベルとか無いの?」

 他にも装備は有るが、今はこれだけで良いだろう。どの程度動くのか分からないし、威力が想像出来ない武器の使用は控える。

 生身の時と同じく、両手で剣を持ち構える。

 椅子に座ったまま、何時もの戦闘を頭の中で思い浮かべ、箱から出て先頭の一機に切り掛かり――想像以上の切れ味に口元を引き攣らせた。

 絹ごし豆腐を切るように、何の抵抗も無く機動殻が斬れた。せめて木綿豆腐程度の抵抗が欲しいと、場違いな事思ってしまった。見れば断面も滑らかだ。現代式の操縦席がどの辺か分からないが、想像するのは止めよう。

 残りの二機が銃を構えた。即座に距離を詰めて切り掛かる。

 距離の近い機体に近づいて、左の剣で危険な銃器を真っ二つにし、右の剣で斜めに切り捨てる。こちらが一機を斬っている間に残された最後の一機は距離を取り、銃器を捨てて、ショートソードらしきやや短い剣を手に切り掛かって来た。

 その動きの遅さに驚きつつ、左の剣で横に弾いて右の剣で切り捨て、戦闘は終了した。 

 戦闘時間は三分程度か? 体感的には短く感じた。その原因は機動殻の挙動の差か。現代式と古式では恐ろしい程に動きに差が出ている。古式が一体残っていたら確かに欲しがる気持ちが解かるな。

 いやいや。無駄な思考に時間を使っていないで脱出しないと。

 腕を伸ばしても微妙に剣の切っ先が届かない。思っていた以上に高い天井だ。壁をぶち抜けば良いのかと考えたが、不意に、この機動殻が収められていた金属の箱を思い出した。放置して良いかと考えたが、これも古代技術で造られた一品なんだよね。何となく近づくと、モニターに文字が表示された。

『保管箱を収容しますか? はい/いいえ』

 この金属箱に名称が有ったのか、いや、収容出来るのか。

 凄いな古代技術! 

 ある意味感動しながら、『はい』を選ぶ。すると、金属箱が一瞬で消えて『拡張武器庫に収容しました』と表示が出た。

 ……やっぱり、道具入れみたいなものが有ると便利だなぁ。主に荷物の持ち運びが。

 今度こそ天井を見上げ、空が飛べるのかと言う疑問に思い当たる。

 補助器を経由しての知識によれば、背中に飛翔器が装備されているので問題無い。魔法で空を飛ぶようにやれば良いのか?

 僅かに膝を曲げると背中の飛翔器が展開起動し、機体が浮き上がった。そのまま慎重に天井に近づき、手に持っている剣で天井に穴を開け外に出て空に舞い上がる。

 魔法による飛翔とは違い、加速による重力を感じる。何時も行っている魔法による飛翔では感じない重力に、勝手が違うと言う戸惑いを覚える。

 普段との微妙な差を感じていた間に、少々高く飛び過ぎてしまった。滞空したまま下を見る。地上から目算で、五百メートル前後か。

「げ。まだいたのか」

 下を見た際に、遺跡の周囲に複数の現代式の人型機動殻と鳥類型機動殻(ガンダムシリーズで言うところのモビルアーマー)がそれぞれ五機ずつ、計十機いた。

 古式人型機動殻の回収にどれだけ気合い入れてんだよと突っ込みたいが、実際に乗って見ると確かに回収したいわな。

 動きは早くて滅茶苦茶滑らかだし。操縦も楽。つーか自己進化機能って何だよ?

 ビビビッ、と警告音が鳴った。同時に、シューティング系(他の格ゲーや○○無双ゲーでも可)ゲームでお馴染みの『ロックオンマーカー』に似たものが全周囲モニターを駆けて、接近する敵を教えてくれた。

 接近する敵はジェット戦闘機に似ている。数は十数機。装備はミサイルオンリーか。熱源追尾機能類が無いのか、避けたらあらぬ方向に飛んで行き、爆発した。ある程度の距離を進んだら爆発するようになっていたのか。それなら、乱戦ならば有効かもしれないが、今回は役に立っていないな。

 バルカン砲みたいな遠距離攻撃装備は無い。他に戦法が無いので接近してすれ違い様に切り捨てる。

 ……動きは素早く滑らかで良いんだけど、回転するような動きをすると振り回されるような感覚が有る。生身の戦闘で重力を気にした事は無い。奇妙な感覚だ。

 生身で動く動作をイメージして操縦し、戦闘機を全て落とすと再び警告音が鳴り、先程と同じようにマーカーがモニターを動く。

 次にやって来たのは地上にいた人型機動殻を背に乗せた鳥類型機動殻だ。ウェーブライダー代わりかと、思わず突っ込んだ。しかし、その移動速度は目を見張るものが有る。だって、さっきの戦闘機よりも速いんだもん。

 銃器による攻撃が一斉に放たれる。こちらは今のところ近接戦闘しか出来ないから、銃器による遠距離攻撃は妥当な選択だ。

 銃弾が迫るが、回避運動は取らない。何もせずとも、銃弾が見えない何かに弾かれて行く。さっきのミサイルは爆風で視界が塞がれる事を懸念して避けた。

 この機体に搭乗する前にも起きた謎現象が再び発生する。しかし、補助器を経由して与えられた知識のお蔭で何が起きているのかはっきりと把握出来る。

 この現象は初期装備の一つの『簡易防壁』が引き起こしている。この簡易防壁は機動殻起動すると自動で発動する。使用感覚で言えば、自分が使う魔法防御障壁と同じだ。違いは目に見えないところか。

 簡易防壁と名が付いているが、強度は現代式機動殻の銃弾程度では突破出来ない程に硬い。

 銃弾の雨を無視して、先程と同じように接近して切り掛かる。さっきの戦闘機と違って動きが幾分速い。

 それでも悲しい事に、古式に比べれば遅い。少し動きを見ていると目が慣れてしまう。鳥類型の上に乗っている人型を切り落とすと、下で乗せていた鳥類型が自由になってしまうので、なるべく一回で撃墜する。失敗すると自由になった鳥類型が邪魔してきてウザい。失敗した一機はすれ違い様に蹴りを叩き込んで吹っ飛ばし、追撃で真っ二つにした。

 同じ要領で五組全てを撃墜した。

 地上の残存勢力を探す。いない事を確認してから地上に降りた。

「はぁ~……」

 思っていた以上に緊張していたのだろう。長く深いため息が出て、今後の問題を思い額に手を当てる。

「……どうしよう」

 目下最大の問題は、この古式人型機動殻の取り扱いだ。売りに出せないし、買い取ってくれるところも無い。事情を話せば引き取ってくれるところは在るかも知れないが、そう簡単に見つかる筈もない。取り合えず、移動が不便になるので、道具入れか宝物庫に収容出来るかやって見よう。補助器は一見すると弦の細いカチューシャだから着けたままで良いな。変な飾りとかも付いてないし。髪に埋もれるし。

 そして、試した結果。

「あ~、入ってよかった~」

 道具入れには入らなかったが、宝物庫には入った。原因は不明。どうなってんのよ?

 いやいや、と頭を振って思考を中断。魔力駆動のバイクを道具入れから出して跨り、全速力で移動する。大陸連邦の一味と思しき連中を始末した以上この場に居続けるのは危険だ。

 最寄りの都市を目指して、バイクを走らせた。

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