プロローグ
人類が滅びかけても世界は続いて行く。
星の寿命が尽きるその日まで。
十年前に勃発した資源をめぐる大陸間大規模戦争で、この星は荒廃した。自分が産まれたのは終結二年前らしいが、そんな事はどうでも良い。
星の全人口の九割近くがこの戦争で死滅したと言われているけど、人口の少なさを感じる機会が無いので本当かどうかは判らない。
人口の減少による文明の衰退が起きず、戦争で起きた文明の衰退を阻止する為に、逆に技術が異様に進歩したのだ。そのせいでどこの都市も人口密度が極めて高い。真っ当な生活を求めて人々は都市に集まった結果だ。戦争で地表の農耕地の大部分が駄目になり、各都市の地下に人工的に農耕地が作られた。人々の食卓に提供される野菜は遺伝子改良品だけど害の無い美味しい野菜だ。流石に魚介類と畜産品は地表で生産されているが。
技術が進歩したのは良いが、その恩恵に与れる技術の差はそのまま貧富の差となり、貴族ではない『財閥』と言う特権階級が生まれた。この財閥は個々で軍隊を擁している。各都市は財閥がまとめ役になっている。市長と言うよりも市国長と言った感じか。都市以外は無法地と化している。
貧富の差は有るが、電気や上下水道などのインフラはしっかりと整備されているし、生活家電も存在する。電動の自動車や二輪車も有る。高いけど。
だけど、娯楽の類は殆ど無い。井戸端会議レベルしかない。噂話とかの類が娯楽と化している。ゲームに漫画、ラノベ系が恋しい。
紙の本は無く、書籍は全て電子化されている。これは製紙技術が無いと言う訳ではなく、単純に製紙用の材料が少なく、生活用品以外で紙は使われない。紙は高価でスマートフォンに似た電子メモ帳の方が安い。この辺は地球と逆転している。
では、どう言ったものが電子書籍扱いなのかと言うと、『教本』や『記録(個人伝記含む)』が該当する。そして、教本が存在するので学校も存在する。読み書き計算と歴史に現代技術の基礎(機械操作)程度だけどね。
電気や機械が存在する事から判るだろうが、この世界には魔法が存在しない。
戦前の技術は非常に進んでいて、現代の技術はそこから更に進歩しているので、技術の一部は地球と比べると非常に進んでいる。
特筆すべきなのは医療技術で、次点でロボット技術か。
欠損した四肢などの再生治療技術や、不妊・遺伝子病治療として試験管受精児などが存在する。また、SF系の小説や漫画でお馴染み『医療用ナノマシン』も存在し、切開手術などは一切行われない。ナノマシンの登場で、手術の単価が非常に下がった。
医療用ナノマシンは進歩したロボット技術の派生だ。元々は軍事技術で医療用に転化されただけに過ぎないけど。
ロボット技術は非常に進歩していて、十年前に終結した戦争に至っては、ぼぼガンダムの世界と化していた。人間が二足歩行のロボットに乗り込んで戦闘を行う。ニュータイプがいたとか聞いた事は無いけど、それっぽい人達がいた記録は残っている。流石にファンネルは無い。宇宙空間にコロニーとかも無い。月は在るのに。そもそもここは地球じゃないから当然なんだけど。
なお、このロボットは『機動殻』と呼ばれており、未だに警備や戦闘などに使用されている。ちなみに機動殻の種類に人型や鳥類型などが存在する。
とにもかくにも、この進歩したロボット技術のお蔭で生産加工業などの第一次産業と第二次産業に従事するほぼ人間はいなくなった。動植物の世話は『娯楽の一種』と捉えられ、それ以外で行うのは細々と自給自足するしかない人達だ。都市の地下農耕地以外は駄目になっているので本当に少ない。
海は戦争で荒れ果て、海洋生物は絶滅しているので漁業は川や湖で行う養殖(しかも世話から出荷まで殆どロボットが行う)のみ。川魚もほぼいない。
人間が従事するのは第三次産業しかないが、サブカルチャーの類はほぼ全滅している。その内復活するかもしれないけど。
こんな状況で人間が従事する仕事は何があるんだと問われれば、商業、運輸業、医業、軍事、公務(一部の富裕層)の他に、戦争遺物収集売却業が有るのみだ。
戦争遺物収集売却業――通称、発掘屋。十年近く前に終結した戦争で使用された遺物を収集売却する。古代文明絡みのものも稀に売却される。
遺物が売れるのかと思う人はいるだろうが、戦時下に数多のところで秘密裏に表に出せないような技術が開発されていたので、その記録情報や物品は非常に貴重な資料なのだ。今でも、戦時下の技術を利用した新技術が開発される。
ただ、そう言った記録情報がある場所は放棄された軍事施設であったりする事が多いので、危険度も高い。遺跡のトラップを乗り越えてものを持ち出すが如きその姿が、遺跡発掘者のようだからと、発掘屋と呼ばれるようになった。
まれに、戦前から研究されていた古代文明に関する記録も見つかる。こっちに関しては、下手に売りに出すと口封じに遭うので、扱いは難しい。なので、基本的には売らない。命は大事だからね。追われる身になると面倒だし。
古代文明に関して、戦前から判らない事が多い。
文明に飛躍的な進歩を促した未知のエネルギー――『星辰力』。星辰力を用いた技術――『星辰術』。未だに製造方法が分からない機動殻。と、数え上げればキリが無い。
一万年以上も続いた文明は、数千年前に原因不明の出来事でその姿を消した。天変地異などは観測されておらず、前触れも無く、短期間で姿を消した。
この古代文明についてだが、集めた文献を読む限り古代文明と言うよりも『先史文明』と言うべき箇所が散見出来る。
現代が機械文明なのに、古代文明の記述には『○○魔法術式が~』とか、『○○魔法と星辰術を合わせた~』などと言う文言がちらほら見られるのだ。
この文言からの推測だが、古代文明は現代とは違い『魔法文明』だった事が判る。それも、機械技術と併用されていたっぽい。文明技術が違うので個人的に先史文明と判断している。それでも、魔法=星辰術かは不明だけど。
何が原因で魔法技術だけが失われたのかは、これまた不明だが推測程度は出来る。無限の言語の技能をもってしても推測しか出来ないのが悔しい。
偶然にも『星の生命力たる星辰力の出力低下』の古代語の一文を見付けたからだ。
この星の人間には分からない一文でも、数多の世界に転生して来た自分になら判る。
星の生命力=星の寿命=星辰力の図式が成立すると仮定するならば、古代文明が飛躍的な進歩を遂げたのは『星の寿命を削り倒した結果』なのだ。
要するに、未知のエネルギーを使いまくって魔法文明を進め、効率を求めて機械技術と併用をしていたのだ。
潤沢に存在すると思っていたエネルギーがある日突然枯渇して、機械技術を残して一気に廃れた。
地球で言うのなら、石油に当たるのか? 地球で石油が突然枯渇したら大騒動だ。各国には備蓄分が有るからいきなり生活から石油は消えたりはしないだろうが、枯渇したとなれば、大問題となる。火力発電による電力不足が起きれば、人々の生活に大打撃を与え、混乱を齎すだろう。
古代文明でも混乱は起きただろうが、機械技術を併用していたのに何故、前触れなく消えたのかは分からない。本当に謎だ。けれど、星辰力の枯渇が文明の終わりへ導いたのは合っているだろう。
何時もファンタジー系な世界に転生するので、興味本位で古代文明について調べるまでは『珍しいなー』と暢気に構えていたら、まさかの事実に吃驚仰天した。古代文明の恩恵が得られる事が判り、少しだけ落ち着いたが。
古代文明は魔法技術が存在したので、ちょっと珍しいものを持っていても『古代文明の遺産に手を加えた奴です』と言えば、目立つ代わりに詮索されない。
特に道具入れ。これについて詮索されると面倒だから、本当に、正直に言って助かった。
けれども、自分の場合はどれ程目立っても意味を成さない。
十二歳になるまでいた元軍属医療施設の孤児院で知った事なのだが、どうも自分の両親は一部業界で非常に有名人だったらしい。その子供と言う事で、自分もその業界で有名だ。両親と自分が有名な業界の名は『軍部』である。そこは現在、大陸連邦と名乗っている。
両親は共に古代式人型機動殻のパイロットだった。ただのパイロットなのに、何故有名なのか。少なくとも、施設の職員で知っている人間はいなかった。知っている女性に尋ねても教えてくれなかった。
知る為には廃棄された軍の施設を調べるしかない。そう判断したが、施設にいた当時は止めろと女性に諭された。しかし、元軍属医療施設だった(今はただの孤児院)事で反大陸連邦組織を名乗る集団に施設が襲撃され、生き残ってしまった。
いきなり放り出されて途方に暮れたが、発掘屋稼業を行えば両親について堂々と調べられ、ついでに生活費も稼げると意識を入れ替えた。
行き当たりばったり感溢れるが、目的は無いより有った方が良い。
幸いにも、十年以上も前のものだが身分証明証は有り、基礎教養も施設で学べた。
未知の世界だが、数年はどうにかなるだろう。
そう思って発掘屋となり、一年弱が経過した。
両親に関する情報は無いが、古代文明や戦前の情報は得られた。戦前に関するものが割と高値で売れたので、放浪生活をしているがそれなりに安定した生活を送っている。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
キリの良いところまで連続で投稿しますので、お付き合いいただけると嬉しいです。
私事で済みませんが、最近見直したら書き終わった作品が増えたので、ストックが無くなるまで時系列無視で書き上がった順に投稿する計画を立てています。
その為暫くの間、感想を頂いても返信が滞ると思うので、作品のストックが無くなるまで感想欄を閉じます。
個人的な判断で済みません。