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人類が滅びかけても世界は続いて行く  作者: 天原 重音


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12/13

通信相手達は

ちょっと短いです。

 カーティスとの通信を切ったオースティンは椅子に深く座り直し、背凭れに身を預けて感想を漏らす。

「こんな時に見つかるとは。運命の糸が引き合った結果か」

 執務室内にいるのはオースティンを含めて三人。残り二名の片方はオースティンの副官兼秘書を勤める気真面目そうな銀髪の女性。

 もう一人は野性的な顔立ちの壮年の黒髪の男性だ。執務机の前に設置された応接用ソファーにだらしなく座り、情報端末を弄っている。テーブルに足を乗せていないだけ、礼儀作法を守る気は残っていたようだ。

「情歌的な感想を口にすんじゃねぇよ。運命って言うんなら、俺らは顔も知らねぇ誰かの掌の上で踊らされているって事になるぜ」

 組織の代表に使う言葉ではないと、副官の女性が非難を多分に込めた視線を発言者の男性に向ける。しかし、この程度で男性が態度を直す事は無い事は承知しているし、公の場では態度と言葉遣いも変えている。何より、オースティン自身が嫌がる素振りを見せた事が無い。寧ろ気安い関係を楽しんでいる。

「考えようによってはそれもそうですね。他人に未来を定められるのは嫌なので、取り消した方が良さそうですかね?」

「そうだな。加えて言うんなら、そう言う単語を男に向けて使うな」

「私としては、世話になった方なので運命と言う単語は使ってしまいますね」

「気色わりぃな」

 オースティンと男性の気安いやり取りのあと、唐突に沈黙が降りた。

「……あれから一年。大陸連邦も形振り構っていられねぇって事かもな」

 男性は高い天井を見上げ、視線を彷徨わせながら憶測を口にする。

「その線が強そうですね。貴方が抜けた穴を埋めるのは容易ではないですからね」

「そうでもなさそうだぜ」

「……翼竜型の操縦士ですか?」

「ああ。抜ける前に凍結処分を受けた違法研究罪人の解凍作業が行われていたからな」

「……成功したのであれば、確かに穴埋めは可能でしょうね」

「絶えて久しい古代の知識知見。どう考えても脅威だな」

 男性は虚空を睨むように目を細めた。敵を見定めるような相貌は、獲物を見定める狼のようだ。

「ま、今は情報が足りん。カーティスから映像記録が届くのを待つしかねぇ」

「その前に、基地と隊に連絡を入れておきましょう」

「わりぃが頼む」

「これぐらいならば良いですよ。姉上の説得に比べれば簡単ですからね。――それに、貴方はまだ表に出ない方が良い」

「動きてぇ時に、動けねぇのは、本当に面倒だな。あとヴィの奇行と比べるんじゃねぇよ」

 何かを思い出してオースティンは苦笑し、男性は嘆息した。

 会話が途切れた合間、副官の女性が情報端末で何かを確認してから口を開いた。

「オースティン様」

「ああ、会議だったね」

「はい」

 予定を確認し合う二人を見て、男性もソファーから立ち上がった。

「俺も仕事に戻るぜ」

「ええ。試験操縦お願いしますね、()()殿()

「解ってる」

 最後までぶっきらぼうな物言いのまま、男性は退出した。

 扉の向こうへ足早に消えた背を見送り、オースティンは小さく笑みを零した。

(本当は『仕事を放り出してでも娘に会いに行きたい』のでしょうね)

 滅多な事では本音を漏らさず、悟らせない義兄の思いが態度から手に取るように解かる事が嬉しいのだ。

「オースティン様?」

「何でも無い」

 副官からの怪訝そうな問いにそう返して、オースティンもまた執務室をあとにした。

(……運命か)

 移動しながら思う。男性には茶化して『運命』と言う単語を使用したが、本来使うべき単語は『呪い』の方だ。

 古式人型機動殻が齎した――否、古代文明が残した呪い。断ち切れるか否かは今後の行動次第。

(断ち切って見せるとも)

 明かせない世界の真実を知るものの一人としてやり遂げる。

 亡き姉の墓前にも、そう誓ったのだから。


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